生まれる前から好きでした。

文字の大きさ
50 / 77

50.微熱。

しおりを挟む
 一眠りした後、相澤和真と三峰汐音は、夕飯を宅配で済ませ、雑談をしながらゆったりと過ごしていた。

「眠られますか?」

 目を擦る和真の姿を見て、汐音が声を掛けてくる。

「……ああ、そうする」
「分かりました」

 そう言うと、汐音はあっと言う間に和真を抱き上げ、寝室へと運んで行く。下ろせと言っても聞かないことを学習した和真は、諦めて大人しく抱かれていた。
 ベッドへ和真を寝かせると、汐音はさっさと部屋を出て行ってしまった。あまりにあっけなかったので、寂しいとさえ感じていた和真の目に、戸口に布団を抱えた汐音の姿が映る。父の秘書の宮田が汐音の為に和室に用意していた布団を和真の部屋に持ち込んできたようだ。

「え? 同じ部屋で寝る気か?」
「はい。もちろんです。トイレに行きたくなったら、必ず! 声を掛けてくださいね」

 満面の笑みを浮かべて汐音が応じる。

(汐音と同じ部屋で、俺は眠れるのか?)

 そう思っていたのだが、体調が悪かったからか、ベッドに横になった途端、まるで気絶するように眠っていた。
 次の日の朝、額がヒヤリとして、和真は目を覚ました。

「……汐音?」
「すみません。起こしてしまいましたね」

 汐音は心配そうな表情を浮かべ、和真の額に掌を置いていた。

「……熱があります」
「だからか、身体がだるい」

 額に左腕を乗せ、和真はため息を漏らす。すぐに汐音は体温計を持って来て、和真の熱を測る。

「……37.8分。朝でこの高さなら、また高くなるかもしれないです。今日は、まだ学校を休まれた方がいいですね」
「はあ、……そうする」

 気だるげに息を吐き、和真は再び目を閉じた。

「宮田さんには私から連絡しておきます」
「ああ、頼む。宮田さんから学校へ連絡がいくから、汐音はもう学校へ行っていいぞ」
 「私も、今日は和真さんの側におります」
「微熱だ。心配するな。大人しく寝ているから、汐音はちゃんと学校へ行け」
「……」

 まったく動こうとしない心配性の汐音に和真は目を向ける。

(心配せずに行け、と言っても聞かないよな……)

「……頼みがある」
「! 何でしょうか?」

 前のめりで汐音が聞いてくる。

「授業が終わったら、早く帰ってきてほしい」
「!」
「汐音が今頃何をしているのかな? とか考えながら待ってるよ」
「!!」

 汐音の顔が、ぱあっと輝いた。
 こういう顔をする時の汐音は、本当に可愛いんだよな、と和真は心の中で呟く。

「分かりました! 飛んで帰ってきます!」

 本当に飛んで帰ってきそうな勢いで、汐音が答える。

「ああ、待ってる。その前に今からトイレに行くのに手を貸してくれる?」

 右手を持ち上げれば、汐音が飛びつくように両手で包み込んできた。

「はい! 喜んで!」

 居酒屋の店員のような返答をして和真を軽々と抱き上げたので、和真は反射的に汐音の首へ腕を回したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

君の恋人

risashy
BL
朝賀千尋(あさか ちひろ)は一番の親友である茅野怜(かやの れい)に片思いをしていた。 伝えるつもりもなかった気持ちを思い余って告げてしまった朝賀。 もう終わりだ、友達でさえいられない、と思っていたのに、茅野は「付き合おう」と答えてくれて——。 不器用な二人がすれ違いながら心を通わせていくお話。

ビジネス婚は甘い、甘い、甘い!

ユーリ
BL
幼馴染のモデル兼俳優にビジネス婚を申し込まれた湊は承諾するけれど、結婚生活は思ったより甘くて…しかもなぜか同僚にも迫られて!? 「お前はいい加減俺に興味を持て」イケメン芸能人×ただの一般人「だって興味ないもん」ーー自分の旦那に全く興味のない湊に嫁としての自覚は芽生えるか??

僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。 なんの不自由もない。 5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が 全てやって居た。 そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。 「俺、再婚しようと思うんだけど……」 この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。 だが、好きになってしまったになら仕方がない。 反対する事なく母親になる人と会う事に……。 そこには兄になる青年がついていて…。 いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。 だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。 自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて いってしまうが……。 それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。 何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

ギャルゲー主人公に狙われてます

一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。 自分の役割は主人公の親友ポジ ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、

【完結】浮薄な文官は嘘をつく

七咲陸
BL
『薄幸文官志望は嘘をつく』 続編。 イヴ=スタームは王立騎士団の経理部の文官であった。 父に「スターム家再興のため、カシミール=グランティーノに近づき、篭絡し、金を引き出せ」と命令を受ける。 イヴはスターム家特有の治癒の力を使って、頭痛に悩んでいたカシミールに近づくことに成功してしまう。 カシミールに、「どうして俺の治癒をするのか教えてくれ」と言われ、焦ったイヴは『カシミールを好きだから』と嘘をついてしまった。 そう、これは─── 浮薄で、浅はかな文官が、嘘をついたせいで全てを失った物語。 □『薄幸文官志望は嘘をつく』を読まなくても出来る限り大丈夫なようにしています。 □全17話

処理中です...