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1‐1:御浪荘
し
しおりを挟む「で、高田さんの住居はここだ」
そう言って課長が指したのは、寮の後ろに位置する建物。共同スペースのある建物とは違い、寮との行き来ができないようになっている。
造りは寮と同じで1LDKだが、お風呂とキッチンが広い。
「3年前までは管理人もこの御浪荘に住んでいたんだけどね、前任者が来たときに別にすることになったんだよ。それまでは管理人はみな男だったから問題はなかったんだけどね、さすがに女性を男だらけの所に一緒に住まわせるわけにはいかないだろう?」
「はい、そうですね」
眉を下げて笑う課長に、羽奈も小さく笑い返す。
そう。羽奈がこれから住み込みで働く職場は、男子寮なのだ。
「まさか彼女が突然辞めてしまうとは思わなかったが、3年前に建てたばかりだから、綺麗だと思うよ。それにセキュリティも最新のを用いているから万全だし。安心して暮らしてほしい」
そう言って課長はにっこり笑うと、残りの説明事項を順番に分かりやすく説明した。そうして一通り説明が済むと、
「よし。じゃあそろそろ御浪荘に行こうかね」
「はい。よろしくお願いいたします」
羽奈はペコリと頭を下げて、資料を鞄にしまうと、課長の後を追いかけた。
課長の運転する車に乗って約40分。
たどり着いた御浪荘は、資料を見て思ったよりも大きく綺麗な建物だった。
「すごい……。綺麗ですね」
「ははっ。そうだろう。なんせ2ヶ月前に塗り替えたばかりだからね」
「そう、なんですね……」
やけに綺麗だと思えば、外壁を塗り替えたばかりらしい。たしか、羽奈の見間違えじゃなければ6年前に改築をして、去年リホームをしている。
そして2ヶ月前に外壁の塗り替え。
そんなに頻繁に行われるようなことなのだろうか、とぽかんとする羽奈に、課長は大きな口を開けて笑った。
「いやー、実はね、ここに住む社員はなんというかヤンチャでね。あ、悪い奴等じゃないんだよ? 若いけど我が社のエリートだし。ただなんというか……少々わんぱくでね、うん。高田さんに渡した資料には書いてなかったけど、お陰で結構修繕とか塗り替えとかしているんだよ」
「…………」
「ああ、大丈夫だよ。人に暴力を振るったり、非道なことをするような奴等じゃないから。それに彼らの行動を改めさせろ、だなんて無茶も言わないし。高田さんはこの寮の管理をしてくれればそれでいいから。ね?」
「はい」
安心させるような笑みでそう言う課長に、羽奈は頷きながらも内心首を傾げた。
エリートでヤンチャでわんぱく……。いったいどんな人たちなんだろう。
まったく想像がつかなかったが、課長の表情は穏やかなままだったので、きっと危険な人たちではないのだろうと納得した。
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