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番外編SS
真夏の夜の願い事.4
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「あの場所?」
「ああ。ずっと知っていた場所なのに、全く気づかなかった」
そう切り出すと、依澄さんは懐かしそうに話し出す。
「お祖母さまが持っていた写真が、ここと同じ風景だった。昔、よく見せてもらったんだ。この岩場の感じも、富士山との距離感も同じだ。モノクロ写真だったし、どこか分からなくてな」
再会してすぐ、依澄さんと富士山を見た。さっきの横顔は今と同じ。お祖母さまとの、懐かしい記憶を呼び起こしているように思えた。
「海の向こうに富士山が見えるなんて、素敵な場所だね。……そうだ、写真! 撮ってお祖母さまに送ったらどう?」
「そうだな。喜んでくれるかも知れない」
スマートフォンを取り出した依澄さんは、それを掲げて何度かシャッターを切る。それから私に向くと腕を引いた。
「恵舞も一緒に。ほら、海に背中向けて?」
クルリと私を横に向かせると、依澄さんは肩を抱く。さっきより高く掲げたスマートフォンの画面には、寄り添う私たちをバックに美しい景色が広がっている。
春には、同じように桜の花と一緒に写真を撮った。あの時は戸惑いの方が大きくて、うまく笑えなかったことを思い出す。
けれど今日は、顔を寄せ合いながら、自然と笑顔が溢れた。
撮れた写真を確認した依澄さんは、満足そうな表情だ。
「いい顔してる。待ち受け画面に設定しようかな」
「え! もちろんジョークだよね?」
間髪入れず確認してみる。時々ジョークにしか聞こえない、突拍子もないことを本気で言うことがあるからだ。
「駄目……なのか?」
目に見えてシュンとしてしまい、本気だったのかと焦る。
「さっ、さすがにほら、誰かに見られるかも知れないし。ちょっと恥ずかしいかなぁって」
慌てて取り繕うように言うと、「俺は構わないのに」なんて少し拗ね気味で返ってくる。
「別に、依澄さんと一緒にいるのが恥ずかしいわけじゃないから! でもほら、どこで噂になるか分からないでしょ? 妻との写真見てニヤニヤしてた、とか」
適当な理由を付けると、依澄さんは笑い出す。
「それは真実だから仕方ないんじゃないのか? まあ、恵舞に迷惑が掛かってはいけないし、諦めるよ。こっそり眺めればいい話だ」
「……いったい、どこで眺めるつもり?」
「残業中とか?」
「もー! 仕事に集中しようよ!」
そんな、くだらない会話をして笑う。
けれど依澄さんとの夏の思い出が一つ増えた。それが何よりも嬉しかった。
「ああ。ずっと知っていた場所なのに、全く気づかなかった」
そう切り出すと、依澄さんは懐かしそうに話し出す。
「お祖母さまが持っていた写真が、ここと同じ風景だった。昔、よく見せてもらったんだ。この岩場の感じも、富士山との距離感も同じだ。モノクロ写真だったし、どこか分からなくてな」
再会してすぐ、依澄さんと富士山を見た。さっきの横顔は今と同じ。お祖母さまとの、懐かしい記憶を呼び起こしているように思えた。
「海の向こうに富士山が見えるなんて、素敵な場所だね。……そうだ、写真! 撮ってお祖母さまに送ったらどう?」
「そうだな。喜んでくれるかも知れない」
スマートフォンを取り出した依澄さんは、それを掲げて何度かシャッターを切る。それから私に向くと腕を引いた。
「恵舞も一緒に。ほら、海に背中向けて?」
クルリと私を横に向かせると、依澄さんは肩を抱く。さっきより高く掲げたスマートフォンの画面には、寄り添う私たちをバックに美しい景色が広がっている。
春には、同じように桜の花と一緒に写真を撮った。あの時は戸惑いの方が大きくて、うまく笑えなかったことを思い出す。
けれど今日は、顔を寄せ合いながら、自然と笑顔が溢れた。
撮れた写真を確認した依澄さんは、満足そうな表情だ。
「いい顔してる。待ち受け画面に設定しようかな」
「え! もちろんジョークだよね?」
間髪入れず確認してみる。時々ジョークにしか聞こえない、突拍子もないことを本気で言うことがあるからだ。
「駄目……なのか?」
目に見えてシュンとしてしまい、本気だったのかと焦る。
「さっ、さすがにほら、誰かに見られるかも知れないし。ちょっと恥ずかしいかなぁって」
慌てて取り繕うように言うと、「俺は構わないのに」なんて少し拗ね気味で返ってくる。
「別に、依澄さんと一緒にいるのが恥ずかしいわけじゃないから! でもほら、どこで噂になるか分からないでしょ? 妻との写真見てニヤニヤしてた、とか」
適当な理由を付けると、依澄さんは笑い出す。
「それは真実だから仕方ないんじゃないのか? まあ、恵舞に迷惑が掛かってはいけないし、諦めるよ。こっそり眺めればいい話だ」
「……いったい、どこで眺めるつもり?」
「残業中とか?」
「もー! 仕事に集中しようよ!」
そんな、くだらない会話をして笑う。
けれど依澄さんとの夏の思い出が一つ増えた。それが何よりも嬉しかった。
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