駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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3. 夏の兆しとめぐる想い

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 少しだけ残っていたカレーを食べ終えたころには、依澄さんの二杯目も無くなっていた。最後にピクルスを摘みながら、会話を再開した。

「ジェームズさんとは今でも?」
「ああ。連絡取ってるよ。時々町のことを知らせてくれる」
「懐かしいな。また食べに行きたいです」
「きっと喜ぶよ。町にも、恵舞のことを覚えてる人はいるはずだ。いいところだからな。あの町に生まれたかったよ」

 彼はしみじみとした表情で、目を細めた。
 ハワードでの話は聞いた。なんの不自由もなさそうな財閥に生まれた彼に、きっと自由などなかったのだろう。自分が見ていたルークは、唯一息抜きができていた姿なのかも知れない。

「本当に。思い出はたくさんあります。いつか……依澄さんと、行けたらいいな」
「そうだな。そうしよう。きっとみんな驚くだろうな。特に、ダニーなんか」
「ダニーって、車屋さんの家の? 元気ですか?」

 懐かしむ私に、彼は話を続けた。
 今乗っている車は、家業を継いだダニーから買ったこと。そのダニーはいまでは三児の父で、奥さんは町一番の器量良しと謳われたアメリアだということ。
 ダニーはどちらかというとヤンチャなタイプ。ルークと仲が良かったのは不思議だったが、面倒見はよく、自分も頼ったくらいだ。その彼が、控えめで優しいアメリアと結婚したことに驚いていた。
 他にも共通の知人たちのその後に、自分が参加していたレモネードスタンドが、今でも続いているということを聞いた。

「みんな元気そうで安心しました」
「そうだな。俺も話しに聞くだけで、しばらく会ってない。恵舞と訪れるその日を楽しみにしてる」

 思いを馳せるように、目を細めて自分を見つめる依澄さんに、ゆっくりと頷いて見せた。

 片付けは一緒に、と伝えたが、そんなに量はないからゆっくりしてと断られ、ふと思いつく。

「依澄さん。例の植木って、庭にあるんですか? 見てきてもいいですか?」

 キッチンに顔を覗かせて、シンクに向かっていた依澄さんに呼びかける。

「ああ。ウッドデッキの端に一つだけあるやつ。暗いから気をつけて」

 斜めにした顔を向けた彼に言われて「わかりました」と返事をする。
 リビングを通り抜けて、掃き出し窓まで来るとそれを開く。デッキへ出て、どこにあるのだろうと左右を見渡すと、右側の一番奥の暗がりに鉢らしきものを見つけた。
 それに近寄りその前にしゃがむ。背丈は七十センチほどだろうか。緑色の大きな葉が青々と茂っている。そしてそこに咲く、白い花を見て目を見張った。
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