手向け花を捧ぐーREー

井上なぎさ

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第42話

「・・・優しい騎士様がくれたの」

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その夜、騎士寮にて。


ランとノウゼンカズラは明かりの点いていない薄暗い会議室にて机を囲んで椅子に腰をかけている。
窓から差し込む月の光がその会議室の中を照らしていた。



ラン「それで、そちらの任務はどうだったのですか?」

ノウゼンカズラ「・・・お前も会ったと思うが、施設のメガネの女居ただろ。そいつが人身売買に手ぇ貸してやがってた」

ランはコーヒーを口に含む。

ラン「・・・そんな方には見えませんでしたが」

ノウゼンカズラ「だから俺らも信じられなかったんだよ。本人に聞くしかねぇってよ」

ラン「それでその方とは話がついたのですか?」

ノウゼンカズラ「あぁ。今は病院なんじゃねぇか」
 
ラン「・・・そうですか。それ以上の事情は聞きませんが、殺さなくてよかったのですか?
また同じことを繰り返すかもしれませんよ」

ノウゼンカズラ「・・・あいつは、もうそんなことはしねぇよ・・・」











ー病院。

手術室の前の椅子に座る夫。
と、そこにディアナが走ってやってきた。


息を切らし、手には封筒が握られている。

 

「・・・ディアナ・・・」

ディアナ「ジュリエッタは・・・?」

「まだあれからずっと手術中だ。もう何時間待ってるか分からないぐらい・・・」



ジュリエッタ・・・。


ディアナ「・・・やっぱり・・・ここより大きな病院に移動して診てもらった方がいいわ」

「だけどそんな金・・・」

ディアナ「あるわよ。これ・・・」

「これって・・・?」


ディアナは夫に封筒を見せる。


ディアナ「ちゃんと、大きな病院に行っても手術受けられるほどの額が入ってる」

「おまえ、どこでこれを・・・」

ディアナ「・・・優しい騎士様がくれたの」

・・・今度、お礼しに行かなきゃね・・・。





そんな会話をしていれば手術室の光が消え、ポーンという音とともに手術室の扉が開いた。



「先生・・・!ど、どうでしたか・・・!?」

ディアナ「うちの娘・・・ジュリエッタは・・・!?」

夫とディアナは医師に駆け寄る。だが、医師の表情は辛かった。


「・・・申し訳ない・・・最善を尽くしたが・・・娘さんは・・・・」

ディアナ「・・・!う、そ・・・嘘でしょ・・・?ねぇ・・・!!」


ディアナは医師の胸ぐらを掴む。
医者が肩を震わせ泣いてるのをみて嘘じゃないことが分かった。


夫はディアナの肩を優しく掴む。




うそ・・・嘘だ・・・っ



ジュリエッタ・・・ジュリエッタ・・・っ

ディアナは夫の胸で泣き崩れた。





まだ、あなたに広い世界・・・見せてあげれてないのに・・・。

ディアナは手に持っていたクシャクシャの封筒を見つめる。





ヒューくん・・・フォンくん・・・ごめん、ごめんね・・・。


無駄になっちゃった・・・。












そんな時だった。


手術室の扉が開いて慌てて出てきたのは女の医師だった。



「せ、先生!大変・・・」グサ・・・

突如女の医師はその場に血を拭いて倒れた。
背中にはナイフが突き立てられている。


ディアナ達がそちらに目をやれば・・・



ディアナ「え・・・・?」


その女医師の背中に突き立てた刃物を抜き取る女の子がいた。その女の子をディアナは見間違えるはずもなかった。







どう・・して・・・?



「し、信じられん・・・生きて・・・いたのか?」


ディアナ「じゅ・・・ジュリエッタ・・・?」

ディアナはジュリエッタに歩み寄ろうとする。だけど、ジュリエッタはナイフの矛先をディアナに向けた。


ジュリエッタ「・・・この世界なんか、嫌い・・・。大っ嫌い」
と言い、ジュリエッタはナイフを構えてディアナ達へと向かっていった・・・。











ーーー








ケイリィは自分の寮の自室で目を覚ました。

ケイリィ「ここ・・・寮の、部屋・・・?いつの間に帰ってきたんだろ・・・」
ベッドから体を起こすケイリィ。



そういえば、俺・・・どうしたんだっけ。
確か任務中に・・・。





コンコン、


その時部屋の扉がノックされた。



ケイリィ「だれだろ・・・リチアかな・・・」

ケイリィがはい?と返事をしつつも扉を開ければそこに居たのはカトレアとキキョウだった事に驚くケイリィ。


ケイリィ「キキョウ先輩に、カトレア、様・・・!?お、俺に何の御用で・・・?」

カトレア「任務お疲れ様。聞いたわ。任務先で刺されたんだって?
怪我の具合は大丈夫かしら?」

ケイリィ「え・・・?あ、はい。今はもう、怪我をしたなんて嘘みたいにどこも痛くないので」




そうか、俺・・・刺されたんだっけ・・・。



カトレア「それはよかったわ。ランの治癒魔法は止血を完ぺきに止めちゃうからね。
ここまで貴方を運んだのはキキョウだそうよ」

ケイリィ「キキョウ先輩が・・・?」


ケイリィはカトレアの後ろにいるキキョウに目をやる。


なんて言うか、意外だな・・・。



カトレア「それはそうと、ケイリィさんに渡したいものがあるの。はい、どうぞ」



差し出されたのは人形だった。


ケイリィ「人形・・・?」

カトレア「任務を頑張ったご褒美と言ったら良いかしら。
他の生徒たちにもケイリィさんとはまた違った人形をプレゼントしたのよ。
電源を入れたらこの人形とお喋りできるみたいなの。ケイリィさんの声に反応して返してくれるみたいよ」


ケイリィ「へぇ・・・」

ケイリィはその人形をまじまじと見つめた。


カトレア「用はそれだけよ。任務お疲れ様。今日はゆっくり体を休ませなさいな」

ケイリィ「は、はい」

カトレア「あら?」

カトレアとキキョウがその部屋から出ようとしたところ、ケイリィの部屋の前にリチアが立っていた。


ケイリィ「あ、リチア・・・?」

カトレア「リチアさんね、目を真っ赤にしながらケイリィさんが目を覚さないってずっと泣いていたらしいわよ」

ケイリィ「・・・え?」

リチア「か、カトレア様・・・!?そ、それは言わない約束です・・・!」

カトレア「ふふ、反応見たさについ言ってしまったわ。
それじゃ、おやすみなさい。お二人さん」


カトレアとキキョウは去って行こうとした時ケイリィはキキョウの背中に「運んでくれてありがとうございました!」と言えばキキョウは振り返ることはなく片手だけをあげて返す。

その2人を見送り、その場にはリチアとケイリィだけが残った。










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