ゆびわさがし

杉本けんいちろう

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ー第二章ー

そうちゃん

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『僕ね、えみちゃんの事が好きなんだ。』

『ホントに!?私も、そうちゃんの事が大好きだよ。』

『えみちゃん、僕たち結婚しよう。』

『うん!いいよ!結婚しよう!』

『よかった!これで僕たち、ずーっと一緒だね。』

『うん!でもね、そうちゃん。結婚する二人にはね、指輪が必要なんだよ。』

『指輪?』

『そう!大きなダイヤモンドが付いた結婚指輪!』

『結婚指輪かぁ。分かった!じゃあ僕、えみちゃんのために今から結婚指輪を見つけてくるね!』

『ホント!?あ、じゃあ私も…。ううん。待ってるね!』

そうちゃんは、遊びに来ていた、えみちゃん家を飛び出して、指輪を探しに行きました。

『でも、指輪って、どこにあるんだろう…。指輪を買えるお金なんて持って無いしな…。』

勢い良く飛び出して行ったのは良いものの、そうちゃんは、どこに指輪があるのか分かりませんでした。

『どこかに落ちてるのかなぁ…。』

『あれ?そうちゃん?こんな所で何してるの?』

『ひろくん!指輪を探してるんだ。』

『指輪?』

『そう。僕とえみちゃんの結婚指輪。』

『えみちゃん!?結婚指輪!?ホント!?』

『うん。ひろくん、指輪ってどこにあるか知らない?』

『うーん…。僕もよく分からないけど、とりあえず、こんな道ばたには落ちてないと思うよ。』

『そうだよね…。』

『僕も一緒に探そうか?』

『うーうん。大丈夫!ありがとう!』

そうちゃんは、川のほとりや公園の隅々に至るまで探してみました。

『うーん。どこにもないなぁ…。あ!もしかしてウチに行けばあるかも!』

そうちゃんは、急いで家へと帰りました。家に着くなり、洋服ダンスから食器棚まで色んな所を隈なく探しました。

『あれ?この封筒なんだろ?』

そうちゃんは、お母さんのクローゼットの中から不自然な茶色の封筒を見つけました。

『うわっ!一万円札が、いっぱい!』

そうちゃんが見つけたのは、お母さんが密かに貯めていたヘソクリでした。

『やった!これで指輪が買える!』

そうちゃんは、封筒をそのまま持ち出して指輪を買いに行きました。

そうちゃんがやって来たのは、駅前の大きな百貨店の中にある宝石屋さんです。

『うわぁ!いっぱいある!どれが良いかなぁ…。』

そうちゃんは、ショーケースの中にある、たくさんの指輪に見惚れていました。すると、そこへ店員の、お姉さんが近付い来ました。

『ねぇ、ぼく?一人?お母さんは?』

『え?僕、一人だよ?指輪を買いに来たの。』

『そうなんだ。でも、ここにある指輪は、どれも高くて、ぼくが買える指輪は無いと思うよ?』

『大丈夫だよ。ほら!お金ならあるよ!』

『え?』

そうちゃんは、持って来た封筒ごと、お姉さんに渡しました。

『ぼく?この、お金どうしたのかな?』

『え?ウチから持って来たんだよ?』

『そう…。これは、ぼくのお金なのかな?』

『え…?そうだよ。僕のお金だよ。だから、そのお金で買える指輪が欲しいんだ。』

『そうなの…。でも誰の指輪かな?ぼくの指輪じゃないよね?』

『えみちゃんのだよ。僕たち結婚するんだ。だから結婚指輪だよ。』

『結婚指輪…?そっか。分かった。じゃあね、それで買える指輪は、この辺のかな。』

『えー、ダイヤモンドが付いてるのはないの?』

『そうね。このお金じゃ、ダイヤモンドは、ちょっと無理かな。』

『そっか…。あ!じゃあ、コレ!コレが良いや!上のピンクのやつが凄いキレイ!』

『コレかぁ。キレイなの選んだね。えみちゃんも、きっと喜ぶと思うよ。』

『ホント?よかったぁ!』

『…じゃあ、落とさないように気をつけてね。』

『うん!お姉ちゃん、ありがとう!』

そうちゃんは、えみちゃんのために、なんとか指輪を手に入れることが出来ました。そうちゃんは、その足で、そのまま、えみちゃんの所へと急いで戻りました。

『えみちゃん!』

『そうちゃん!見つかったの!?』

『うん!あったよ!ほら!結婚指輪!』

『わー!ホントだ!凄いキレイ!…でも、コレ、ダイヤモンドじゃないよね?でも、いいや。ありがとう!私のために探してくれたんだもんね!そうちゃん!嵌めて!嵌めて!』

『うん!』

『早くぅ!』

『これ、どこに嵌めればいいの?』

『薬指!結婚指輪はね、左手の薬指にするんだよ。』

『そうなんだ。薬指ね…。はい!』

『ねぇ、そうちゃん。これ全然サイズ合ってないよ。すごい大きいんだけど…。これ、どこから持ってきたの?』

『どこって…。宝石屋さんで僕が自分で選んで買って来たんだよ。』

『そうなの?ちゃんと買って来てくれたんだ。じゃあ、きっとこれから、この指輪のサイズに合うくらい私も大きくなると思うから、その時に嵌められるように貰っておくね。ありがとう!そうちゃん!大好き!』

『うん!僕も大好き!』

そうちゃんは、指輪を渡せた喜びと、えみちゃんが喜んでくれた嬉しさで意気揚々と、ウチに帰って行きました。

『ただいまー!』

『おかえり、そうちゃん。』

ウチに帰ると、いつもと様子の違うお母さんが待っていました。

『そうちゃん、ちょっとお話しがあるの。』

『え?なーに?』

お母さんは、明らかに怒っていました。そうです。そうちゃんが、お母さんのヘソクリを持ち出した事がバレていました。そして、そうちゃんが指輪を買った際に名前と連絡先を聞いていた宝石屋さんのお姉さんから連絡が来ていたのです。

『…そうちゃん、何でこんな事したの?』

『だって、僕、えみちゃんと結婚するんだもん。そしたら、えみちゃんが結婚指輪が欲しいっ言うから。僕、指輪なんて、どこにあるか分からないから、そこら中を探してたら、クローゼットの中に封筒があったから。そのお金で新しいの買おうと思って…。』

『そうちゃん、結婚指輪っいうのはね、誰かのお金で買うものじゃないの。自分で働いて稼いだお金で買うものなの。』

『そうなの?』

『そうなの。そんなお金で買った指輪なんて、えみちゃんも嬉しくないはずだよ。』

『でも、えみちゃん喜んでたよ。でも、サイズが合わないから大きくなったら嵌めるって言ってたけど。』

『そう…。じゃあ、指輪は、えみちゃんが持ってるの?』

『うん。だって…。』

(ピンポーン。)

『あれ?誰かしら?はーい!』

『すいません。突然、お邪魔しまして。』

『あら!えみちゃんママ!えみちゃんも!』

突然の来客者は、お母さんも見覚えあるのある二人でした。そう、えみちゃんママが、えみちゃんを連れて指輪を返しに来たのです。実は、えみちゃんママは、先程のそうちゃんとえみちゃんのやり取りを見ていました。当然、高価な指輪を受け取ったえみちゃんを諭し、二人で一緒に返しに来たのです。

『ごめんなさい…。』

『いいのよ!謝らなくても!えみちゃんだって女の子だもんね。指輪欲しいもんね。』

えみちゃんは、泣いていました。泣きながら、お母さんに謝りました。そして、指輪を返して帰って行きました。

『お母さん、ごめんなさい!』

そうちゃんも、お母さんに謝りました。泣きながら、謝りました。

『ほらね?分かったでしょ?人様のお金で買った物なんて何も良い事なんてないの。結婚指輪はね、そうちゃんが、いつか大きくなった時に自分の稼いだお金で、もう一度買いなさい。』

『うん。僕、ちゃんと働くね。大きくなったら、ちゃんと働いたお金で、もう一度、えみちゃんに結婚指輪をあげるね。』

『うん。その時は、きっと、えみちゃんも今より、もっと喜んで貰ってくれるよ…。』
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