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第八章
第64話
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テレス神官と、セリスとロリーネは、降りしきる雨の中を、まだ対峙したままだった。向かいあったまま、一向に戦おうとはしない。
セリスは、そんな中、まぶたの奥で、ヒドラ獣神が森に去り、冒険者たちの安堵の表情を見た。
「あっちの戦いは、決着が着いたようですね」
テレス神官も、転移魔法でヒドラ獣神から、同じ光景を見ながら、言った。
「そのようですね」
セリスはこたえた。
「どうなったのですか?」
調薬師ロリーネが訊いた。
「平和だよ。クララの勇気のお陰だよ」
「なら、よかった。できるなら、戦いたくはないですから」
ロリーネは、安堵して、玉を腰袋に戻した。
「セリスさんの勇気でもありますよ。あなたが身代わりになっていたかもしれませんよ」
テレス神官は、銀杖を元に戻すと、微笑して言った。
「俺はそれでも、よかった。俺はクララの行動を信じているから」
「あの、セリスト様。その、デレデレした顔、なんか、むかつくんですよ」
ロリーネが、むくれた顔をして、言った。
そして、セリスの腕をつついた。
「さあ、お城に戻りましょう。帰りは、セリスト様が馬の手綱を握ってください」
「分かったが、あまり、セリストという名前を連呼してほしくないのだが……」
セリスは言ったものの、ロリーネは無視してさっさと、馬屋の方へ向かって歩いていく。
セリスはテレス神官に一礼すると、ロリーネの背中を追いかけていった。
馬で駆けていくと、次第に雨は止み、洗い流された、澄み切った空気が漂ってきた。
夜空には、雲から黄色い三日月がのぞいていた。
これからは晴れそうだと、セリスは思った。
セリスは、そんな中、まぶたの奥で、ヒドラ獣神が森に去り、冒険者たちの安堵の表情を見た。
「あっちの戦いは、決着が着いたようですね」
テレス神官も、転移魔法でヒドラ獣神から、同じ光景を見ながら、言った。
「そのようですね」
セリスはこたえた。
「どうなったのですか?」
調薬師ロリーネが訊いた。
「平和だよ。クララの勇気のお陰だよ」
「なら、よかった。できるなら、戦いたくはないですから」
ロリーネは、安堵して、玉を腰袋に戻した。
「セリスさんの勇気でもありますよ。あなたが身代わりになっていたかもしれませんよ」
テレス神官は、銀杖を元に戻すと、微笑して言った。
「俺はそれでも、よかった。俺はクララの行動を信じているから」
「あの、セリスト様。その、デレデレした顔、なんか、むかつくんですよ」
ロリーネが、むくれた顔をして、言った。
そして、セリスの腕をつついた。
「さあ、お城に戻りましょう。帰りは、セリスト様が馬の手綱を握ってください」
「分かったが、あまり、セリストという名前を連呼してほしくないのだが……」
セリスは言ったものの、ロリーネは無視してさっさと、馬屋の方へ向かって歩いていく。
セリスはテレス神官に一礼すると、ロリーネの背中を追いかけていった。
馬で駆けていくと、次第に雨は止み、洗い流された、澄み切った空気が漂ってきた。
夜空には、雲から黄色い三日月がのぞいていた。
これからは晴れそうだと、セリスは思った。
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