はないちもんめ

高尾 閑

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1‐1:御浪荘

じゅう

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「初めのうちは慣れないだろうけど、パソコンにフォーマットが入ってるから安心して。書けたら保存して印刷して、このファイルに閉じておしまい。保存した内容は、そのまま総務課のパソコンにも送られるから、こっちに提出する必要はないからね」
「はい」
「最初のうちは、この業務日誌を参考に仕事の流れを掴むのもいいかもしれないね」

 羽奈は課長の言葉に頷いた。

 羽奈は総務課に配属となっているが、この御浪荘のたった1人の管理人で、同じ業務内容の上司はおろか同僚もいない。つまり1人でやっていかなくてはならないのだ。
 前管理人は半年ほど前に辞めてしまっているので、仕事の引き継ぎはされてないし、直接指導をしてもらうことも、質問をすることも叶わない。
 課長からは、大まかな仕事内容は聞かされているが、やり方は自由にやり易い方法でいいと言われている。つまり丸投げだ。

 今までアルバイト経験はあるものの、高校を卒業したばかりの羽奈にはかなり荷が重い仕事だ。
 実際、羽奈自身も、何がわかっていないのかすらわかっていない状態で、漠然とした大きな不安を抱えきることもできないでいる。

 住み込みでの管理人、という仕事を選んだのは羽奈だ。それなりの覚悟も持っている。
 しかし、管理人としての上司も、指導者もいないとは思いもしなかった。
 そんな状態で、最初からたった1人で放り出されるなんて、思いもしなかった。

 だから、今までの業務内容の書かれたこの日誌が、羽奈には輝いて見えた。



 その後、簡単に寮と大浴場のある建物の中を案内してもらった羽奈は、寮の裏手にある管理人の住居の前で、課長と向かい合っていた。

「ここが高田さんの家だ。荷物は全部業者の人が運び込んでくれているから、全部揃っているかあとでで確認しておいてね。もし無いものがあったり、壊れたりてたら直ぐに連絡してほしい。こっちで対応するから」
「はい、わかりました」
「それから、はい。これがカギね」
「あ、ありがとうございます」

 ポンと手渡されたのは、寮と同じカードキーではなく、普通の銀色のカギだった。

「このカギはスペアキーがないから、高田さん以外の誰かが勝手に……、なんてことにはならないから安心して。それとこのカギも金庫のカギと同じで、高田さん以外には使えないから、絶対にないけど無くしたとしても大丈夫だからね」
「えっと……はい。大切にします」

 ニコニコと笑う課長に、羽奈は困惑ぎみに頷いた。そんな羽奈を見て、課長は笑みを深くする。

「とりあえず、今日はこんなところかな」
「はい」

 
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