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4.五月闇に、忍び寄る
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部長に案内され、別室の来賓用応接室に向かう。普段の打ち合わせに使用するような部屋ではなく、入るのは初めてだ。
「I am sorry to have kept you waiting.」
その扉を開け中に入ると、真っ先に部長は、"お待たせして、申し訳ありません"と英語で話し出す。
「I don’t mind.」
気にしてないよ、と答える人を見て、驚くしかない。
黒い革張りのソファに優雅に座ったまま、こちらを悠然と見ていたのは、リアムだったからだ。
(相手が相手って……いったい……)
昔馴染みではあるが、実のところ私は、リアムのフルネームを知らない。
自分が行っていたサマーキャンプの方針で、参加する子どもたちは名前や愛称のみで呼び合い、フルネームは教えないようになっていたからだ。
「では、雪代さん。あとはよろしく頼むよ。くれぐれも粗相のないように」
小声で耳打ちすると、部長は部屋を出て行く。残されたのは、呆気に取られた自分と、笑顔を浮かべているリアム、そしてその向こうに控えるように佇む男性だけだった。
「ごめんね、エマ。急なお願いで」
リアムはゆったりとした動作で立ち上がると、私に歩みを寄せて右手を差し出した。
「改めて。ウィリアム・ハワードです。よろしく。これからも気軽にリアムって呼んでね」
ウィンクするリアムと、そっと握手を交わす。彼がまさかハワードの一員だなんて、考えたこともなかった。ルークと出会うより前から、ハワードの人間と縁があっただなんて。
緊張で震えそうな手を離すと、声を絞り出した。
「雪代……恵舞です」
ガチガチになっている私を気にする様子もなく、リアムは後ろに目配せする。
「僕の秘書を紹介するよ」
リアムの合図でそばに来た男性は、リアムより背が高く、おそらく依澄さんと変わらない身長。髪は黒に近いダークブラウンで、シルバーの細いフレームの眼鏡を掛けているからか、冷たい印象が強い。何よりも、その人が一ミリも笑っていないのだから余計に。
「ジェイク・スミスです。初めまして。Ms.ユキシロ」
軽く交わした握手の手さえヒヤリと冷たい。リアムとは対照的で、性格もそうなのだろうかと思ってしまう。
「ジェイクはお堅いなぁ。とりあえず、エマ。早速だけど、スケジュール確認をしたいんだ。いいかい?」
「構わないけれど、時間が長くなることを同僚に話しておきたいの。電話してきていいかな?」
「もちろん」
リアムに断りを入れ廊下に出ると、スマホを取り出し、急いでその人の名前をタップした。
「I am sorry to have kept you waiting.」
その扉を開け中に入ると、真っ先に部長は、"お待たせして、申し訳ありません"と英語で話し出す。
「I don’t mind.」
気にしてないよ、と答える人を見て、驚くしかない。
黒い革張りのソファに優雅に座ったまま、こちらを悠然と見ていたのは、リアムだったからだ。
(相手が相手って……いったい……)
昔馴染みではあるが、実のところ私は、リアムのフルネームを知らない。
自分が行っていたサマーキャンプの方針で、参加する子どもたちは名前や愛称のみで呼び合い、フルネームは教えないようになっていたからだ。
「では、雪代さん。あとはよろしく頼むよ。くれぐれも粗相のないように」
小声で耳打ちすると、部長は部屋を出て行く。残されたのは、呆気に取られた自分と、笑顔を浮かべているリアム、そしてその向こうに控えるように佇む男性だけだった。
「ごめんね、エマ。急なお願いで」
リアムはゆったりとした動作で立ち上がると、私に歩みを寄せて右手を差し出した。
「改めて。ウィリアム・ハワードです。よろしく。これからも気軽にリアムって呼んでね」
ウィンクするリアムと、そっと握手を交わす。彼がまさかハワードの一員だなんて、考えたこともなかった。ルークと出会うより前から、ハワードの人間と縁があっただなんて。
緊張で震えそうな手を離すと、声を絞り出した。
「雪代……恵舞です」
ガチガチになっている私を気にする様子もなく、リアムは後ろに目配せする。
「僕の秘書を紹介するよ」
リアムの合図でそばに来た男性は、リアムより背が高く、おそらく依澄さんと変わらない身長。髪は黒に近いダークブラウンで、シルバーの細いフレームの眼鏡を掛けているからか、冷たい印象が強い。何よりも、その人が一ミリも笑っていないのだから余計に。
「ジェイク・スミスです。初めまして。Ms.ユキシロ」
軽く交わした握手の手さえヒヤリと冷たい。リアムとは対照的で、性格もそうなのだろうかと思ってしまう。
「ジェイクはお堅いなぁ。とりあえず、エマ。早速だけど、スケジュール確認をしたいんだ。いいかい?」
「構わないけれど、時間が長くなることを同僚に話しておきたいの。電話してきていいかな?」
「もちろん」
リアムに断りを入れ廊下に出ると、スマホを取り出し、急いでその人の名前をタップした。
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