One night stand after〜俺様カメラマンと一夜限りの関係のはずが気付けば愛執に捕らわれていました〜

玖羽 望月

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☆番外編4☆

とある日常の風景 6

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 上をぼんやりと眺めていた瑤子は、急にフッと表情を緩める。

「本当、不思議だなぁ……」

 ポツリと呟くように瑤子は言う。

「何がだ?」

 その問いに、またふふっと笑い声を漏らすと、瑤子はこちらに顔を向けた。

「1年前はまだこの子はお腹の中にいて、2年前はまだ司と出会ってなかったのかぁって」

 しみじみとそう言いながら、慈愛に満ちた瞳を俺と壱花に向け瑤子は微笑む。

「そうだな。もうお前といるのが当たり前すぎて、何年も一緒にいるような気はするけどな?」

 瑤子に出会う前の俺は、それなりに面白おかしく過ごしていたと思う。けれど今湧き上がるのは、それとはまた別の感情だ。

「2年前の私は、こんな日が来るなんて想像すらできなかった。可愛い子どもと素敵な旦那様に囲まれて、こんな穏やかな誕生日を過ごせるなんて」

 フワッと優しい風が吹いて、俺たちのあいだを抜けていく。それに瑤子の髪が揺れると頰にかかった。それを指ですくように動かした俺の手に、瑤子は自分の手を重ねた。

「ありがとう。こんな素敵な誕生日をプレゼントしてくれて。本当に幸せ」

 そう言って俺を見つめるその顔に、俺の心は温かくなる。そんな気持ちを教えてくれたのは、他でもない、目の前の何より大事な女。
 俺は体を起こすと、ゆっくり瑤子に顔を寄せる。

「……俺も」

 瞳を潤ませたその顔は、今からされようとしていることを肯定しているようだ。俺はそのまま、その唇にそっと重なった。


「あー! ママー! チューしてる人がいるー!」
「キャー! すみません!」

 そんな声が遠くから聞こえてきて、顔を離すと2人で笑い合う。

「見られてたわよ?」

 恥ずかしそうに顔を顰めて瑤子は言う。俺はそれに笑みを浮かべて答えた。

「続きは、誰も見てないところで、だな?」
「……もう!」

 まんざらでもなさそうな瑤子の手を握ったまま、俺はまたシートに転がった。

 こんなふうに、ただこうしてのんびりと空を見上げている時間が、こんなに幸せだと思っていなかった。

 特別な、日常。それはきっと、これからも続いていく。
 そんなことを俺は思った。

Fin
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