駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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4.五月闇に、忍び寄る

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 夜の懇親会は、グループ会社の社長や部長を交えたものだ。さすがにリアムが何者か伝わっているらしく、通常出てくることのない社長までいるのはさすがだ。
 上役には英会話が堪能な人も多く、そうそう自分が出る幕はなかったが、それでも急に話を振られることもある。美味しいはずの食事は、緊張感で楽しめないまま終わっていた。
 皆でレストランのある最上階から一階に降り、エントランスで迎えの車に乗る社長たちを見送る。これで今日の業務は終了。あとは自分の泊まる旅館に向かい、明日に備えるだけだ。

「雪代さんは、いつも黒岩くんが泊まってる旅館だったよね。送るよ」

 空港から送迎してくれていた視察先の事業部の課長は、黒岩さんと年齢が近く、仲が良いらしい。黒岩さんは事前に、"よろしく頼む"と連絡を入れてくれていた。

「ありがとうございます。助かります」

 このホテルから旅館までは徒歩二十分ほどだが、見知らぬ街を一人で歩くのは心細い。遠慮なく申し出を受けた。

「じゃあ、車を取りに行ってくるから、ここで待っていてくれるかい?」
「はい。お願いします」

 振り返るとリアムたちはまだそこにいて、二人で何か話しをしていた。様子を伺っているとジェイクは電話をし始め、リアムはこちらに気づき歩みを寄せていた。

「リアム。今日一日お疲れ様でした。私はこれで失礼するね」
「こちらこそ、お疲れ様。来週火曜日まで、頼むね」

 砕けた態度でそう言うと、リアムは笑顔を作る。そのあと、思い出したように続けた。

「月曜日の夜なんだけど、一緒に夕食はどうかな。ビジネス……なんだけど。これまでの視察の内容に齟齬がないか、確認しておきたいんだ」

 そう言われると、断る理由などない。必要なことだし、この先じっくりそれができる保証もない。

「ええ。わかったわ」
「ありがとう、エマ。場所はこのホテルになるけど、いい? もちろんジェイクも同席……というより、ジェイクの方からお願いされたんだ」

 リポートを作成するのは秘書の役目なのだろう。ジェイクはいつも、熱心にメモを取っていた。

「もちろんよ。じゃあ、また月曜に」
「うん。エマは週末、友人に会うんだったね。この近く?」
「ううん。札幌。リアムはどうするの?」
「僕は部屋に篭りきりかなぁ。アクティブじゃないの、知ってるでしょ?」

 そういえばサマースクールでも、リアムを外に連れ出すのは、私の役目だった。

「そうだったね」

 思い出し笑いをする私に、リアムもつられたように笑う。

「じゃあ、良い週末を」

 笑顔で手を振るリアムに見送られ、そこをあとにした。
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