駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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番外編 〜巡る季節〜

秋.4

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 そのときのことを思い起こしていると「そうだ」と依澄さんが小さく呟く。そしてスーツの内ポケットからカードを取り出し、私に差し出した。

「これ、恵舞にって」

 そのカードに並ぶ英文に目を落とすと、自然に笑みが零れる。

『おめでとう。エマのことを思い出しながら作ったよ。気に入ってくれたら嬉しい。レイチェル』

 顔を上げて、優しく微笑む依澄さんに身を預ける。じんわりと彼の温もりが伝わり、

「また、会えるかな」
「会えるさ。彼女たちが招き入れてくれるなら」
「……そうだね」

 その日に思いを馳せながら、願うように、輝くリングを見つめた。

 束の間の静けさに身を置いていると、依澄さんの口から漏れる小さな笑い声がそこに響いた。

「そんなに見つめてると、ダイヤモンドでさえ穴が開きそうだ」
「だって。凄く綺麗なんだもの。それに、フィアンセなんだなぁって、今さら実感湧いて」

 胸に預けていた顔を上げると、彼の唇が額に触れる。それが離れると、顔を覗き込まれた。

「なら、もうしばらくフィアンセでいる? このままじゃ、たった一日だけのエンゲージリングになってしまうしな」
「依澄さん……。それ、本気?」

 ジョークだと思いつつも、彼の真面目な表情に心臓がギュッと縮む。けれどすぐに彼は表情を緩ませ、軽く触れるだけのキスをした。

「そんなわけないだろ。早く恵舞を妻にしたいよ。今日はフィアンセとして最後の夜だ。これから……堪能してもいい?」

 顔のあちこちに唇を押し付けたかと思うと、最後は耳元で囁かれる。もちろん分かっていての行動だ。そうやって一瞬にして、火を付けられてしまうのがちょっと悔しくもある。

「いい……けど、んっ……。せめて、シャワー、浴びよ?」

 耳たぶを喰むように動く唇から、逃れるように身を捩る。なのに迫る熱い唇は逃してくれない。

「片時も離れたくない」
「ちょ、っと、子どもみたいな……。んっっ」

 唇が重なり、簡単に舌が口の中に割って入る。それだけでゾクゾクして、必死に彼の腕にしがみついた。
 まるで味わい尽くすみたいに、舌を絡められ吸われる。その度に力が抜けていきそうになった。

「ぅっン、ぁ……んんっ……」

 言葉にならない吐息が漏れ、息も絶え絶えになったころ、ようやく名残惜しそうに唇が離れる。
 艶かしく揺れている瞳は、私が欲しいと無言で訴えかけていた。

「……掴まって」

 小さく頷き彼の肩に腕を回すと、そのまま抱き上げられる。嬉しそうに笑みを見せる彼は、そのまま私をバスルームへ連れて行った。
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