【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓

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 馬車の窓から見えるエルケとクラーラに手を振ると、二人は明るい表情を浮かべて手を振り返す。
 すると馬車は蹄の音と共に動き出し、それを見た二人は自分たちの馬車がある方へ向かって歩き出した。
 そんな様子をのんびりと眺めているとルドルフがこちらを振り返らずに一つ問を投げかける。

「今日はいかがでしたか」

「んー、大変な日だったね」

「大変と言いますと、何か忘れ物でもありましたか?」

「忘れ物とかじゃなくて、婚約の話でちょっとね」
+
 その言葉である程度察してくれたらしく、ルドルフは少し心配するような雰囲気を見せてこちらを振り返る。

「旦那様にご報告しましょうか?」

「うん、お願い。でも、出来れば二人だけで話せるようにして欲しいかな」

 私がそう言うと彼は「分かりました」とだけ答えて前を向き、馬車の中には静寂が戻った。
 フロイデンに脅された話や手を出された話をする以上、これから大忙しとなるのは間違いない。
 ――父に横領したのか、なんて聞きたくないものである。


 ☆


「イルメラ様、準備が出来たそうです」

 部屋の扉をノックしてそう声をかけてくれたルドルフに私は返事をして、フロイデンから渡された書類を片手に部屋を出る。
 ルドルフは扉を閉めると先を歩き始め、その後に続いて父の私室へ向かう。
 連続で忙しい父に時間を取らせてしまっている申し訳無さと、失礼千万な質問をしなければならない不安が私の鼓動をうるさくさせる。
 しかし、その不安とは対照的に、恐喝ばかりしているような人との婚姻せずに済むかもしれないという希望もあり、それが私の背を押しているように感じる。
 と、そんな考え事をしている間に父の部屋の前に到着していたらしく、ルドルフはこちらを振り返って。

「お部屋の中は旦那様だけとなっています。私がここで見張りをしていますので、ごゆっくりお話しください」

「うん、ありがとう」

 礼を口にするとルドルフは優し気な笑みを見せて頷き、扉をゆっくりと開いた。
 私は一つ深呼吸をして扉を潜り、真剣な表情でこちらを見つめる父に一礼して、今日も用意されている座席へ腰掛けた。

「二人だけで話したいとの事だったが、何があった?」

「はい、実は――」

 私はフロイデンから渡された書類を父へ手渡し、何があったのかを全て話した。
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