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12.笑顔。
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相澤和真と三峰汐音は無言で学校の昇降口に向かっていた。和真の後ろを汐音がトボトボとついて来る。
「和真さん」
背後から聞こえた声に、和真は振り返った。汐音が足を止め、憂いを帯びた眼差しで見つめてくる。
「……まだ、帰りたくないです」
我儘な子供のような言葉が汐音の唇から溢れる。
「何で?」
「私と話をしてくださるのではなかったのですか?」
「……少し話をしただろ?」
少し苛立ちを感じながら和真は答えた。
(……おれは何をイラついているんだ?)
和真は自分の感情が分からず戸惑う。今までにこんな事はなかった。そんな和真の心情などかまわず汐音が言い募る。
「そうです。少しです。少しでした。少ししか話せていません!」
和真は口をつぐんだ。反論できなかったからだ。
確かに、汐音が言うように話をしようと提案したのは和真だ。それを途中で打ち切った自覚があった。まっすぐな眼差しから逃れるように視線を落とした。
「……今日は、本調子じゃないんだ」
言ってしまってから言い訳だなと気付く。思わず自分自身に舌打ちしたくなった。
だか、汐音は言葉どおり受け取ってしまったようだ。一瞬で顔を強張らせている。
「すみません! 勝手に浮かれていました。和真さんが体調を崩されていた事を知っていたのに……」
「謝るな。おまえは悪くない。……話をしようと言ったのはおれだ。なのに、すぐに帰ると言って、……ごめん。悪かった」
気まずげに謝罪を口にすれば、汐音が間合いを一気に詰めてきた。
「いいえ! 和真さんは悪くなどありません。それよりも家まで送らせてください!」
「え? あ、いや、送らなくてもいい。近くなんだ」
「本調子でないご自覚はありますよね? 僅かでも悪かったと思ってくださったのなら、せめて家の前まで送らせてください。……それとも、私が近くに居るのも嫌なのですか?」
捨てられた猫のような悲し気な目で見つめられ、和真はぐっと言葉に詰まる。
「……携帯のアドレスの交換だけでもさせていただけませんか? 無事に家に着いたとご連絡をいただけるだけでいいのです。そうでないと、明日、和真さんの顔を見るまでは、心配で、心配で……」
どんどん暗く沈んでいく汐音の姿に、和真は慌てた。
「わ、分かった。分かったから……。じゃあ、携帯で連絡する」
「……分かりました」
少しの間を置いて汐音が応じる。その間の意味に気付き、スマホを出しながら和真はぼそりと呟いた。
「……別に、おまえが近くに居るのが嫌でアドレスを交換するんじゃないからな」
照れ臭さから、声はとても小さなものになってしまった。
「!」
汐音がはっと顔を上げたかと思うと、光を放つような笑顔を和真に向けてきた。
(くっ……ま、眩しい──)
和真はドクッと強く脈打つ胸を押さえる。
一方で、もったいないと思わずにはいられなかった。汐音の顔は言わずもがな、長身のうえ、頭も首席レベルだ。性格も一途で可愛いところもある。
(前世に囚われなければ、これだけの高スペックを持っているんだ。いくらでも新たな恋が出来るだろうに……)
そそくさとアドレスを交換すると、和真は背に汐音の熱い視線を感じながら校舎を後にした。汐音の視線を感じなくなった瞬間、和真は立ち止まってしまった。自分の靴先をじっと見つめる。
(……逃げてしまった。おれは逃げ出したんだ)
和真は嫌だったのだ。未だに汐音の心を掴んで離さないフィーリアに嫉妬をしたのだ。気づきたくなかった自分の気持ちに和真は気づいてしまったのだった。
「和真さん」
背後から聞こえた声に、和真は振り返った。汐音が足を止め、憂いを帯びた眼差しで見つめてくる。
「……まだ、帰りたくないです」
我儘な子供のような言葉が汐音の唇から溢れる。
「何で?」
「私と話をしてくださるのではなかったのですか?」
「……少し話をしただろ?」
少し苛立ちを感じながら和真は答えた。
(……おれは何をイラついているんだ?)
和真は自分の感情が分からず戸惑う。今までにこんな事はなかった。そんな和真の心情などかまわず汐音が言い募る。
「そうです。少しです。少しでした。少ししか話せていません!」
和真は口をつぐんだ。反論できなかったからだ。
確かに、汐音が言うように話をしようと提案したのは和真だ。それを途中で打ち切った自覚があった。まっすぐな眼差しから逃れるように視線を落とした。
「……今日は、本調子じゃないんだ」
言ってしまってから言い訳だなと気付く。思わず自分自身に舌打ちしたくなった。
だか、汐音は言葉どおり受け取ってしまったようだ。一瞬で顔を強張らせている。
「すみません! 勝手に浮かれていました。和真さんが体調を崩されていた事を知っていたのに……」
「謝るな。おまえは悪くない。……話をしようと言ったのはおれだ。なのに、すぐに帰ると言って、……ごめん。悪かった」
気まずげに謝罪を口にすれば、汐音が間合いを一気に詰めてきた。
「いいえ! 和真さんは悪くなどありません。それよりも家まで送らせてください!」
「え? あ、いや、送らなくてもいい。近くなんだ」
「本調子でないご自覚はありますよね? 僅かでも悪かったと思ってくださったのなら、せめて家の前まで送らせてください。……それとも、私が近くに居るのも嫌なのですか?」
捨てられた猫のような悲し気な目で見つめられ、和真はぐっと言葉に詰まる。
「……携帯のアドレスの交換だけでもさせていただけませんか? 無事に家に着いたとご連絡をいただけるだけでいいのです。そうでないと、明日、和真さんの顔を見るまでは、心配で、心配で……」
どんどん暗く沈んでいく汐音の姿に、和真は慌てた。
「わ、分かった。分かったから……。じゃあ、携帯で連絡する」
「……分かりました」
少しの間を置いて汐音が応じる。その間の意味に気付き、スマホを出しながら和真はぼそりと呟いた。
「……別に、おまえが近くに居るのが嫌でアドレスを交換するんじゃないからな」
照れ臭さから、声はとても小さなものになってしまった。
「!」
汐音がはっと顔を上げたかと思うと、光を放つような笑顔を和真に向けてきた。
(くっ……ま、眩しい──)
和真はドクッと強く脈打つ胸を押さえる。
一方で、もったいないと思わずにはいられなかった。汐音の顔は言わずもがな、長身のうえ、頭も首席レベルだ。性格も一途で可愛いところもある。
(前世に囚われなければ、これだけの高スペックを持っているんだ。いくらでも新たな恋が出来るだろうに……)
そそくさとアドレスを交換すると、和真は背に汐音の熱い視線を感じながら校舎を後にした。汐音の視線を感じなくなった瞬間、和真は立ち止まってしまった。自分の靴先をじっと見つめる。
(……逃げてしまった。おれは逃げ出したんだ)
和真は嫌だったのだ。未だに汐音の心を掴んで離さないフィーリアに嫉妬をしたのだ。気づきたくなかった自分の気持ちに和真は気づいてしまったのだった。
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