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1‐1:御浪荘
ろく
しおりを挟む羽奈はやや緊張ぎみにカギを握り直すと、そっとカギ穴に差し込んだ。
その瞬間、カギ穴からカギを通して、なにか電気のようなものが羽奈の体中を駆け巡ったような感覚がした。しかしその感覚はとても微弱で、それも一瞬の出来事だったため、羽奈は特に気に止めることなくカギを回した。
カギはカチン、と軽い音をたてて開いた。
羽奈はカギを抜くと、恐る恐るといった様子で金庫の重い扉を開く。
「うん、うまくいったようだね。高田さん、中の書類をすべて出してくれるかい」
「はい」
言われた通りに金庫から書類を取り出し課長に手渡すと、課長は書類を机に置き、そのうちの1枚をぺらりと手に取った。
「この御浪荘に住んでいるのは、今は6人だ。まだ4部屋空いているから、今後増える可能性もあるけど、向こう1年はこのままだから今は特に気にしなくていい」
「はい」
「で、その6人についてなんだけど……。まぁこんな感じで1人ずつ書類があって、緊急連絡先とか掛かり付けの病院、アレルギーや持病の有無等、何かあったときのための個人情報が書いてある」
課長の持つ書類を覗き込めば、名前や生年月日、血液型、電話番号等が書かれており、左上には顔写真が貼られている。
そう言えば、今日入社式の後に提出した書類の中に、同じような紙もあったと思い出しながら羽奈は頷いた。
「滅多にないとは思うが、もし病院に行くような事があったら、これを見て病院側に伝えてほしい」
「はい、わかりました」
課長の言葉に、羽奈は神妙に頷く。
課長はそんな羽奈に穏やかに笑いかけ、書類の中から6枚紙を抜きとり、見やすいように並べた。
「じゃあ次は住人について簡単に説明しよう。まず、101号室に住んでいるのは、梶浩太郎くん。22歳。梶くんは基本的に夜担当だから、日中は寝てることが多いかな? だから高田さんが梶くんに会うことは滅多にないと思うよ」
「そうなんですね」
梶浩太郎と書かれた紙の顔写真には、男性にしてはやや長めの黒髪に、タレ目のぽやーんとした雰囲気の青年が写っている。
写真を見て頷く羽奈に、課長は2枚目の紙を指差した。
「次は102号室の友重彰史くん。20歳。友重くんは、そうだな……。とてもなつっこい子なんだけど、口が悪くてね。もし嫌なことを言われたら、遠慮なく私たちに言ってくれ。注意するから」
「はい」
「あ、言い返せるようなら言い返しちゃっても構わないからね。彼はほんとに口が悪いから」
困ったように笑う課長に、羽奈もへらりと笑い返す。
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