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メインストーリー
15.欠落
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「なんで分かってくれないの!」
私の叫び声からこのストーリーは始まる。
週に一度の幹部会議で、私はいつも通りみんなからの賛同を得ようとしていた。
しかし、幹部の中に賛成派は蛇娘とカルロしかいなかった。
私はついに頭にきて大声で怒鳴ってしまったのである。
「自分で考えなよそれくらい」
妖怪が私にいつもの笑みを崩さずに言った。
ムカついた、今までこいつの言うことは冗談だとわかっていた。
しかし、今回は目が笑っていなかった。
ただ、ただ真面目に意見を出しただけだった。
「では、私と戦って負けたら私に賛同しろ」
間違っているとはわかっていたけど、もう抑えがきかなかった。
「怖いね~まあ、いいよ」
こいつが私の誘いに乗ってくるのは意外だった。
心が読めるだけで、決して戦闘力が高いわけではないこいつが。
「立会人はスカルさんでいいかな?」
淡々と話を進めている奴に、少し疑問を感じた。
何かを隠しているのではないか、本当は何か知っているのではないか、なんて思ってしまった。
(グギ)
「構わんだって」
周りの幹部で心配していたのはイカ娘とカルロだけだった。
他の幹部は野次馬のように私たちの周りを囲んだ。
お互いが間合いをとると、スカルが中心に立つ。
(ごぎ!)
「始め!」
相手の力をとりあえず見るために、私は様子を伺った。
「へ~お父さんは幹部の一人に殺されたんだね」
心底楽しそうな笑みを浮かばせながら、妖怪は話してきた。
心の中ではそんなこと考えていないはずなのに、と私の疑問は増える一方だ。
「ビックリしないでくれよ、僕が心を読むだけの妖怪なら幹部になんか入れないさ」
一理ある。
それによって導かれる、一番可能性の高いものは私の記憶が見れるということだ。
「80点だね、君の記憶じゃないよ。君のトラウマだ」
要は、私のお父さんが殺されたシーンを彼は平然と見て、平然と今語っているということか。
心がまるでないみたいじゃないか。
いや、この場合は今の状況を楽しんでいるというのか。
「そう考えず話でもしようじゃないか」
これがこいつの作戦なのだろう。
人の心を覗いて、弱い部分から崩していく。
そんなことで今更、私は壊れるわけがない。
「そもそも君はよく、お父さんが望んだ夢を叶えたいって言うけど、君自身の意見はないわけ?」
「お父さんと同じだ」
やはり、そこから崩そうとするわけか。
「君の意見を僕は聞きたいと言っているんだ」
「だから、魔物と人が争わない世界だよ!」
「嘘だね、君の芯の部分にあるのはもっと個人的な願望だ」
「そんなわけがない!」
「いやいや心は正直だ」
「そんなわけがない!」
私が魔物と人が争わない世界を作りたいというのは間違いないはずだ。
いつも、いつも思ってきたことだ。
それが私の理想なんだ。
「聞き方を変えようか、君は魔物と人が争わない世界というけど、本当はもっとより明確に争って欲しくないものがあるんじゃないのかい?」
「そんなわけ…」
「言っちゃいなよ、きっと楽になる」
私の心で自分の言葉が痛いと思うことがあった。
勇者様に嘘をついている時と同じ痛みがいつもあった。
こいつはこいつなりに私に気を使ってくれたんだろう。
私に答えをくれたんだろう。
「私は…魔王と勇者に争って欲しくない!」
「やっと言えたか、僕の負けだよ。君の意見に賛成しよう」
私の顔はきっと、涙と鼻水が混じってとても見るに堪えない顔だっただろう。
しかし、そこで妖怪は笑わず真面目な顔でそう言ってくれたんだ。
私はまた一歩進めた気がした。
私の叫び声からこのストーリーは始まる。
週に一度の幹部会議で、私はいつも通りみんなからの賛同を得ようとしていた。
しかし、幹部の中に賛成派は蛇娘とカルロしかいなかった。
私はついに頭にきて大声で怒鳴ってしまったのである。
「自分で考えなよそれくらい」
妖怪が私にいつもの笑みを崩さずに言った。
ムカついた、今までこいつの言うことは冗談だとわかっていた。
しかし、今回は目が笑っていなかった。
ただ、ただ真面目に意見を出しただけだった。
「では、私と戦って負けたら私に賛同しろ」
間違っているとはわかっていたけど、もう抑えがきかなかった。
「怖いね~まあ、いいよ」
こいつが私の誘いに乗ってくるのは意外だった。
心が読めるだけで、決して戦闘力が高いわけではないこいつが。
「立会人はスカルさんでいいかな?」
淡々と話を進めている奴に、少し疑問を感じた。
何かを隠しているのではないか、本当は何か知っているのではないか、なんて思ってしまった。
(グギ)
「構わんだって」
周りの幹部で心配していたのはイカ娘とカルロだけだった。
他の幹部は野次馬のように私たちの周りを囲んだ。
お互いが間合いをとると、スカルが中心に立つ。
(ごぎ!)
「始め!」
相手の力をとりあえず見るために、私は様子を伺った。
「へ~お父さんは幹部の一人に殺されたんだね」
心底楽しそうな笑みを浮かばせながら、妖怪は話してきた。
心の中ではそんなこと考えていないはずなのに、と私の疑問は増える一方だ。
「ビックリしないでくれよ、僕が心を読むだけの妖怪なら幹部になんか入れないさ」
一理ある。
それによって導かれる、一番可能性の高いものは私の記憶が見れるということだ。
「80点だね、君の記憶じゃないよ。君のトラウマだ」
要は、私のお父さんが殺されたシーンを彼は平然と見て、平然と今語っているということか。
心がまるでないみたいじゃないか。
いや、この場合は今の状況を楽しんでいるというのか。
「そう考えず話でもしようじゃないか」
これがこいつの作戦なのだろう。
人の心を覗いて、弱い部分から崩していく。
そんなことで今更、私は壊れるわけがない。
「そもそも君はよく、お父さんが望んだ夢を叶えたいって言うけど、君自身の意見はないわけ?」
「お父さんと同じだ」
やはり、そこから崩そうとするわけか。
「君の意見を僕は聞きたいと言っているんだ」
「だから、魔物と人が争わない世界だよ!」
「嘘だね、君の芯の部分にあるのはもっと個人的な願望だ」
「そんなわけがない!」
「いやいや心は正直だ」
「そんなわけがない!」
私が魔物と人が争わない世界を作りたいというのは間違いないはずだ。
いつも、いつも思ってきたことだ。
それが私の理想なんだ。
「聞き方を変えようか、君は魔物と人が争わない世界というけど、本当はもっとより明確に争って欲しくないものがあるんじゃないのかい?」
「そんなわけ…」
「言っちゃいなよ、きっと楽になる」
私の心で自分の言葉が痛いと思うことがあった。
勇者様に嘘をついている時と同じ痛みがいつもあった。
こいつはこいつなりに私に気を使ってくれたんだろう。
私に答えをくれたんだろう。
「私は…魔王と勇者に争って欲しくない!」
「やっと言えたか、僕の負けだよ。君の意見に賛成しよう」
私の顔はきっと、涙と鼻水が混じってとても見るに堪えない顔だっただろう。
しかし、そこで妖怪は笑わず真面目な顔でそう言ってくれたんだ。
私はまた一歩進めた気がした。
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