【完結】平凡令嬢、実はざまぁ請負人~婚約破棄された令嬢たちの代理で復讐します~

朝日みらい

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第8章 破滅パーティーの幕開け

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 大舞踏会の会場は、息をのむほどに豪華絢爛でした。

 きらびやかなシャンデリアが、無数の光の粒をまき散らし、壁には色とりどりの花々が惜しみなく飾られていました。

甘く芳しい香りが会場を満たし、人々は最高級のドレスや宝飾品を身に着けて、優雅に談笑しています。

 しかし、わたしにとっては、この華やかな光景は、嵐の前の静けさにすぎません。

ここで行われるのは、ただの舞踏会ではありません。ダミアン・エルヴァンス侯爵の『破滅パーティー』なのですから。

 「リリアーナ様、ご準備はよろしいですか?」

 公爵令嬢セシリア様が、わたしの隣で、少し緊張した面持ちで尋ねてきました。

 「ええ、完璧ですわ、セシリア様。あとは、侯爵が自ら、破滅の道を歩んでくださるのを待つだけです」

 わたしは、心の中で悪戯っぽく笑いながら、セシリア様に微笑んでみせました。

 彼女は、かつて、ダミアン侯爵に「退屈な女だ」と嘲笑された、傷ついた令嬢でした。

 しかし、今の彼女には、悲しみの影はありません。

胸を張り、毅然とした表情を浮かべて、この場に立っているのです。

 (セシリア様、あなたはもう、弱々しい花ではありませんわ。……わたしは、そうしたあなたの姿が見たかったの)

 胸の奥で、静かに彼女の成長を喜んでいました。

 その時、会場の入り口から、ひときわ大きなざわめきが聞こえてきました。

 「ダミアン様と、ベラ様だわ!」

 「まぁ、本当に素敵だこと……」

 周囲の視線は、一斉に、傲慢な笑みを浮かべたダミアン侯爵と、彼の腕に抱きつく、新たな恋人、ベラ嬢へと注がれました。ですが、突然のアリス嬢から贈られたショコラに、内心、穏やかではないはずです。

 (さあ、いらっしゃいませ、侯爵様。ようこそ、地獄のパーティーへ)

 わたしは、侯爵に気づかれないように、そっと目を細めました。

 「お嬢さん、大丈夫ですか? 少し、顔色がすぐれませんが」

 背後から、落ち着いた声が聞こえてきました。

振り返ると、カイル様が、騎士団の制服に身を包み、わたしを心配そうに見つめていました。

彼は、わたしの護衛として、この舞踏会に参加しているのです。

 「ええ、大丈夫ですわ、カイル様。ただ……少し、緊張してしまって」

 わたしは、そう言って、無理に微笑んでみせました。

 (なんて、嘘つきなわたし……。緊張しているのは、計画がうまくいくか、ということだけではありませんのに)

 胸の奥では、別の感情が嵐のように渦巻いていました。それは、彼が隣にいてくれることへの、安堵と、期待、そして……。

 (どうして、こんな時に、あなたのことばかり考えてしまうのでしょう? これは、ただの仕事なのに……)

 自分の心の変化に戸惑っていました。

 カイル様は、わたしの手を取り、優しく指を絡めました。

 「……このパーティーが、君の過去を救う、一歩になりますように」

 彼の温かい手と、優しい言葉に、わたしの心は、一瞬にして、温かい光に満たされました。

 「……はい」

 震える声で、そう答えるのが精一杯でした。

 その時、侯爵が、高々とグラスを掲げました。

 「皆さま、本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます。今宵は、私の真実の愛を、皆さまにご披露したく、このパーティーを開かせていただきました」

 侯爵の声が、会場中に響き渡りました。

 招待客たちは、一斉に、侯爵に注目しました。

 「私は、長年、セシリア嬢と婚約していましたが、彼女のせいで退屈で、つまらない日々を送っていました。しかし、ベラ嬢と出会い、真実の愛を知ったのです」

 侯爵は、得意げに、そう言って、ベラ嬢に微笑みかけました。

 その言葉を聞いて、周囲の人々の間から、奇妙なざわめきが起こりました。

 (さあ、侯爵様。……ここからが、本番ですわ)

 わたしは、静かに微笑みました。

 「侯爵様、そのお言葉、本当でしょうか? 先日は、別の令嬢と、とても親密にお話されていたと、噂で聞きましたが」

 ある貴族の夫人が、侯爵に、そう問いかけました。

 侯爵は、一瞬、顔色を変えましたが、すぐに余裕の笑みを浮かべました。

 「それは、単なる噂ですよ。私は、ベラ嬢だけを愛していますから」

 しかし、その言葉は、誰にも信じられませんでした。なぜなら、わたしが事前に、侯爵の軽率な言動を、証拠とともに、社交界中に広めていたからです。

 「しかし、侯爵様は、先月も、別の令嬢に、同じような言葉をかけていたと聞きましたよ?」

 「それに、最近、侯爵家の財政状況が、少し厳しいと聞きましたが……?」

 次々と、侯爵の醜聞が、招待客たちの口から、ささやかれ始めました。

 侯爵の顔から、笑みが消えました。

彼は、わたしの仕込みにより、すでに社交界での評判が地に落ちていることに、まだ気づいていないようでした。

 (愚かな方……。あなたは、自分の言葉で、自分の首を絞めているのですよ)

 わたしは、心の奥で、冷ややかに呟きました。
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