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第三章
第17話
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テレス神官は、新米の神官に顔を向けた。
「このヒドラは厄介でしてね。奴に喉をかみ切られ絶命した場合、死者は本当に死んだとはいえません。
死者の体内にはすでに彼の子種が植え付けられていて、子種はその死体を自らの肉体とします。放っておけば、いずれ脱皮を繰り返し、成体のヒドラに変化します」
「じゃあ、どうして処分しなかったんです? すぐに遺体を焼却しなかったんですか」
従者のセリスが首をかしげ、テレス神官に訊いた。
「それはできませんね。肉体をその場で焼こうとすれば、体内の子種の種子が飛散し、更なる被害が及びかねませんからね。それに」
テレス神官は、ふたりに向き直った。
「実践試験にもなります」
「試験?」
「いわば、あの牢にいるのは、親ヒドラの子供のようなものです。その者たちを倒せないのなら、親を討伐するなど、できるはずはありませんよね」
「確かに、そうです」
クララの、杖を持つ手に力が入る。
従者のセリスが、クララの肩をつついた。
「なら、クララ様。あいつらに負けたら、もう退治には行かなくてもいいわけでしょ? だったら今のうちに、勝てませんと宣言しちゃいましょうよね。怪我しなくてすみますし。それで、無事に家へ俺が送り届けますんで」
テレス神官は、笑いながら、
「セリスさん。何か勘違いされてるようです。この試験は、お二人でするものですが」と、言った。
「お、俺が、です?」
従者は驚いて、口をあんぐり開けた。
「これから、お二人に取って置きの魔法術をお教えしましょう。転移魔法というものです」
「転移……」
ふたりは顔を見合わせた。
「ふたりのうち、片方の者が負傷したら、もう片方の者へ傷が転移するんです。負傷した本人には傷はなく痛みも感じないので、戦いに集中できますよ」
クララは、首をかしげた。
「でも、もう片方の者は? どうなるんです?」
「このヒドラは厄介でしてね。奴に喉をかみ切られ絶命した場合、死者は本当に死んだとはいえません。
死者の体内にはすでに彼の子種が植え付けられていて、子種はその死体を自らの肉体とします。放っておけば、いずれ脱皮を繰り返し、成体のヒドラに変化します」
「じゃあ、どうして処分しなかったんです? すぐに遺体を焼却しなかったんですか」
従者のセリスが首をかしげ、テレス神官に訊いた。
「それはできませんね。肉体をその場で焼こうとすれば、体内の子種の種子が飛散し、更なる被害が及びかねませんからね。それに」
テレス神官は、ふたりに向き直った。
「実践試験にもなります」
「試験?」
「いわば、あの牢にいるのは、親ヒドラの子供のようなものです。その者たちを倒せないのなら、親を討伐するなど、できるはずはありませんよね」
「確かに、そうです」
クララの、杖を持つ手に力が入る。
従者のセリスが、クララの肩をつついた。
「なら、クララ様。あいつらに負けたら、もう退治には行かなくてもいいわけでしょ? だったら今のうちに、勝てませんと宣言しちゃいましょうよね。怪我しなくてすみますし。それで、無事に家へ俺が送り届けますんで」
テレス神官は、笑いながら、
「セリスさん。何か勘違いされてるようです。この試験は、お二人でするものですが」と、言った。
「お、俺が、です?」
従者は驚いて、口をあんぐり開けた。
「これから、お二人に取って置きの魔法術をお教えしましょう。転移魔法というものです」
「転移……」
ふたりは顔を見合わせた。
「ふたりのうち、片方の者が負傷したら、もう片方の者へ傷が転移するんです。負傷した本人には傷はなく痛みも感じないので、戦いに集中できますよ」
クララは、首をかしげた。
「でも、もう片方の者は? どうなるんです?」
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