生まれる前から好きでした。

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10.放課後。

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 保健室から戻ってきた相澤和真の姿を見つけるやいなや、福井奏ふくいそうが駆け寄って来た。

「和真! どこに行っていたんだよ!」

 どうやら心配してくれていたらしい。

「眠かったから保健室で寝てきた」
「保健室? あ、そうか。悪い夢を見たって言ってたもんな。もう大丈夫なのか?」
「……え? ああ。うん。大丈夫。ありがとう」

 悪い夢と言われた瞬間、なぜか否定したくなった。自分が処刑されるのだからどう考えても悪夢でしかない。無意識に首の後ろに手を当てる。

(あれが夢でなく、おれの前世の記憶なら、……処刑って、斬首だったんだな)

 夢と断言するにはあまりにリアルだった。魂の記憶を垣間見たのだと思っている。目覚めた時、涙腺が崩壊したのかと思うほど涙が溢れ出てきたのだ。なんとも言えない気持ちを持て余し目を閉じれば、あの若い騎士の必死な姿が脳裏に浮かんできた。もしあれが汐音の前世の姿かと思うと、懐かしいような、切ないような、悪い夢と言い切れない不思議な感情が湧き上がってくる。

(あいつ、前世でも整った顔をしてたな……)

 どこか歯切れの悪い返事に、奏は何かを感じとったようだ。どこか探るような眼差しを向けてくる。

「……あの一年坊主と何かあったんじゃないのか?」

 鋭い洞察力にギクリとなる。

「え……? 一年?」
「和真が連れて行ったあの一年だよ。おまえは帰ってきていないのに、次の休み時間にはあの一年がまた和真に会いに来たんだよ。和真が戻って来てないって言ったら、あいつは血相を変えてどこかへ走り去ったからな。何かあったんだと思って心配になってた」
「そういうことか、だから保健室に……」
「ん? どうした?」
「あ、いや、奏には心配かけたんだなと思って。ごめん」
「謝んなくていいから。……あ、そうだ! 和真が居ない間に、班分けが終わっちまったぞ」
「班分け? なんの?」
「三泊四日の林間学校がすぐにあるだろ?」
「ああ……、そんな事を担任が言ってたような言ってなかったような──」
「いや、はっきり言ってた」

 あまりに適当な和真に対し、奏はどこか呆れているようにツッコミを入れてくる。

「そうか。言ってたのか。きっと聞いた瞬間、おれは現実逃避していたんだろうな。……三泊四日か~、長いな。で、おれの班には誰がいんの?」

 奏以外は基本挨拶程度であまり話をしたことがない和真にとっては、班分けや席替えほど嫌なものはない。人が嫌いとかではないのだが、どうも人と接すると酷く疲れるからだ。そう考えると、奏は特別だと言える。

「心配すんな。和真は、俺と同じ班にしたから」
「奏と?」

 あからさまにほっとすれば、奏は嬉しそうに目を細めた。

「え? 何? 俺と一緒で嬉しい?」

 ニヤニヤしながら聞いてくるから、調子に乗るなよと軽く睨む。

「嬉しいも何も、奏と一緒なら気が楽だなと思っただけだ」
「うんうん、そうだよな。和真は俺にだけ気を許してるんだよな。ちなみに、班長は俺だから」
「そうなのか? 分かった。宜しくな、班長さん」
「おうよ!」

 奏と話をしながらも、和真は放課後の事を考えていた。
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