生まれる前から好きでした。

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13. 争奪戦。

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 相澤和真はうんざりしていた。
 理由は明白だ。
 人見知りで人付き合いが苦手だというのに、休み時間ごとに人に囲まれ、まったく落ち着けないからだ。

「相澤! 頼むからバレー部に入ってくれ! マネージャーでいいからさ!」
「バスケ部は身長を気にしているんだろ? 大丈夫だ! マネージャーなら身長は関係ない!」
「陸上部なら相澤にあったものが必ずあるはずだ! 陸上部に入ってくれ!」
「相澤君! 美術に興味ない? 楽しいよ! 三峰君と一緒に見学に来てよ。モデルになってくれるだけでもいいから! お願い!」
「いやいや男なら柔道だろ?」

 2年になった和真になぜかいろんな部活の勧誘が押し寄せていた。それもほとんどがマネージャーとしてでだ。誘い文句の中には、かなり失礼な言葉も交じっている。もちろん、すべて断っているのだが。
 しかし、断っても断っても、次々に勧誘に来るのだ。

(……何でこうなった?)

 今朝、正門近くで三峰汐音が和真を待っていた。汐音への自分の感情に気付いた和真は動揺していたために小石に躓いて見事に転んだ。
 だが、地面に激突寸前で、そばにいた汐音に抱き留められ、怪我をせずにすんだのだが。
 その時、たまたま近くに居たテニス部のキャプテンが見ていて、汐音の瞬発力と、男一人を軽々と抱きとめる腕の力及びバランス感覚に興味を持ったようだった。

「すごいな。何か運動やってる?」
「体術を一通り」
「体術を一通り⁈ それは、凄いね。テニス部に入る気はない? 君なら大歓迎だ。その体幹と筋肉と瞬発力があれば、県大会どころか、全国レベルで戦える選手に育ちそうだ」
「相澤先輩が入っている部活なら、二つ返事で入ります」

 汐音が発したその一言で、なぜか相澤和真の争奪戦が始まったのだった。
 昼休みになった時、人の気も知らず、汐音が害のなさそうな顔で姿を現した。

「相澤先輩!」

 嬉しそうに教室の入り口から和真の名前を呼ぶ。
 だが、入り口にいた女達に昼食を一緒にと誘われ、足止めを食らっていた。
 しかし、そこは慣れたもので、上手く笑顔と言葉でかわし、和真の元へまっすぐに突進してくる。その汐音の前になぜか福井奏が立ちはだかった。二人が並び立つと奏の方が高いことが分かる。

(……二人とも、身長は何センチあるんだ?)

 和真の呑気な疑問に比べ、汐音と奏の間では険悪なムードが漂い始めていた。

「……そこをどいてもらえませんか?」

 すっと笑みを消した汐音が奏を見る。

「おまえさ、もうここへ来るな」

 呆れたような声で奏が言い切った。
 途端、汐音のまとう気が剣呑けんのんなものへと変わる。

「……突然ですね。理由は何ですか?」
「おまえは和真を困らせているからだ」
「困らせる?」

 怪訝けげんそうに首を傾げ、汐音は視線を和真に戻す。

「そうなのですか?」

 真意を確かめようとするように汐音がますぐに見つめてくる。和真はため息交じりに応じる。

「……今朝から、おまえを引き入れたい部活の方々から、猛烈な勧誘を受けまくっているんだ」
「なるほど。それは大変ですね。しっかりと対策を考えないといけません。お昼は持って来ていますか?」
「え? 持って来てないけど……?」
「そうですか。では行きましょう! 、相澤先輩の分も持って来てしまいました♡」

 和真には汐音の言葉の語尾にハートの形が見えた気がした。汐音が和真の腕を徐に掴む。

「え? って、おい! 汐音!」

 奏の『ここへ来るな』に対し、まったく応じるつもりも動じている気配も無く、汐音は和真の腕を掴んだまま戸口へと引っ張って行く。

「おいっ! 待てよ!」

 奏の静止の声に、汐音は肩越しに振り返った。

「二人の問題なんです。相澤先輩と相談しますので、ご安心ください」
「!」

 暗に、部外者は口出しするなと上辺だけの笑みを浮かべながら奏を軽くいなし、汐音は和真を教室から連れ出したのだった。
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