駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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番外編 〜巡る季節〜

夏.4

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「え、だって例の噂って、ガセなんだろ?」
「例の噂って?」

 依澄さんの背中を押し、私たちの間に座らせた羽瑠ちゃんは、訝しげに眉を顰める。そういえば、四月そうそう噂になっていたことを、羽瑠ちゃんは知らない。そのうえ、別の人と電撃結婚したものだから、噂は立ち消えになっていたはずだ。

「いや……羽瑠が、竹篠部長と付き合ってるんじゃないかって……」

 口ごもりながら黒岩さんが言うと、羽瑠ちゃんは珍しく声を出して笑いだした。

「だぁれ? そんなこと言ったの。私たち、兄妹きょうだいよ。見ればわかるでしょ?」

 向かいには、驚きすぎて声を出せない三人が並んでいる。鳩が豆鉄砲を食ったとは、こんな顔を言うのだろうか。そうそう驚くことのない深瀬君でさえ、そんな表情を見せていた。

「さすがに、わからないと思うが?」

 依澄さんは妹の言葉にため息を吐く。どちらも近寄りがたいほど美しい顔という共通点はあるが、さほど似ていない。普通は想像もしないはずだ。
 そして依澄さんは前を向くと、真面目な表情で切り出した。

「改めて。羽瑠の兄の竹篠依澄です。異父兄にあたるため姓は違うんだ。こんな妹だが、これからもよろしく頼む」

 深々と頭を下げる依澄さんに、三人とも「はあ……」と気の抜けたような返事をしていた。
 とりあえず、話が終わるのを待っていてくれたスタッフに、それぞれドリンクを注文する。料理はコースだから気にしなくていいのは楽だ。
 スタッフが出ていくと、室内はしんと静まり返る。みんな、何をどう切り出そうかと様子を伺っているようだ。
 そして、やはり口火を切ったのは、この中で一番年上の黒岩さんだ。

「そういや、部長を呼びたいって言ったの、羽瑠じゃなくて、恵舞だよな。なんでだ?」
「それは……えっと……」

 ただでさえ驚かせたのに、畳み掛けるように驚かせていいものか悩む。まだドリンクだってきてないのに。戸惑いながら言い淀むと、助け船を出すように依澄さんが喋り始めた。

「黒岩さんが心配するようなことは、何もありませんよ。むしろ、もう少し人員を増やしてはどうかと、話が出ているくらいですから」

 柔らかな表情でそう話す依澄さんに、紗里ちゃんどころか、黒岩さんまでぽおっとしているように見える。それを見ている羽瑠ちゃんが、笑いを堪えているのも目に入った。
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