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ー第十二章ー
沢木零児 Ⅱ
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『お父さん!僕は、お父さんを許さないよ!』
『ちょ、ちょっと凛太郎!』
『何で!?何でそんな事したの!?僕は、もう信じられないよ!』
『凛ちゃん…。』
凛太郎に憤慨されたのは、その日も何事も無く仕事も終え、夕飯は何だろうなんて幸せじみた妄想しながら意気揚々と帰宅した直後の事、それは、余りにも唐突だった…。
もう永遠に、このままの日々が続くんだと思い込んで過ごしていた矢先だった。恐れていた事態。何より、恐れていた事態…。
『な、何で!?何で凛太郎が、それを!?』
焦りと驚きで、直ぐに取り乱した俺を歩実は、冷静に説いた。
『零児さん、突然ごめんなさい。とりあえず、こっちへ来て座って下さい。』
俺は、促されるまま、歩実と凛太郎とみなみちゃんが待ち構えるリビングのソファーに腰を下ろした。
『ごめんね、零児さん。その時が来てしまったの…。』
『み、みなみちゃん…。ま、まさか!?』
『零児さん、みなみから全てを聞きました。』
『あ、歩実…。』
『零児さん、私は、怒っていません。むしろ、零児さんが凛太郎の本当のお父さんであると分かって嬉しく思っています。』
『歩実…。』
『でも、だったら何で?みなみにも言ったんですけど、何でもっと早く言ってくれなかったの?それが、私は、何より悲しいです。』
『それは…。』
『お父さん!先ず答えてよ!お父さんは、何でお母さんを無理矢理襲ったの!?』
『え!?り、凛太郎、そんな事まで!?』
『お父さん!僕らは、もう全部知ってるんだよ!だから、お父さんの口から全部話して!』
『零児さん、急な展開で申し訳ないけど、もう腹を括った方がいいよ。』
『みなみちゃん…。わ、分かったよ。覚悟を決めよう。』
俺は、深い深呼吸を一回した後、ゆっくりと口を開いた。
『いいか?凛太郎。お父さんは、六年前の夏、全国的なニュースにもなって世間を震撼させた連続強姦事件の犯人だ。』
『だから、何で!?何で、そんな事したの!?嫌がる人を無理矢理なんて…!』
『それはな、誰も理解出来ないよ。そんな事をする奴の心理なんか誰も理解出来ないだろ?ただ一つ言えるのは、俺は、正気ではなかったって事だけだ。もう夢中だったんだ。強姦魔としての自分に酔いしれてたんだ。』
『そんなのって…!』
『ねぇ、零児さん。その時の事も全て話してくれませんか?連続って事は、被害者は、私だけじゃないって事でしょう?』
『分かった…。』
俺は、おもむろに、やめていた筈のタバコに火を付けた。さすがに、平常心では、いられなかった。
『いいか…?一人目は、女子大生。二人目は、三十代の主婦。三人目が、歩実。以上だ。』
『違うでしょ?もう一人いるでしょ?』
『え!?あ、ああ…。未遂に終わったけど、四人目は、み、みなみちゃん…。』
『零児さん、私は、その話を、みなみ本人から聞いて、何よりも驚いた。何でよ!?何で、みなみまで!?みなみもみなみよ!幾ら未遂に終わったからって何で、ずっと黙ってたのよ!?私は、それが一番、辛いわ!』
『歩実、ごめんね。それは、私が零児さんにお願いしたの。こんな事、知ったところで誰の得にもならないからって。私は、未遂で終わったから、そこまでの被害は無かったし、そのおかげで私は、零児さんが犯人である事が分かったんだから。』
『でも…!』
『いいの!歩実!私の事は、もう、いいの!それよりも、大事なのは、今の凛ちゃんの心よ。』
『凛太郎…。』
『お母さん、僕、一生懸命に理解しようとしてるけど、やっぱり無理だよ。お父さんの気持ちなんか理解出来ないよ。』
『凛ちゃん。でもね、その当時の零児さんの気持ちと今の零児さんの気持ちは、全くの別物なの。その当時の零児さんの気持ちなんて、私だって、歩実だって理解出来ないわ。』
『そうなの?』
『今の零児さんは、凛ちゃんも知ってる優しいお父さんそのものでしかないわ。だから、もう責めないであげて。』
『みなみ…。』
『凛太郎、ごめんな。謝っても謝り切れない。俺がした事は、凶悪な大犯罪だ。歩実やみなみちゃんはもちろん、沢山の人を傷付けた。そして、年月を経て全てを秘密のまま、父親として、また目の前に現れた。卑怯だよな。凛太郎からしたら俺のやってる事は卑怯者の何者でしかないよな。これが実の父親なんて悔して仕方ないよな。ごめんな、凛太郎…。』
『お父さん…。正直、僕は、何て言っていいか分からないよ。お父さんが、僕の本当のお父さんであった事は、何も知らないままだったら嬉しいだけだけど、お父さんは、沢山の人を傷付けた大犯罪を犯した犯人なんでしょ?僕は、その血が通う息子なんでしょ?』
『凛太郎!』
『僕は…。僕には、お父さんと同じ血が流れてるんでしょ?だから、僕も、いずれ同じこ…!』
『凛太郎!そんな訳ないだろう!凛太郎は、俺とは違う!確かに、凛太郎には、俺の血が流れてる。でも、凛太郎には、歩実の血も流れてるんだ。だから、大丈夫。歩実の血が流れてる奴に、そんな、どうしようもない犯罪なんか起こさない!いいか!?何度でも言うぞ!?凛太郎は、俺とは違う!だから、何も心配しなくていいんだ!』
『そうよ!凛ちゃん!凛ちゃんは、大丈夫よ!』
『ウゥッ…。ウゥッ…。ウワーン…!』
『凛太郎、おいで。』
『ウゥッ…。ウゥッ…。』
号泣する凛太郎を優しく包み込む歩実を見て、改めて母親の偉大さを感じた。そして、俺のした事の重大性を改めて痛感した。
凛太郎は、心労が激しかったんだろう。そのまま眠ってしまった。その寝顔を見て俺は、一つの決心を下した。
『歩実。みなみちゃん。』
『零児さん、どうしたの?そんな怖い顔して。』
『俺、自首するよ。』
『ええ!?』
その次の日、俺は、先ず会社に行き、同僚の大きなどよめきの中、退職願いを出し、その帰り、警察に自首した。
『歩実、ごめんな…。被害者は、歩実だけじゃないんだ。俺は、罪を償うよ。』
『零児さん、私、待ってるから!凛太郎と二人で、いつまでも待ってるから!』
涙を滲ませながら振り絞った歩実の声が、いつまでも胸に響く中、俺の両手に、手錠がかけられた…。
『ちょ、ちょっと凛太郎!』
『何で!?何でそんな事したの!?僕は、もう信じられないよ!』
『凛ちゃん…。』
凛太郎に憤慨されたのは、その日も何事も無く仕事も終え、夕飯は何だろうなんて幸せじみた妄想しながら意気揚々と帰宅した直後の事、それは、余りにも唐突だった…。
もう永遠に、このままの日々が続くんだと思い込んで過ごしていた矢先だった。恐れていた事態。何より、恐れていた事態…。
『な、何で!?何で凛太郎が、それを!?』
焦りと驚きで、直ぐに取り乱した俺を歩実は、冷静に説いた。
『零児さん、突然ごめんなさい。とりあえず、こっちへ来て座って下さい。』
俺は、促されるまま、歩実と凛太郎とみなみちゃんが待ち構えるリビングのソファーに腰を下ろした。
『ごめんね、零児さん。その時が来てしまったの…。』
『み、みなみちゃん…。ま、まさか!?』
『零児さん、みなみから全てを聞きました。』
『あ、歩実…。』
『零児さん、私は、怒っていません。むしろ、零児さんが凛太郎の本当のお父さんであると分かって嬉しく思っています。』
『歩実…。』
『でも、だったら何で?みなみにも言ったんですけど、何でもっと早く言ってくれなかったの?それが、私は、何より悲しいです。』
『それは…。』
『お父さん!先ず答えてよ!お父さんは、何でお母さんを無理矢理襲ったの!?』
『え!?り、凛太郎、そんな事まで!?』
『お父さん!僕らは、もう全部知ってるんだよ!だから、お父さんの口から全部話して!』
『零児さん、急な展開で申し訳ないけど、もう腹を括った方がいいよ。』
『みなみちゃん…。わ、分かったよ。覚悟を決めよう。』
俺は、深い深呼吸を一回した後、ゆっくりと口を開いた。
『いいか?凛太郎。お父さんは、六年前の夏、全国的なニュースにもなって世間を震撼させた連続強姦事件の犯人だ。』
『だから、何で!?何で、そんな事したの!?嫌がる人を無理矢理なんて…!』
『それはな、誰も理解出来ないよ。そんな事をする奴の心理なんか誰も理解出来ないだろ?ただ一つ言えるのは、俺は、正気ではなかったって事だけだ。もう夢中だったんだ。強姦魔としての自分に酔いしれてたんだ。』
『そんなのって…!』
『ねぇ、零児さん。その時の事も全て話してくれませんか?連続って事は、被害者は、私だけじゃないって事でしょう?』
『分かった…。』
俺は、おもむろに、やめていた筈のタバコに火を付けた。さすがに、平常心では、いられなかった。
『いいか…?一人目は、女子大生。二人目は、三十代の主婦。三人目が、歩実。以上だ。』
『違うでしょ?もう一人いるでしょ?』
『え!?あ、ああ…。未遂に終わったけど、四人目は、み、みなみちゃん…。』
『零児さん、私は、その話を、みなみ本人から聞いて、何よりも驚いた。何でよ!?何で、みなみまで!?みなみもみなみよ!幾ら未遂に終わったからって何で、ずっと黙ってたのよ!?私は、それが一番、辛いわ!』
『歩実、ごめんね。それは、私が零児さんにお願いしたの。こんな事、知ったところで誰の得にもならないからって。私は、未遂で終わったから、そこまでの被害は無かったし、そのおかげで私は、零児さんが犯人である事が分かったんだから。』
『でも…!』
『いいの!歩実!私の事は、もう、いいの!それよりも、大事なのは、今の凛ちゃんの心よ。』
『凛太郎…。』
『お母さん、僕、一生懸命に理解しようとしてるけど、やっぱり無理だよ。お父さんの気持ちなんか理解出来ないよ。』
『凛ちゃん。でもね、その当時の零児さんの気持ちと今の零児さんの気持ちは、全くの別物なの。その当時の零児さんの気持ちなんて、私だって、歩実だって理解出来ないわ。』
『そうなの?』
『今の零児さんは、凛ちゃんも知ってる優しいお父さんそのものでしかないわ。だから、もう責めないであげて。』
『みなみ…。』
『凛太郎、ごめんな。謝っても謝り切れない。俺がした事は、凶悪な大犯罪だ。歩実やみなみちゃんはもちろん、沢山の人を傷付けた。そして、年月を経て全てを秘密のまま、父親として、また目の前に現れた。卑怯だよな。凛太郎からしたら俺のやってる事は卑怯者の何者でしかないよな。これが実の父親なんて悔して仕方ないよな。ごめんな、凛太郎…。』
『お父さん…。正直、僕は、何て言っていいか分からないよ。お父さんが、僕の本当のお父さんであった事は、何も知らないままだったら嬉しいだけだけど、お父さんは、沢山の人を傷付けた大犯罪を犯した犯人なんでしょ?僕は、その血が通う息子なんでしょ?』
『凛太郎!』
『僕は…。僕には、お父さんと同じ血が流れてるんでしょ?だから、僕も、いずれ同じこ…!』
『凛太郎!そんな訳ないだろう!凛太郎は、俺とは違う!確かに、凛太郎には、俺の血が流れてる。でも、凛太郎には、歩実の血も流れてるんだ。だから、大丈夫。歩実の血が流れてる奴に、そんな、どうしようもない犯罪なんか起こさない!いいか!?何度でも言うぞ!?凛太郎は、俺とは違う!だから、何も心配しなくていいんだ!』
『そうよ!凛ちゃん!凛ちゃんは、大丈夫よ!』
『ウゥッ…。ウゥッ…。ウワーン…!』
『凛太郎、おいで。』
『ウゥッ…。ウゥッ…。』
号泣する凛太郎を優しく包み込む歩実を見て、改めて母親の偉大さを感じた。そして、俺のした事の重大性を改めて痛感した。
凛太郎は、心労が激しかったんだろう。そのまま眠ってしまった。その寝顔を見て俺は、一つの決心を下した。
『歩実。みなみちゃん。』
『零児さん、どうしたの?そんな怖い顔して。』
『俺、自首するよ。』
『ええ!?』
その次の日、俺は、先ず会社に行き、同僚の大きなどよめきの中、退職願いを出し、その帰り、警察に自首した。
『歩実、ごめんな…。被害者は、歩実だけじゃないんだ。俺は、罪を償うよ。』
『零児さん、私、待ってるから!凛太郎と二人で、いつまでも待ってるから!』
涙を滲ませながら振り絞った歩実の声が、いつまでも胸に響く中、俺の両手に、手錠がかけられた…。
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