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私たちがソファに腰掛けると、陛下は膝の高さのテーブルに置かれていたティーカップを手に取りながら早速問いを投げかける。
「さて、このバカが脅迫をした証拠とやらを見せて貰おうか。百聞は一見に如かずってやつだ」
父は小脇に抱えていたファイルからフロイデンが証拠として私に突き付けたあの書類を取り出し、それをテーブルに差し出した。
それをゆっくりとした動作で手に取った陛下は、数分程度それを眺め、呆れたような笑みを浮かべてフロイデンの方を向いて。
「さて、お前が持って来いと喚いていた証拠が出てきたわけだが、弁明はあるのか?」
「……ね、捏造です、父上。この女は私と別れたいからと、こんな偽物の証拠を用意したのです!」
顔を青くさせたままそんなことを言い始めたフロイデンに陛下は胡散臭い物を見る目を向ける。
一切信用していない様子だが興奮している彼はそんな事に気付いていないらしく、焦りが見え隠れする目を私に向けると勢い良く立ち上がる。
「私がどれだけ愛というものを示しても、好きだと言ってもそれをことごとく拒否して、挙句の果てには婚約破棄を突き付けるなんて、こんな理不尽が許されるわけがないでしょう! 真に罰せられるべきは、この女ではないですか!」
「うるせえなあ……」
陛下がうんざりしている様子で溜息を吐きながら呟いたことで、フロイデンはやっと不快な思いをさせていることに気付いた様子で謝罪して座り直す。
しかし、あくまでも私が捏造したというスタンスは貫く様子で、苛立ちの含んだ目でこちらを睨み付ける彼に嫌悪感が止まらない。
すると陛下は紅茶を啜って一息吐くと、私に目を合わせて。
「こいつの言い分だけ聞くのも不公平だ。イルメラの言い分も聞かせて貰おう」
「は、はい」
突然話題を振られたことで緩んでいた緊張感が少し高まるが、私はそれを気合で堪えて、互いに気持ちが冷め始めた頃から現在に至るまでの全てを話すべく口を開く。
しかしフロイデンは何か話されたら都合の悪い事でもあるかのように、慌てた様子を見せて。
「嘘ばかり話すな! そこまでして俺を嵌めたいのか!」
「口を閉じろ。今ここで有罪にするぞ」
「……申し訳ありません」
悔しそうに謝罪した彼だったが、それ以上話すなとでも言うかのようにぎろりとこちらを睨み付ける。
少し話し辛く感じながらも私は今までの事全てを陛下に話し、そして最後に婚約破棄をしたいという素直な気持ちを訴えた。
相槌を打ちながら静かに聞いていた陛下は全て聞き終えると、ティーカップの中の紅茶を一気に飲み干して。
「イルメラの話の方がそれっぽいなあ」
「騙されないで下さい、父上。平気な顔をして嘘を付く女ですから」
慌ててそんな事を言うフロイデンにイラっと来るものを感じていると、陛下は顎髭を撫でながら唸る。
「まあ、確かに捏造かどうかってのは判断出来ねえか」
「……! そうです、私が捏造であると証明することが出来ないのと同様に、この女も捏造では無いと言い切ることが出来ないのです!」
チャンスだとばかりに分かりやすい反応をする彼の醜さに呆れて言葉も出ない。
しかし、確かに陛下が言う通り捏造であるとする発言に反論出来る証拠は、今の段階では無い。
――そう、今の段階では。
私がそう考えるのとほぼ同時、背後の扉がノックされた。
陛下が扉の横で待機していた騎士に開けるよう指示したことでそれが開かれると、そこには三人の男女の姿があった。
するとフロイデンが顔を引きつらせ、震えた声を出す。
「……どういうつもりだ、レオナルト」
「これから分かりますよ、兄上」
ニコリと笑うが目は笑っていないレオナルト殿下と、その横に並ぶエルケとクラーラの姿を見て、何とも言えない心強さが胸の中に湧き出した。
「さて、このバカが脅迫をした証拠とやらを見せて貰おうか。百聞は一見に如かずってやつだ」
父は小脇に抱えていたファイルからフロイデンが証拠として私に突き付けたあの書類を取り出し、それをテーブルに差し出した。
それをゆっくりとした動作で手に取った陛下は、数分程度それを眺め、呆れたような笑みを浮かべてフロイデンの方を向いて。
「さて、お前が持って来いと喚いていた証拠が出てきたわけだが、弁明はあるのか?」
「……ね、捏造です、父上。この女は私と別れたいからと、こんな偽物の証拠を用意したのです!」
顔を青くさせたままそんなことを言い始めたフロイデンに陛下は胡散臭い物を見る目を向ける。
一切信用していない様子だが興奮している彼はそんな事に気付いていないらしく、焦りが見え隠れする目を私に向けると勢い良く立ち上がる。
「私がどれだけ愛というものを示しても、好きだと言ってもそれをことごとく拒否して、挙句の果てには婚約破棄を突き付けるなんて、こんな理不尽が許されるわけがないでしょう! 真に罰せられるべきは、この女ではないですか!」
「うるせえなあ……」
陛下がうんざりしている様子で溜息を吐きながら呟いたことで、フロイデンはやっと不快な思いをさせていることに気付いた様子で謝罪して座り直す。
しかし、あくまでも私が捏造したというスタンスは貫く様子で、苛立ちの含んだ目でこちらを睨み付ける彼に嫌悪感が止まらない。
すると陛下は紅茶を啜って一息吐くと、私に目を合わせて。
「こいつの言い分だけ聞くのも不公平だ。イルメラの言い分も聞かせて貰おう」
「は、はい」
突然話題を振られたことで緩んでいた緊張感が少し高まるが、私はそれを気合で堪えて、互いに気持ちが冷め始めた頃から現在に至るまでの全てを話すべく口を開く。
しかしフロイデンは何か話されたら都合の悪い事でもあるかのように、慌てた様子を見せて。
「嘘ばかり話すな! そこまでして俺を嵌めたいのか!」
「口を閉じろ。今ここで有罪にするぞ」
「……申し訳ありません」
悔しそうに謝罪した彼だったが、それ以上話すなとでも言うかのようにぎろりとこちらを睨み付ける。
少し話し辛く感じながらも私は今までの事全てを陛下に話し、そして最後に婚約破棄をしたいという素直な気持ちを訴えた。
相槌を打ちながら静かに聞いていた陛下は全て聞き終えると、ティーカップの中の紅茶を一気に飲み干して。
「イルメラの話の方がそれっぽいなあ」
「騙されないで下さい、父上。平気な顔をして嘘を付く女ですから」
慌ててそんな事を言うフロイデンにイラっと来るものを感じていると、陛下は顎髭を撫でながら唸る。
「まあ、確かに捏造かどうかってのは判断出来ねえか」
「……! そうです、私が捏造であると証明することが出来ないのと同様に、この女も捏造では無いと言い切ることが出来ないのです!」
チャンスだとばかりに分かりやすい反応をする彼の醜さに呆れて言葉も出ない。
しかし、確かに陛下が言う通り捏造であるとする発言に反論出来る証拠は、今の段階では無い。
――そう、今の段階では。
私がそう考えるのとほぼ同時、背後の扉がノックされた。
陛下が扉の横で待機していた騎士に開けるよう指示したことでそれが開かれると、そこには三人の男女の姿があった。
するとフロイデンが顔を引きつらせ、震えた声を出す。
「……どういうつもりだ、レオナルト」
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