駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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3. 夏の兆しとめぐる想い

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 『恵舞に、大事な友人たちを紹介したい』

 そう切り出されたのは、入社して半年経ったころだった。二つ返事で参加した飲み会で会ったのが、三人の友人たち。そのうち二人は交際中で、残った爽くんと羽瑠ちゃんが付き合っているのかと思ったが違っていた。

『友だちだよ。日本語の、そのままの意味で』

 当たり前のように言われて、逆に戸惑ったのを覚えている。
 美男美女でお似合いだと思っていたけれど、二人は共通の趣味である、歴史小説、それもかなりマイナーなものを探し出しては貸し借りするだけの仲だというのだ。
 私も含めて爽くんと会った去年の年末も、二人で文庫本を五冊ずつ渡し合っていた。次に会うのは、読み終わるだろう春以降かな、なんて言いながら。
 もしかすると今日はその日で、ついでに兄である依澄さんを紹介しようと思ったのだろうか。でもどこか腑に落ちない。
 一人考えていたところで、依澄さんの声が聞こえた。

「どうして……君が、ここにいるんだ?」

 その顔はどう見ても歓迎しているわけではなさそうだ。眉を顰めて難しい表情をした彼は、いきなり部長に戻ったみたいにぶっきらぼうに言った。そしてこの口ぶり。二人は初対面ではないようで驚いた。

「先日はどーも。おにーさん」

 軽々しい口調の爽くんに、依澄さんはいっそう顔を険しくさせている。

「君にお兄さんと呼ばれる筋合いはない」
「じゃ、おじさんでよかった? それに、君じゃなくて、久我くが爽って名前があるんですけど」
「俺は竹篠依澄だ。羽瑠から、そんなことも聞かされていないようだな」

 火花がバチバチと散っているのが見えそうな緊迫感。ハラハラしていると、呆れたように止めに入ったのは羽瑠ちゃんだった。

「二人ともいい年して、こんなところで小競り合い起こすのやめてくれる? いいから、座って話しましょう?」

 笑みを浮かべた羽瑠ちゃんだが、どう見ても楽しそうではない。ギクリと肩を揺らした彼らは大人しく従っていた。
 
 落ち着いた雰囲気が漂うラウンジの、窓際の一番景色の良い席に案内される。オーダーしたドリンクが来るまで誰も一言も発せず、気まずい空気が流れていた。
 恭しくお辞儀をしてスタッフが去ると、口火を切ったのは、まだ不機嫌そうな依澄さんだった。

「羽瑠。身内だけに話したいことがある。悪いが、久我君には退席願いたいのだが」

 身内を強調し告げる依澄さんに、爽くんは予想外の反応を示した。

「あぁ。身内、ね。なら俺にも権利あるよな? 羽瑠」

 そう言って爽くんは、ニカっと笑った。
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