駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

文字の大きさ
46 / 206
2.吹き荒れるは、春疾風

24*

しおりを挟む
 一度緩めた腕に再び力を込め、彼は私を抱き寄せる。そして耳には、悩ましげに息を吐く気配が伝わってきた。

「それって……どういう意味?」
「え?」

 遠回しすぎたのか、それともわかっていて尋ねているのか、どちらなのだろう。けれどはっきりわかるのは、彼の心臓も自分と同じくらい早鐘を打っているということだ。

「嘘ついてごめんなさい。明日、本当は仕事は午後から……なんです。だから……」

 朝帰りでも構わない、と口に出すのは憚られ言葉を濁す。彼はどう思っているだろうか。結婚は考えていないなんて言いながら、大人の関係を望むような私のことを。

「今日は……帰さなくてもいい、って受け取ってもいいのか?」
「……その。重く受け取らないでください。デーティングで体の相性を確かめるなんて、よくあることでしょう?」

 あえて強がってそんなことを言ってみる。日本こっちではあり得ない話だが、アメリカむこうではそうじゃない。あくまでもデーティングの一環として、ともっともらしい理由をこじつけた。

「……途中で止められるほど、俺はできた男じゃないけど。いいのか?」
「私、二十九ですよ? 大丈夫です」

 笑いながら答えるけど、本当は少し怖い。彼を満足させられないのは、経験値の低い自分のほうだ。初めてを捧げたあの日から、誰にも体を許してこなかったのだから。

「……そうか。恵舞ももう、二十九になるんだな……。では、誘いに乗ろうか。体の相性を確かめるために」

 囁かれるように吐き出された言葉は耳を撫で、瞬く間に体の熱を上げていた。

 掴まって、と言われて素直に首に腕を回すと、そのまま抱え上げられる。恥ずかしくて肩に顔を埋めていると、彼は私を軽々と腕に抱えたままリビングを出た。
 寝室は玄関から一番近い部屋で、そこに入るとセンサーが付いているのか、ベッドのフットライトが部屋をほんのりと照らした。

「あの、シャワーとか……」

 まだその腕の中でおずおず尋ねる私を、依澄さんはベッドに下ろす。ギシリとベッドが揺れると、彼はそのまま私を組み敷いた。

「……悪い。今はそんな余裕はないんだ」

 こんな状況には慣れていて、自信だってあるはずだ。なのに彼は言葉通りに、どこか痛みに耐えているような、苦しげに表情を見せていた。
 どうしてだろう。彼は今、自分と同じように不安を感じているのかも知れない、なんて思う。

「……依澄さ……ん……」

 呼びかけながら伸ばした手が彼の肩に回ると、それを合図に性急に唇が重ねられた。
 
「ン、ぅんっ!」

 口の中で蠢く舌は、遠慮気味の自分の舌を捕える。絡まった場所から溶かされそうでしり込みする私の舌を、彼は離すことなく軽く吸った。
 頭が痺れて何も考えられない。息さえする暇もなく、唇がほんの少し離れた瞬間に荒い息を繰り返す。

「はぁっ……。ぅんんっっ」

 部屋に響く熱を帯びた呼吸は、どちらのものかわからない。二人ともただ、本能に逆らうことなくお互いを求めていた。
 肌に触れていたニットの感触とは違う、しっとりとした別の感触がお腹を直に滑る。そのまま体の線に沿って動く指は背中に回り、ブラジャーのホックをあっさり外す。そのまま中に滑り込んできた大きな手は、膨らみを包み込み、ゆっくりと揉みしだく。

「あっ、んんっっ!」
「……ここ、いい?」

 与えられた刺激に身を捩ると、依澄さんは耳に口付けしながら小さく笑い声を漏らした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~

吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。 結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。 何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

診察室の午後<菜の花の丘編>その1

スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。 そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。 「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。 時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。 多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。 この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。 ※医学描写はすべて架空です。

清貧秘書はガラスの靴をぶん投げる

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「お前、頬を叩いた詫びに婚約者になれ」 上司で社長の彪夏と秘書の清子はお似合いのふたりだと社内でも評判。 御曹司でイケメンの彪夏は女子の憧れの的。 清子はどこぞのご令嬢と噂され、男女問わず視線を集めていた。 ……しかし。 清子には誰もが知らない、秘密があったのです――。 それは。 大家族のド貧乏! 上は高校生、下は生まれたばかりの五人弟妹。 おっとりして頼りにならない義母。 そして父は常に行方不明。 そんな家族を支えるべく、奮闘している清子ですが。 とうとう、彪夏に貧乏がバレたまではよかったけれど。 子持ちと間違われてついひっぱたいてしまい、償いに婚約者のフリをする羽目に。 しかも貧乏バラすと言われたら断れない。 どうなる、清子!? 河守清子 かわもりさやこ 25歳 LCCチェリーエアライン 社長付秘書 清楚なお嬢様風な見た目 会社でもそんな感じで振る舞っている 努力家で頑張り屋 自分がしっかりしないといけないと常に気を張っている 甘えベタ × 御子神彪夏 みこがみひゅうが 33歳 LCCチェリーエアライン 社長 日本二大航空会社桜花航空社長の息子 軽くパーマをかけた掻き上げビジネスショート 黒メタルツーポイント眼鏡 細身のイケメン 物腰が柔らかく好青年 実際は俺様 気に入った人間はとにかくかまい倒す 清子はいつまで、貧乏を隠し通せるのか!? ※河守家※ 父 祥平 放浪の画家。ほぼ家にいない 母 真由 のんびり屋 長男 健太(高一・16歳)服作りが趣味 次男 巧(高一・15歳)弁護士になるのが目標 三男 真(小五・10歳)サッカー少年 四男 望(保育園年中・5歳)飛行機大好き 次女 美妃(保育園児・五ヶ月)未知数

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

椿かもめ
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

処理中です...