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1‐1:御浪荘
さん
しおりを挟む羽奈の勤め先は、人材派遣会社だ。大手の会社に数多くの人材を派遣しており、信頼の厚い会社だ。
本社は兵庫県にあり、青森県、東京都、大分県に支社がある。
羽奈の配属先は東京支社の総務課だ。しかし職場は千葉県にある社員寮で、住み込みで寮の清掃をメインとした管理をすることになっている。
なんでも今まで管理人をしていた人が辞めてしまい、後任もおらずで今回急遽社員を募集していたらしい。というのも、この会社は派遣会社というのもあり、滅多に正社員を採っていないのだ。
住み込みでの管理という仕事条件は、高校卒業後は家を出て働くつもりでいた羽奈にとって、まさにぴったりな仕事だった。
新幹線と電車を利用して約3時間。
ようやく東京支社に着いた羽奈は、ビルを見上げて、大きく深呼吸した。
今日はここで入社式が行われ、その後それぞれ配属部署で顔合わせと職務内容の説明等がされる予定だ。
新入社員は羽奈を入れて8人。羽奈以外は全員成人しており、羽奈は最年少だ。
羽奈はドクドクと高鳴る鼓動をおさえ、ビルへと足を踏み入れた。
とても簡単な入社式を終え、総務課で挨拶をした羽奈は、課長に連れられ小さな会議室にいた。
「早速なんだが高田さん。きみの職務内容について説明させてもらうよ」
「はい」
父親よりも年上だろう彼は、穏やかな顔に笑みを浮かべ、正面に座る羽奈に資料を渡した。
「まず、最終面接の時にも話した通り、高田さんには千葉にある社員寮の管理をしてもらう。半年くらい前に前任者が突然辞めてしまってね。今までは総務課のメンバーで交代で管理をしていたんだ。だけど十分に手が回らなくてね。高田さんが管理人を希望してくれて助かったよ」
心底安心したといった表情でお礼を述べる課長に、羽奈は戸惑いながらも笑みを返した。
「それから、契約書類にもあった通り、家賃と光熱費、水道代はすべて会社持ちだ。あまりにも非常識な金額にならない限りお咎めはないから、多少贅沢な生活をしても問題ないよ」
「はい……」
「じゃあ寮の説明に移るね。寮の名前は御浪荘。この東京支社ができた時からあるから結構古いけど、改築とリホームをしてて割りと綺麗な建物だから安心してね。外観はこの資料の写真を見ればわかると思うんだけど、2階建てのアパートだ」
そう言って課長は分かりやすいように資料を指しながら、説明を始めた。
寮の部屋数は羽奈の職場となる管理人室を抜いて10室。各部屋に小さなシャワールームがあるが、それとは別に共同の大浴場が1つ。
大浴場のある建物は寮と隣接しており、渡り廊下で繋がっている。また大浴場の他に娯楽室や小さな会議室が3つあり、自由に使えるように常に開放されているらしい。
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