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1‐1:御浪荘
はち
しおりを挟む生存確認をしなくてはならないほど、部屋から出てこないのか、と驚きながらも、羽奈はしっかりと頷いた。
貼られた顔写真は、短髪の物静かそうな青年で、あまり印象に残りにくい顔立だった。
部屋から出てこないなんて、ご飯とかはどうしてるんだろう、とか。社員寮で引きこもりなの? とか。
思うことはいろいろあったが、ここの住人はエリートだという課長の言葉を思い出し、きっと自分には想像のつかないようなすごいお仕事をしてるんだろうなぁ、と感服する羽奈だった。
「最後は宮沢伸登くん。25歳。部屋は206号室だ。宮沢くんはこの6人の中で1番の古株でね。見た目はこんな感じだから距離を置かれ勝ちだけど、実は世話好きで面倒見がいいんだ。だからもし困ったことがあったら、宮沢くんを頼るといい」
「はい」
見た目はこんな感じ、と課長が言う通り、書類にはつり目、三白眼、への字口、金髪のやや厳つい青年が睨みを効かせている写真が貼られている。
距離を置かれるというのにも頷ける迫力が、そこにはあった。
「さて、御浪荘の住人についてはこんな感じかな? あとは今後関わっていくなかでわかってくる事だろう。まぁなかなか個性の強い子達だから、はじめはやりにくいかもしれないけど、根はいい子達だから。時間があれば話をしてみるといいかもしれないね」
「はい。みなさんと、円滑な関係を築けるよう、頑張ります」
「うんうん。なかなかめんどくさ……いや、気難しい子達だから、気長にね。焦ったりしちゃダメだからね」
「? はい」
ニコニコと、しかし必死な様子の課長に首を傾げながらも頷けば、課長はにんまりと笑みを深めた。
「高田さんは素直でいいねぇ。彼らに見習わせたいよ。……あ、そうそう。仲良くなるのはいいんだけど、彼らの仕事内容について聞くのは、絶対にやらないでほしい。本人たちが自ら話した場合は問題ないんだけどね、高田さんから聞き出すのは、絶対にダメ。いいかい」
「はい、わかりました」
「よろしく頼むよ」
課長は、しっかりと返事をする羽奈を見て満足気に頷くと、広げていた書類を手早くまとめ、羽奈に手渡した。
「じゃあ高田さん、これを金庫に戻してくれるかい」
「はい」
「あ、扉はまだ閉めないで」
課長から書類を受け取り、金庫にしまう羽奈に、後ろから声がかかった。
「金庫の上の方に仕切りがあるんだけど、わかるかい?」
「しきり、ですか?」
「天井ギリギリにあるからわかりにくいんだけどね。上に手を当てて、手前に引いてみてごらん」
「はい。…………あ!」
一見ただの箱型の金庫にしか見えず、中に仕切りがあるようには見えないが……。
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