104 / 206
4.五月闇に、忍び寄る
14
しおりを挟む
曇り空の下を歩き、リアムたちの宿泊しているホテルに向かった。
このエリアでは、指折りの老舗ラグジュアリーホテル。ロビーラウンジには、優雅にティータイムを楽しむ客もいれば、私たちと同じようにビジネスだと思われる客もいた。
「やっぱり、スイーツは日本のものに限るね!」
ラウンジの目玉の一つらしき、季節限定、数量限定のケーキを頬張りながら、リアムはご満悦の様子だ。
その姿を横目に、私はジェイクと向かい合い、テーブルにタブレットを広げて打ち合わせを進めていた。
「では、このような予定で。アテンド予定者のプロフィールは、後ほどメールでお送りします」
チームで決めたスケジュールを伝えると、ジェイクは特に問題ないといった様子で小さく頷いた。だが不満が出たのは、その隣りからだ。
「え~! 全部エマが来てくれるんじゃないの?」
「ごめんなさい。急な話だったからスケジュールの都合があって。でも業界に精通してるし、私より有能な人だから。本当は北海道にも行ってもらいたかったんだけど、そこは予定が合わなくて」
いくら旧知の仲だとはいえ、ビジネスはビジネス。いくらなんでも、全てリアムの都合に合わせるわけにはいかない。
やんわりと理由を告げると、不服そうな表情をしながらも、「仕方ないか」とのんでくれたようだ。
けれど話しはそれで終わらなかった。
「じゃあ、エマ。ここからは、友人としてのお願いなんだけど……」
目尻を下げ、子犬のような可愛らしい表情でリアムは切り出す。
「明日、ディナーに付き合ってくれないかな。懐かしい話もしたいし。もちろん、ジェイクも一緒に」
そういう誘いはあるだろうと予想はできた。私だって、十五年会っていなかったとはいえ、リアムは大切な友人だ。話したいことはたくさんある。それに、二人きりではない。ジェイクと交友を深められるのは、これからのビジネスにプラスになるかも知れない。
考えこんだ私に、リアムはニコリと笑うと続ける。
「エマも、誰か連れてきてくれていいよ。例えば……夫、とか」
「夫? 私、結婚していないわよ」
結婚していてもおかしくない年齢ではあるが、指輪をしているわけでもない。どうして急に、と不思議に思いつつ返すと、リアムは逆にキョトンとしていた。
「じゃあ、ボーイフレンド? 紹介して欲しいな」
そう言い切られてハッとする。ここに来る前、無意識に自分がしていた行動を思い出して。
(見られた……って、こと?)
さっき髪を結び直してしまった。いつもと同じように、真後ろに一つに。
このエリアでは、指折りの老舗ラグジュアリーホテル。ロビーラウンジには、優雅にティータイムを楽しむ客もいれば、私たちと同じようにビジネスだと思われる客もいた。
「やっぱり、スイーツは日本のものに限るね!」
ラウンジの目玉の一つらしき、季節限定、数量限定のケーキを頬張りながら、リアムはご満悦の様子だ。
その姿を横目に、私はジェイクと向かい合い、テーブルにタブレットを広げて打ち合わせを進めていた。
「では、このような予定で。アテンド予定者のプロフィールは、後ほどメールでお送りします」
チームで決めたスケジュールを伝えると、ジェイクは特に問題ないといった様子で小さく頷いた。だが不満が出たのは、その隣りからだ。
「え~! 全部エマが来てくれるんじゃないの?」
「ごめんなさい。急な話だったからスケジュールの都合があって。でも業界に精通してるし、私より有能な人だから。本当は北海道にも行ってもらいたかったんだけど、そこは予定が合わなくて」
いくら旧知の仲だとはいえ、ビジネスはビジネス。いくらなんでも、全てリアムの都合に合わせるわけにはいかない。
やんわりと理由を告げると、不服そうな表情をしながらも、「仕方ないか」とのんでくれたようだ。
けれど話しはそれで終わらなかった。
「じゃあ、エマ。ここからは、友人としてのお願いなんだけど……」
目尻を下げ、子犬のような可愛らしい表情でリアムは切り出す。
「明日、ディナーに付き合ってくれないかな。懐かしい話もしたいし。もちろん、ジェイクも一緒に」
そういう誘いはあるだろうと予想はできた。私だって、十五年会っていなかったとはいえ、リアムは大切な友人だ。話したいことはたくさんある。それに、二人きりではない。ジェイクと交友を深められるのは、これからのビジネスにプラスになるかも知れない。
考えこんだ私に、リアムはニコリと笑うと続ける。
「エマも、誰か連れてきてくれていいよ。例えば……夫、とか」
「夫? 私、結婚していないわよ」
結婚していてもおかしくない年齢ではあるが、指輪をしているわけでもない。どうして急に、と不思議に思いつつ返すと、リアムは逆にキョトンとしていた。
「じゃあ、ボーイフレンド? 紹介して欲しいな」
そう言い切られてハッとする。ここに来る前、無意識に自分がしていた行動を思い出して。
(見られた……って、こと?)
さっき髪を結び直してしまった。いつもと同じように、真後ろに一つに。
17
あなたにおすすめの小説
甘い束縛
はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。
※小説家なろうサイト様にも載せています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」
母に紹介され、なにかの間違いだと思った。
だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。
それだけでもかなりな不安案件なのに。
私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。
「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」
なーんて義父になる人が言い出して。
結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。
前途多難な同居生活。
相変わらず専務はなに考えているかわからない。
……かと思えば。
「兄妹ならするだろ、これくらい」
当たり前のように落とされる、額へのキス。
いったい、どうなってんのー!?
三ツ森涼夏
24歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務
背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。
小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。
たまにその頑張りが空回りすることも?
恋愛、苦手というより、嫌い。
淋しい、をちゃんと言えずにきた人。
×
八雲仁
30歳
大手菓子メーカー『おろち製菓』専務
背が高く、眼鏡のイケメン。
ただし、いつも無表情。
集中すると周りが見えなくなる。
そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。
小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。
ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!?
*****
千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』
*****
表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
閉じたまぶたの裏側で
櫻井音衣
恋愛
河合 芙佳(かわい ふうか・28歳)は
元恋人で上司の
橋本 勲(はしもと いさお・31歳)と
不毛な関係を3年も続けている。
元はと言えば、
芙佳が出向している半年の間に
勲が専務の娘の七海(ななみ・27歳)と
結婚していたのが発端だった。
高校時代の同級生で仲の良い同期の
山岸 應汰(やまぎし おうた・28歳)が、
そんな芙佳の恋愛事情を知った途端に
男友達のふりはやめると詰め寄って…。
どんなに好きでも先のない不毛な関係と、
自分だけを愛してくれる男友達との
同じ未来を望める関係。
芙佳はどちらを選ぶのか?
“私にだって
幸せを求める権利くらいはあるはずだ”
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる