駆け引きから始まる、溺れるほどの甘い愛

玖羽 望月

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番外編 〜巡る季節〜

秋.15

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 家の中はどこもゆったりした造りになっていて、廊下の幅も広い。その廊下はスッキリしていて何も置かれていないのは、お祖母さまが普段、車椅子を使うからだ。
 リビングへ続くというドアを過ぎると、その少し先にすりガラスでできたドアがあった。そこに入って驚く。まるで植物園の温室のようだ。かなり広くて先まで見えないほど。
 天井までガラスでできていて、陽の光が燦々と降り注いでいる。その柔らかな光を浴びた植物は天井に届きそうなものもある。足元は色とりどりの花が誇らしげに咲いている。蝶でも飛んでいそうだがさすがにいない。代わりに鳥のさえずりが聞こえてきた。

「まさか……ここで鳥を飼ってる……とか?」
「あぁ。放し飼いだ。あと、リスもいる」
「リス? 冗談……だよね?」

 顔を引き攣らせて聞き返すが、依澄さんは笑うばかりだ。

「そう言うと思った。けど、ほら」

 依澄さんが指さしたのは、ひときわ大きな木だ。家の中にあるとは思えない大きさのその木の枝に、確かにリスがチョロチョロ走り回っていた。

「信じられない……。ここは、不思議の国?」 

 ポカンとしたままの私に、依澄さんは手を差し出す。

「じゃあ、アリス。道案内するよ。迷子にならないように」

 引き合いに出した物語をなぞらえるようにそう言われ、本当に迷子になりそうだと思いながらその手を取った。
 奥に進むと、庭に面した場所に丸いテーブルセットがあり、こちらに背を向けた二人が和やかに会話していた。

「お祖母さま、帰りました」

 背後から依澄さんが日本語で声を掛ける。ゆっくり振り返ったのは、車椅子に座るお祖母さまと、もう一人は私の祖父だった。

「おかえりなさい。依澄さん」
「おぉ。ようやく主役たちのお出ましじゃな」

 祖父は両親と、今日の午前中にここに着いている。旧知の仲である二人には思い出話もあるのだろう。ティータイムを楽しんでいたようだ。
 
「今日はずいぶん調子も良いようで、なによりです」
「えぇ、おかげさまで」

 お祖母さまは電話越しの優しい声はそのまま、聞いていたイメージ通りに穏やかに微笑んでいる。そして顔を上げると、私に笑いかけた。

「ようこそ。いらっしゃい、恵舞さん」
「お邪魔しております。お祖母さま」
「もっと近くで、お顔を見せていただけないかしら」

 依澄さんは私の背中を押すように頷く。おずおずと近づきその場にしゃがむと顔を上げた。

「まぁ……。なんて愛らしいのかしら」

 慈愛に満ちた瞳を細め、お祖母さまは私の頭をゆっくりと撫でていた。
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