【完結】薔薇の仮面 ～演劇大好き少女は公爵様に溺愛されて～

第36章 マリアの決意

「……もう決めたのよ！」  

私は大きな荷物を背負い、劇団のみんなに向かって胸を張った。  

「私はヴァルターを取り戻す！ 彼が王なら、私は王の妃となってみせる！！」  

劇団員たちは一瞬ぽかんとした後、ドッと大笑いした。  

「お前、またとんでもないこと言い出したな！」  

「マリアが王妃になったら、王宮が劇場になりそうだな！」  

「じゃあ俺たちは宮廷劇団か？ 貴族相手に芝居なんて緊張するぜ！」  

「ちがーう！！！」  

私はプンプン怒りながらも、みんなの言葉がちょっと嬉しかった。  

「でも、本気で行くんだな？」  

団長が静かに私を見る。  

「……うん。だって、もう待ちきれなくて」  

私は深くうなずいた。  

ヴァルターが去ってから、私はずっと考えていた。  

彼が王として生きることを選んだのなら、それを否定するつもりはない。  

でも、それなら私も、彼のそばで生きる道を探すだけだ。  

「マリア……やるなら、派手にやれよ！」  

団長はニヤリと笑い、私の背中をバンッと叩いた。  

「え、派手に……？」  

「王宮に潜り込むなら、劇団らしくド派手にやるのが一番だろ？」  

「……！！！」  

そうか、その手があった！  

よし、王宮に突撃するなら、華麗にいこうじゃないの！！  



私は馬車に揺られながら、王都に到着した。  

いよいよここからが本番。  

「……って、ちょっと待って？」  

王宮を目の前にして、私は固まった。  

「え、こんなに厳重だったっけ？？」  

王宮の門は重々しく閉ざされ、あちこちに兵士が配置されている。  

以前ここに来た時とは大違いだ。  

「ヴァルターが戻ってから、警備が強化されたのね……！」  

……あのバカ！！ ちょっとは私が来ることも考えてよね！！！  

「おい、そこの娘！」  

突然、門番の兵士に声をかけられた。  

「何か用か？」  

「え、ええっと……その……王に会いに……」  

「は？」  

「王に会いに……」  

「帰れ。」  

即答された。  

「ちょ、ちょっと！！ まだ説明も――」  

「貴族でもない娘が簡単に王に会えると思うな。」  

「そ、そんな……！！」  

このままじゃ、ヴァルターの顔すら拝めない……！  

でも、私は諦めない。  

ここで引き下がるくらいなら、劇団を飛び出したりしない！  



私は王宮の周りを歩き回りながら、侵入方法を考えた。  

「……うーん、やっぱり変装して潜入しかないか？」  

「それなら俺たちが協力するぜ、マリア！」  

「え！？」  

振り向くと、そこには劇団の仲間たちがいた！！  

「お前、一人で突撃する気だったろ？ そんなの、劇団魂が許さねぇ！」  

「派手にやれって言っただろ？」  

団長がニヤリと笑う。  

「……みんな……！！」  

私は感動で泣きそうになりながら、拳を握りしめた。  

「よし！！ じゃあ、舞台は王宮だ！！ 全員、準備はいいかしら？」  

「「おう！！」」  

王宮よ、覚悟しなさい――劇団の本気、見せてあげるわ！！