手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

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第36話

我々はすでに神の領域に踏み込んだ者

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「ケイリィ、くん・・・?」

「さ、刺された・・・?」

「ケイリィくんが刺された・・・!」

「殺し屋の中にあんな子供まで・・・!?」


ケイリィが刺されたことでざわつく生徒達。
胸から血を流し、その場に倒れ伏すケイリィ
それを蛇の女に捕まっているリチアは見てしまい固まっていた。



え・・・?ケイ・・・・??






ケイ・・・
うそ・・・・。や・・・・


リチア「いやぁぁぁ・・・!!!」



その時。
眩い光がリチアに集まり、
蛇の女こと、キャスは驚きつつリチアから身を引く。

そして次の瞬間、光を体に纏ったままリチアは素早い動きで自らの剣で次々と殺し屋たち突き刺して行く。



あまりの速さに反応できないでいる殺し屋。
一瞬にして殺し屋は倒されるが、完全には息絶えていなかった。その場にただ伏しているだけで肩を上下に動かして苦しそうに呼吸をしていた。



そんなリチアを見た生徒達は、
「す、すげぇ・・・」

「で、でもなんかリチアちゃん・・・なんか、怖い・・・」

「怖い顔してるし・・・あれ、本当にリチアちゃん、なの・・・?」

「と、止めた方がいいんじゃ・・・今のリチアちゃん、周りが見えてない・・・」


ランは血を流して倒れているケイリィに治癒魔法をかけつつも、リチアを黙って見ている。


(リチアさん・・・。)


リチアはケイリィを刺した女の子を見やると、ゆっくりとその子に近づいていく。



「あ・・・」

「ぺぺ!逃げろ・・・!」

地面に倒れ伏している仲間がそう叫ぶ。

「・・・っ」

ぺぺと呼ばれた小さな女の子はリチアから目を離せずに一歩一歩下がる。

そしてリチアが剣を構えてぺぺに向けて剣を振り下ろそうとしたところ殺し屋のリーダーが立ち上がってカバーに入るが、それをリチアは無表情でその殺し屋の武器をはじいて胸を突き刺した。
突き刺した剣を引き抜き、そのリーダーは地面に膝をつき胸を押さえてリチアを見上げた。




「ぐ・・・こ、の、化け物が・・・!!」




ぺぺと呼ばれた殺し屋の小さな女の子はそのリーダーに
駆け寄る。そしてぺぺはリーダーを守る為に前に出て盾になる。

が、そのぺぺの足はガタガタと震えていた。とても立ち向かえる状況ではなかった。
今のリチアは誰から見ても怖いのだろう。


そんなぺぺに構わず剣を構えてゆっくり向かっていくリチア。
それを見ていた生徒達。



「まさかリチアちゃん・・・?」

「あんな優しい子が・・・無表情で小さな女の子を殺すの・・・?」

「リチアちゃんダメ・・・ダメだよ・・・」




リチアちゃん・・・いつもの明るい笑顔はどうしたの・・・?
そんな、怖い顔をしたリチアちゃんに、殺しなんてしてほしくない・・・っ

確かにあの女の子は殺し屋だけどさ・・・っ
こんなのって・・・。







リチアはぺぺの前に来ると剣を構え、そして今度こそぺぺにトドメを刺そうと振り下ろそうとした瞬間だった。






ザシュ・・・



何かが斬られた音が響いた。
鮮血がその場に舞う...。


だがその血はぺぺからではなかった。
リチアの前にはランが立ち塞がり、ランの胸からは大量の血が流れ出ていた。


ずっと虚ろだったリチアの瞳が、ふと我に変えり輝きを取り戻した後でゆっくりランを見上げる。




リチア「せん・・・ぱ、い・・・?」




ランの胸から出ている血に、
リチアはハッとして自らの剣を見つめる。
そこには血がべっとりついていて、思わず剣から手を離す。
そして辺りを見渡すとほとんどの殺し屋が血を流し倒れているそんな現状にリチアは頭を抱えた。




リチア「わた・・・私は・・・なに、を・・・」

ラン「それが貴方の力なのですね。」

リチア「先輩・・・どう、して・・・?その子は・・・ケイを・・・」


ラン「もう貴方の力は分かりましたか。貴方が手を汚すところを見たくありませんので・・・。ケイリィさんなら大丈夫です。治癒魔法はかけたので、きっとよくなりますよ」


そう言って優しくリチアを抱きしめる。
リチアはその言葉に安心したのか、そこで意識を手放した。
リチアが気を失った瞬間殺し屋らは立ちあがり生徒達と騎士を取り囲み、高く飛び上がって全員が武器を構えて向かってきた。


「化け物揃いが!!いっそ皆ここで殺してやるよ!!!」



「あんな怪我負ってるのにまだ立ち上がれるの・・・?!」

「どっちが化け物だよ・・・!」
生徒達がそう言う。



と、その時だ。


今までなにもせずに傍観していたキキョウが生徒達を守るように立ち、迫ってきていた殺し屋たちを大剣で薙ぎ払い地面に落とされる殺し屋達。

そして殺し屋のリーダーの胸に大剣を突き立てるとその大剣から炎が吹き上がる。





「ぐわああああぁぁ・・・!!!こ、の・・・っ
化け、物・・がァ・・・!!」



その殺し屋のリーダーはキキョウの剣に触れて抜こうとしていた。
まだまだこの程度の炎では死んではいないらしい。



「はぁぁぁぁぁぁあ!!!」


何度でも立ち上がる殺し屋。
リーダーを助ける為に殺し屋らはキキョウに迫っていき胸に武器を突きさした。


「キキョウ先輩!」
生徒達はキキョウを心配してかそう叫ぶ。


ランはリチアを抱えながらもキキョウを見る。








ここで刺されたら死ぬのが人間。
だが、
我々はすでに神の領域に踏み込んだ者。
そうそう死ぬことはない。
あのお方が・・・我々をこんな世界から、嫌になっていた日々から救ってくださった・・・





カトレア様に我々は着いていくと誓ったのだから・・・。












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