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3. 夏の兆しとめぐる想い
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自分とは違った熱を放つ唇が、喰むように唇に合わさる。それが深さをまし、唇を潤ませたころに、隙間を割るように彼の舌が潜り込んできた。
「んっ、ぅうんっ……」
舌全体を撫で上げられ、堪えきれず依澄さんにしがみつく。背中に電流が走るようにゾクゾクするのに、それは嫌な感覚ではない。
彼が与えてくれる行為に同じように返すと、より強い愛撫が授けられた。
「はぁっ、ん。っや、あっ!」
唇から漏れる、水音を含んだ吐息と、どちらのものかわからない熱い息遣いは、春の夜空に吸い込まれて行く。ここが庭先なのも忘れ、ひとしきりお互いを求め合った。
唇を離し、はあっと深く息を吐き出すと、彼は熱を帯びた瞳を向けた。
「これ……。ずっと付けてくれてるんだな」
ツウッと指が首筋を這う。その指はチェーンをなぞり、最後にペンダントトップを持ち上げた。
「……依澄さんと……いつも一緒にいるような気持ちになるから……」
秘めていた本心を明かし、気恥ずかしさから顔を逸らす。彼から漏れた、嬉しそうな小さな笑い声が耳に届くと、首筋に唇が押し当てられた。
「嬉しい。すぐに渡せるなんて、思ってなかったんだ」
「これも、レモンの花ですよね。同じ店で買ったんですか?」
珍しいこのモチーフを使ったアクセサリーが、至るところで売られているとは思えない。何の気なしに尋ねると、依澄さんはまた、フッと息を漏らした。
「いや、別の店。これは……、魔女に押し売りにあった」
「……魔女?」
唐突すぎて、ポカンと口を開けて依澄さんを見上げる。その彼は、楽しげに口角を上げていた。
「ゆっくり話すよ。そうだな、風呂に浸かりながらでも。体が冷えてきただろ?」
まもなく五月とはいえ、日が落ちるとさすがに肌寒い。確かに夜風に晒された部分は冷たくなっている。が、この内容は、自分の思い違いではないだろう。
「えっと、それは……」
「もちろん、一緒に入りたいんだが」
期待に満ちた満面の笑みを返され、ウッと言葉が詰まる。
「だめか? しばらく恵舞に会えなくなるし、今のうちに堪能したい」
少しばかりしゅんとした表情で強請られ、それを断る術など持たない。
「わ……かりまし、た……。一緒に、入るだけ、なら……」
恋愛偏差値が低すぎる自分には、いきなりの高いハードルだ。でも、頑なに拒むのはあまりにも可愛げがない。
「そうだな。とりあえず善処する。じゃあ、首に腕を回して?」
「こ、こう、ですか?」
言われるがまま従うと、彼に抱え上げられ、囁かれる。
「バスルームに、直行しようか」
「んっ、ぅうんっ……」
舌全体を撫で上げられ、堪えきれず依澄さんにしがみつく。背中に電流が走るようにゾクゾクするのに、それは嫌な感覚ではない。
彼が与えてくれる行為に同じように返すと、より強い愛撫が授けられた。
「はぁっ、ん。っや、あっ!」
唇から漏れる、水音を含んだ吐息と、どちらのものかわからない熱い息遣いは、春の夜空に吸い込まれて行く。ここが庭先なのも忘れ、ひとしきりお互いを求め合った。
唇を離し、はあっと深く息を吐き出すと、彼は熱を帯びた瞳を向けた。
「これ……。ずっと付けてくれてるんだな」
ツウッと指が首筋を這う。その指はチェーンをなぞり、最後にペンダントトップを持ち上げた。
「……依澄さんと……いつも一緒にいるような気持ちになるから……」
秘めていた本心を明かし、気恥ずかしさから顔を逸らす。彼から漏れた、嬉しそうな小さな笑い声が耳に届くと、首筋に唇が押し当てられた。
「嬉しい。すぐに渡せるなんて、思ってなかったんだ」
「これも、レモンの花ですよね。同じ店で買ったんですか?」
珍しいこのモチーフを使ったアクセサリーが、至るところで売られているとは思えない。何の気なしに尋ねると、依澄さんはまた、フッと息を漏らした。
「いや、別の店。これは……、魔女に押し売りにあった」
「……魔女?」
唐突すぎて、ポカンと口を開けて依澄さんを見上げる。その彼は、楽しげに口角を上げていた。
「ゆっくり話すよ。そうだな、風呂に浸かりながらでも。体が冷えてきただろ?」
まもなく五月とはいえ、日が落ちるとさすがに肌寒い。確かに夜風に晒された部分は冷たくなっている。が、この内容は、自分の思い違いではないだろう。
「えっと、それは……」
「もちろん、一緒に入りたいんだが」
期待に満ちた満面の笑みを返され、ウッと言葉が詰まる。
「だめか? しばらく恵舞に会えなくなるし、今のうちに堪能したい」
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「わ……かりまし、た……。一緒に、入るだけ、なら……」
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「そうだな。とりあえず善処する。じゃあ、首に腕を回して?」
「こ、こう、ですか?」
言われるがまま従うと、彼に抱え上げられ、囁かれる。
「バスルームに、直行しようか」
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