山賊王女と楽園の涯(はて)

紺乃 安

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逆賊討伐

11 鏡像

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 ティーサンリード山賊団の拠点入口に、ボリス・ホードとコニー・ホードの兄弟が滑り込むように侵入していった。
 その背中を見送ったアムレアンのもとに、一頭の騎馬が向かってきている。残った十名の近衛兵たちは身構えたが、アムレアンがそれを制した。
「アムレアン様! ご報告があります」
 馬上の男は、山賊団からの先制攻撃に対応して別行動をとった、連合部隊のテグネール隊長だった。
 テグネールは馬から降りると、アムレアンの前で片膝を付いてこうべを垂れた。
「テグネールか。何があった」
「はい。ここより西の岩山の上に、山賊どもの拠点入り口と思われる場所を発見しました」
 その報告に、近衛兵たちから低く歓声が上がる。
「前に戦ったときも後ろから襲撃を受けたので、もしやと思ってましたが……」
「裏口か……では、その入口を今後、西口と呼ぶこととする。して、その西口の状況はどうだ。守備は固めてあったか」
「いえ、警戒していないようで、誰も見張りなどは立っていません」
「罠ですかねえ?」
 若く髪の長い優男やさおとこが、親しげにアムレアンに話しかけた。
「抜け目のない連中のようだからな……。だが、ここに全員で待機していたところで状況は好転せん。リンド副隊長、四人を率いて西口に回れ。現地での判断は一任する」
「了解しましたー!」
あなどるなよ」
「分かってますって」
 リンドと呼ばれた男は、場違いなほど軽い調子で返答した。アムレアンは特にその態度を気にした様子はない。
「テグネール、リンドを案内してくれ。それが終わったら、ここに人をよこしてほしい。こいつの回収を頼む」
 アムレアンは力なく横たわっているラーネリードを顎で示した。
 ラーネリードは血泡を噴いている。肺が潰れていて恐らく助からないだろう、アムレアンはそう考えながらもテグネールに指示を出した。
「それと、道中に、矢傷を受けて倒れている者たちが数人いただろう。その救出も頼みたい」
「アムレアン様、その方々なのですが……」
 テグネールは首を横に振った。彼が確認したときには、ユーホルトの矢で負傷して岩陰や道端に倒れていた近衛兵たちは、全員とどめを刺され死亡していたのだ。
 近衛兵たちが怒りの声にざわつく。
「……そうか、分かった。あとで遺体を回収しておいてくれ」
「了解しました。ラーネリード様は、馬に乗せてお連れしましょう。ではリンド様、こちらへ」
「よろしくー、おじさん」
 リンドは髪をかきあげ、片目をつむって目くばせをする。テグネールは不安を覚えつつも、リンドら五人とラーネリードを先導し、西口を監視する部下たちの元へと急いだ。
「残りは全員、私とともに突入する。ホード兄弟が血路を開いたら、そのまま全員で突破するぞ」

 湿った土とラーネリードの血で汚れた敷石の上に、四つの新たな足跡がつけられた。兄のボリスと弟のコニーからなるホード兄弟は、横並びでうり二つの顔に面妖な笑みを浮かべ、細い通路でアウロラと対峙している。
「驚いたね。ラーネリードを倒したのは女の子だったんだ」
「リーパーの実力を見た目で判断するのは危険だよ、ボリス」
「そうだねコニー。だから君も、僕たちの力を侮らないほうがいいよ、お嬢さん」
 どうやら右側に立ち右手に短剣を持っているのがボリス、左側で左手に短剣を持っているのがコニーらしい。
 そのホード兄弟を前にして、アウロラは奇妙な違和感に囚われていた。二人の人間と対峙しているのに、発せられているリーパーの力は一人のものだという感覚がある。
――力を持っているのはどっち?
「わからない、って顔をしているね」
「考えてないで戦ってごらんよ。きっと」
「答えがわかるよ」
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