はないちもんめ

高尾 閑

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1‐1:御浪荘

しち

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 貼られた顔写真は、高校生でも通りそうな顔立ちの茶髪の青年だ。
 そんな、元気のいい子犬のような雰囲気の彼から飛び出す悪口が、まったく想像できない。

「次は105号室の海老原えびはらみのるくん。25歳。海老原くんは長期出張が多くてね。確か今も出張だったはずだ。戻ってくるのは来月辺りだったかな?」
「あ、そうなんですね」

 3人目は、前髪で右目を隠したややミステリアスな雰囲気の青年。切れ長の左目がとても印象的だ。

「この3人が1階の住人で、103号室と106号室が、今は空き部屋になってる」

 課長はどこからか御浪荘の見取り図を取り出して、説明をする。
 入口から見てロビーの右隣の部屋が101号室。その正面が102号室で真ん中の部屋が103号室。104号室はなく、103号室の左隣は105号室で、その向かいに106号室がある。

 101号室が梶さんで、102号室が友重さん、105号室が海老原さん。
 うん、覚えた。

 羽奈は見取り図と3人の顔写真をじっと見て、何度か頭のなかで繰り返すと、小さく頷いた。
 そんな羽奈の様子を見て、課長は4枚目の紙を指差した。

「次は2階の3人だね。まずは山田やまだ京介きょうすけくん。26歳。この御浪荘で最年長だ。因みに最年少は友重くんだね。ああ、でも今日からは高田さんが最年少だから、これで彼も少しは落ち着くかな」
「えっと……?」
「ああ、友重くんは御浪荘でも職場でもずっと最年少だったんだよ。だから今回高田さんが入ったことで、もしかしたら先輩風吹かせてくるかもしれないけど、多目に見てあげて」
「はい」

 ふふ、っと笑う課長につられて、羽奈も笑う。
 課長の口振りからして、友重という人物は手のかかる弟的な存在なのだろう。羽奈は離れて暮らす弟を思い出した。

「山田くんの部屋はここ、201号室。梶くんの上の部屋だね」

 書類に貼られた写真には、癖の強い亜麻色の髪に、べっこう色の縁の眼鏡をかけた青年が写っている。

「次は203号室の、西岡にしおか佑馬ゆうまくん。23歳。西岡くんはそうだな……在宅ワークというか。とにかく部屋でできる仕事を担当していてね、基本的に部屋から出てくることはないかな」
「そうなんですね」
「うーん、そうだな。週に1度でいいから、インターホンを鳴らして、生存確認をしてくれるかい? 仕事のやり取りは基本的にパソコンで行っているんだけどね、期日の長いものばかりだから。西岡くんは人見知りなところがあるから、多分部屋から出てくることはないだろうけど、インターホンを鳴らせば返事はしてくれるから。お願いできるかい?」
「はい、わかりました」


 
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