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1‐1:御浪荘
きゅう
しおりを挟む課長に言われるままに金庫に手を入れ、手のひらを天井に当ててそっと手前に引いた羽奈は、目を丸くして小さく声をもらした。
天井だと思っていた部分が、動いたのだ。
見ればそれは引き出しのようになっていて、高さはないが物が入れられるようになっている。
中には黒いカードが6枚、並べて置いてあった。
「すごいだろう。いわゆる隠し箱ってやつだ」
驚く羽奈に、課長は得意気に笑った。
「中に入っているそれは、各部屋のスペアキーだ。もし万が一何かあった場合は、そのカギを使ってくれ」
「はい」
よく見れば、黒いカードの右上に白で数字が入っている。
個人情報の記された書類だけじゃなくて、スペアキーまで入っていたなんて……。
なおのこと、このカギは無くさないようにしないと。
羽奈は改めて気を引き締めると、隠し箱をもとに戻して金庫の扉を閉めた。
だけど、個人情報の記された書類よりも、スペアキーの方が厳重に管理されてるなんて思わなかった。普通、個人情報の方が重要なんじゃないのかな?
う~ん。……あ! でも、スペアキーが盗まれて部屋に侵入されたら、個人情報どころの問題じゃなくなるし……。
そう考えたら、スペアキーの方が重要なのか、な?
「ここまでで何かわからないことはあるかい?」
内心首を傾げていた羽奈は、タイミングのいい課長の言葉に少し考え、首を横に振った。
「いえ、大丈夫です」
「うん。まぁわかんないことがあったら、その都度質問してね。遠慮なんて必要ないからね。しばらくは週一で様子を見に来るし、総務課に電話してくれればいつでも答えるから」
「はい。ありがとうございます」
「あ、そうそう。あとこれね」
軽く頭を下げる羽奈に、課長はポンと手を打つと、デスク横の引き出しを開けて、中からファイルを1冊取り出して見せた。
「これは業務日誌といってね、1日の仕事の報告書だ。高田さんにも明日から書いてもらうんだけど」
そう言って課長は、ファイルを開いて1枚目の紙を羽奈に見せた。
「こんな感じで、その日の仕事の流れと、問題が出た場合はその内容、解決方法の有無などを書けばいいから。ああ、この日だね。壁の塗装をした日は。こんな感じに、通常の流れと違う出来事は一目見てわかるように書いてほしいんだ」
パラパラとページを捲っていた課長は、あるページで手を止めるとその場所を指した。
そこには、他の文字よりも太く大きな文字で、御浪荘の外壁塗装、と書かれている。その下には、塗装工事の開始時間と終了時間、作業員の人数、料金。そして、塗装工事をする事になった簡単な原因とその日付が書かれている。
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