【完結】平凡令嬢、実はざまぁ請負人~婚約破棄された令嬢たちの代理で復讐します~

朝日みらい

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第9章 ざまあ決着!

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 侯爵様の「真実の愛」宣言は、華やかな会場に、一瞬の静寂をもたらしました。

誰もが息をのんで、ダミアン侯爵の次の言葉を待っています。しかし、その静寂は、すぐに奇妙なざわめきへと変わっていきました。

 「まぁ、本当に? ダミアン様は、先日の夜会でも、アリス・ベルヴィル嬢に『君こそが私の運命の人だ』と囁いていたそうじゃない」

 「あら、それは聞き捨てならないわ。私の知り合いの伯爵令嬢も、同じことを言われたって、泣きながら相談してきたもの」

 それは、わたしのサロンで事前に仕込んだ貴婦人たちから放たれた、小さくも鋭い矢でした。

 彼女たちは、わたしが提供した「噂」の断片を、まるで世間話のように、親しい友人たちに囁き始めました。

その内容は、ダミアン侯爵の軽薄な言動から、他の令嬢たちとの派手な遊び、そして、最近の散財ぶりについて。

 (完璧ですわ。侯爵様の言葉は、もう誰にも信じられませんわね)

 わたしは、カイル様の隣で、心の中で静かにほくそ笑みました。

 「何の話をしているのですか? そんな根も葉もない噂、誰が流したんだ!」

 ダミアン侯爵は、顔を赤くして叫びました。傲慢な仮面が剥がれ落ち、幼稚で取り乱した素顔が露わになります。

 「まあ、落ち着いてくださいな、侯爵様。噂は噂ですから。ただ、最近の侯爵家の散財ぶりは、もはや噂の域を超えていると聞いていますけれど……?」

 今度は、別の貴族が、侯爵家の財政状況にまで言及しました。

これは、わたしが侯爵家の経理を調べ上げ、密かに情報を流したものです。

 「な、なんだと……!? 貴様、私を侮辱する気か!」

 侯爵は、激昂してその貴族に詰め寄ろうとしました。

しかし、そこで彼の腕を掴んだのは、彼の隣にいたはずの、愛しいベラ嬢でした。

 「ベラ、どうしたんだい? 私のことが、信じられないのか?」

 侯爵は、戸惑いながらベラ嬢に尋ねました。

 「いいえ、侯爵様。私は、あなたのお言葉を、信じていましたわ。でも、今、耳に入ってくる噂は、あまりにも多すぎます。そして、あなたは、その噂に、感情的に反論するばかり……」

 ベラ嬢の言葉は、まるで氷のように冷たいものでした。

 「あなたの恋人から、『別れてください』という手紙と大好きなショコラが贈られてきましたわ。あなた、愛人に私のことを話したのね。……もう、あなたとお付き合いできません。自分の名誉を、これ以上汚されたくないの!」

 彼女は、そう言い放つと、侯爵の腕を振り払い、一人、会場を後にしようとしました。

 「待ってくれ、ベラ! 君まで、私を捨てるのかい!?」

 侯爵は、悲鳴のような声をあげて、ベラ嬢を追いかけようとしました。

 しかし、その行く手を阻んだのは、セシリア様でした。

 「…お止めなさい、ダミアン侯爵」

 セシリア様の声は、力強く、そして、凛としていました。

 「セシリア……。なぜ、君がここに?」

 侯爵は、目を丸くして、セシリア様を見つめました。

 「あなたの『真実の愛』とやらを、見届けに来ましたの。でも、残念ながら、あなたの言葉には、一片の真実もありませんでした。あなたは、本当に、つまらない方ですわ」

 セシリア様は、まっすぐと侯爵の目を見つめ、そう言い放ちました。

 「セ、セシリア……。違うんだ! 私は……私は、君を、愛していたんだ!」

 追い詰められた侯爵は、セシリア様に、縋るように懇願しました。

 (……っ、この人、本当に、とことん、どうしようもない人ですわね!)

 わたしは、カイル様の隣で、冷ややかな笑みを浮かべました。

 「侯爵様、あなたは、私に『退屈だ』と言い放ち、私の心を傷つけました。でも、あなたのその言葉のおかげで、私は、本当の自分を見つけることができたのです」

 セシリア様は、そう言うと、侯爵に、ゆっくりと背を向けました。

 「さようなら、ダミアン侯爵。あなたの『仕返し』は、これで十分ですわ」

 セシリア様は、そう言って、優雅に歩き始めました。

 「セシリア! 待ってくれ! 頼むから、私を許してくれ!」

 ダミアン侯爵は、セシリア様の足元に跪き、大粒の涙を流しながら、懇願しました。

 会場にいた人々は、その光景を、嘲笑の目で見つめていました。

 (これが、ざまぁ……。この光景は、きっと、一生、忘れられませんわ)

 わたしは、静かにそう呟きました。

 その時、カイル様が、わたしの肩を、そっと抱き寄せてくれました。

 「もう、大丈夫です。君の仕事は、完璧に終わりましたよ」

 彼の温かい腕の中で、わたしは、張り詰めていた緊張が、一気に解けていくのを感じました。

 「……カイル様」

 わたしが、彼の名前を呟くと、彼は、わたしの頬に、そっと触れました。

 「リリアーナ嬢。君の仮面は、もう、必要ありません」

 彼の言葉に、わたしの心臓は、これまでにないほど、激しく高鳴っていました。

 (仮面を外したわたしを、あなたは、受け入れてくれるのですか?)

 わたしは、彼の真剣な眼差しから、目を逸らすことができませんでした。
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