あやかし農場のほのぼの生活〜ブラックな職場を辞めて、もふもふなあやかし達との生活を始めます。なので戻って来いとか言わないでください〜

星野真弓

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34話

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 昨日、寝る前に自発的に書いた反省文を読み直し、二度と危険なミスをしないよう自分に言い聞かせる。
 あの時は誰もいなかったから良かったけれど、もしも人がいる時に動いてしまったら、大惨事になっていたかもしれない。
 美農が責任を負おうとしていたけれど、埃を被っていて見るからにボロボロな棚に置いた私が悪かったのだし、やはり物の管理をもっと徹底する必要があるだろう。

「はあ……」

 昨日の焦っていたたぬき娘の顔や、大きな音を立てるコンバインに怯えてしまっていたみんなを思い出してしまって、みんなに顔を合わせるのが不安になってしまう。
 しかし、そろそろ朝ご飯が出来る時間だ。折角作って貰ったものに手を付けないのは失礼極まりない。

「よしっ」

 自分の頬を挟むように叩いた私は椅子から立ち上がり部屋を出ようとして、数人の話し声が聞こえて来た。
 
「夏月さん大丈夫かなぁ……」

「被害は小さかったし、気にしないで欲しいねー」

「「ねー」」

 楓と他数人のたぬき娘たちの声でホッと安堵しながら襖を開ける。
 すると、すぐそばで話し合っていた四人の娘たちがこちらを向いた。

「あ、おはようございます! 朝食のご準備ができてます!」

 いつもより元気のある声で話し掛けて来た楓と、なるべく明るく取り繕ってくれるみんなを見ているとメソメソしていられない。
 思い直した私は尻尾を不安そうに垂れ下がらせる彼女たちに笑みを浮かべて見せて。

「おはよう。昨日はごめんね」

「大丈夫です! 誰だって失敗はありますから!」

「そうですよ、私だって農具壊しちゃったことありますし、たぬきなら誰でもそう言うミスはあります!」

 楓に続いて千春も全力で励まし始め、後ろにいた他二人もうんうんと頷く。
 そんな可愛らしい四人の温かな優しさで思わず笑ってしまった私は、ここに来て良かったと実感しながらみんなを抱き締める。

「ありがとう。今日もみんなのために頑張るね」

「はい! がんばりましょう!」

 楓が嬉しそうに尻尾を振り回して抱き着き返し、他の子たちも同様に尻尾を振り回してむぎゅむぎゅと抱き着いて来る。
 可愛い妹たちに甘えられているような、そんな気持ちになりながら頬ずりして来る彼女たちの頭を撫でていると、階段の方からこちらに歩いて来る小さな影が見えた。
 すぐさま美農だと察していると、先っぽだけ白い黄金色の尻尾がぷるんと揺れ、呆れたようにため息を吐く。

「何をしておるのじゃ。飯が冷めるぞ」

「ご、ごめん。この子たちが可愛くて……」

「まったく……なぜたぬきが泣いておるのじゃ」

「夏月さんが立ち直ってくれたのが嬉しくて、つい……」

 いつの間にやら泣いていたらしく、楓が震えた声でそんなことを言う。
 もらい泣きしそうになっていると、美農は煙で身を包み、やがて妖艶な狐娘がその中からゆっくりと現れた。
 それはい人里で変身する女の子の姿ではなく、複数のふかふか尻尾と綺麗な三角形の獣耳、そしてモデルのように美しい顔立ち。
 カワイイというよりも美しい、あるいは格好良いという言葉の方が似合うその姿に驚き言葉を失っていると、彼女はゆったりとした足取りで私たちの元へ近付き、泣きじゃくる楓と私の頭を撫でる。 
 
「光栄に思うが良い。童が人間にこの姿を見せたのは……十人目くらいじゃ」

 あやふやな事を言う彼女の中身がちゃんと美濃のままなようで安堵してしまう。

「中身はへっぽこのまま?」

「減らず口を叩くな」

 私の頭を撫でていた手が頬をむにーっとつねり、くすぐったいようなそうでもないような、何とも言い難い感触に思わず変な声が出る。
 美農の気持ちが初めて分かっていると、一頻り泣いて落ち着いたらしい楓が顔を上げる。

「朝ごはん、食べに行きましょうか」

「うん、そうだね。みんなも一緒に行こう」

「「「はい!」」」

 元気良く返事をしたたぬき娘たちは揃って目元が赤らんでいて、きっと私も似たような顔をしているのだろうと察する。
 そんな私たちを可愛がるような笑みを浮かべた美農は、ぽふっと間の抜けた音と共にいつもの姿へ戻った。

「ほれ、行くのじゃ。他のたぬき共が待っとる」

「ごめんごめん」

 先を歩いて行く黄金色の尻尾を追いかけるようにして、私たちは階段の方へ向けて歩き出した。

 今日も一日、頑張ろう。
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