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12話 酒場にて(猫田視点)
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「ホントあり得ないですよ、あの男! 今思えば証拠かき集めて裁判でもやれば良かったって思いますから!」
「そ、そうだな」
まだビールを一口しか飲んでいないのにもう酔っぱらった深川に苦笑を禁じ得ない。
それにしてもこの子が言うことが本当であれば、あの会社の終わりは近いな。今更あの会社がどうなろうとどうでも良いが、潰れてくれるならそれに越した事は無い。
言わずもがな、あやかしデジタルの仕事が増えるからである。
そんな腹黒いことを考えていると深川はビールをくいっと飲み、顔を更に赤くする。
「ムリすんなよ?」
「むりしてないですぅ……」
その言葉とは裏腹に彼女は意識が朦朧としているような素振りを見せ、俺はその様子からもう手遅れであると察する。
やがて彼女はへなへなと机に突っ伏し始め、俺が声を掛ける間も無く酔いつぶれてしまった。
「やっぱりな?」
思わず呟きながら残っていた唐揚げを食べた俺は電話でタクシーを呼び、小声で謝りながらテーブルに置かれた深川の財布から免許証を取り出す。
住所を暗記した俺はそれを財布へ戻し、彼女に肩を貸すようにして立たせ、店員に同情の目線を送られながら会計を済ませて外へ出る。
と、丁度到着したタクシーから中年の男性運転手が降りて来て。
「猫田さんですか?」
「はい、猫田です」
「あらら、酔いつぶれましたか」
「そうなんですよ。ドア開けて貰って良いですか?」
俺がそう言うと運転手はドアを開け、深川を席に座らせるのを手伝ってくれた。
礼を言って反対側からタクシーに乗り込んだ俺は運転手に彼女の住所を伝えながらシートベルトを締めると同時、タクシーは走り出す。
深川へと目を向けるとすやすやと幸せそうな寝息を立てていて、さっきまでの騒がしさが嘘のように見える。
それにしても、こうしてちゃんと見てみると顔立ちは整っていてかなり可愛らしい。
セミロングの頭髪もしっかり手入れされているのか艶があり、俺の好みで――
そこまで考えた俺は慌てて自分の頬を抓り、会社で買った水を取り出して一気飲みする。
どうやら深川のことを馬鹿に出来ない程度には俺も酔っぱらっているらしい。
「どうかしましたか? もし気分が悪いようでしたら止めますよ」
「す、すいません。喉乾いただけです」
心配した様子の運転手に慌てて誤魔化し、俺はペットボトルに残った水を飲み干して鞄へ突っ込む。
タクシーに乗っただけなのにここまで精神的に疲れるとは予想外だ。
そうして数十分後、無事に深川のアパートの前へ到着し、タクシーを降りた俺は完全に寝てしまった深川を負ぶって、事前に深川の鞄から取り出しておいた鍵で一〇ニ号室の扉を開け、室内に入った俺は明かりを付ける。
整理整頓された部屋の端に位置するベッドに彼女を寝かせた俺はそこから離れようとすると腕を掴まれた。
「ねこたさん……」
「起きたのか?」
そう質問しながら振り返ると起きている訳では無く、むにゃむにゃと寝言を言っているだけで、寝惚けているのだと察する。
「ほら、放しなさい」
そう言いながら手を引っ張ってみるが意外にも深川の力は強く、中々放れないし放そうとしない。
どうしようかと悩んでいると急に彼女は俺の手をグイっと引っ張り、油断していた俺はそのまま彼女の横に倒れ込む。
息がかかる程近くまでその可愛らしい顔が近付き、恋愛経験の無い俺は頭の中が真っ白になっていると――
「……猫田さん?」
最悪なタイミングで深川は目を覚まし、元々赤らんでいた顔を耳まで真っ赤にさせた。
「そ、そうだな」
まだビールを一口しか飲んでいないのにもう酔っぱらった深川に苦笑を禁じ得ない。
それにしてもこの子が言うことが本当であれば、あの会社の終わりは近いな。今更あの会社がどうなろうとどうでも良いが、潰れてくれるならそれに越した事は無い。
言わずもがな、あやかしデジタルの仕事が増えるからである。
そんな腹黒いことを考えていると深川はビールをくいっと飲み、顔を更に赤くする。
「ムリすんなよ?」
「むりしてないですぅ……」
その言葉とは裏腹に彼女は意識が朦朧としているような素振りを見せ、俺はその様子からもう手遅れであると察する。
やがて彼女はへなへなと机に突っ伏し始め、俺が声を掛ける間も無く酔いつぶれてしまった。
「やっぱりな?」
思わず呟きながら残っていた唐揚げを食べた俺は電話でタクシーを呼び、小声で謝りながらテーブルに置かれた深川の財布から免許証を取り出す。
住所を暗記した俺はそれを財布へ戻し、彼女に肩を貸すようにして立たせ、店員に同情の目線を送られながら会計を済ませて外へ出る。
と、丁度到着したタクシーから中年の男性運転手が降りて来て。
「猫田さんですか?」
「はい、猫田です」
「あらら、酔いつぶれましたか」
「そうなんですよ。ドア開けて貰って良いですか?」
俺がそう言うと運転手はドアを開け、深川を席に座らせるのを手伝ってくれた。
礼を言って反対側からタクシーに乗り込んだ俺は運転手に彼女の住所を伝えながらシートベルトを締めると同時、タクシーは走り出す。
深川へと目を向けるとすやすやと幸せそうな寝息を立てていて、さっきまでの騒がしさが嘘のように見える。
それにしても、こうしてちゃんと見てみると顔立ちは整っていてかなり可愛らしい。
セミロングの頭髪もしっかり手入れされているのか艶があり、俺の好みで――
そこまで考えた俺は慌てて自分の頬を抓り、会社で買った水を取り出して一気飲みする。
どうやら深川のことを馬鹿に出来ない程度には俺も酔っぱらっているらしい。
「どうかしましたか? もし気分が悪いようでしたら止めますよ」
「す、すいません。喉乾いただけです」
心配した様子の運転手に慌てて誤魔化し、俺はペットボトルに残った水を飲み干して鞄へ突っ込む。
タクシーに乗っただけなのにここまで精神的に疲れるとは予想外だ。
そうして数十分後、無事に深川のアパートの前へ到着し、タクシーを降りた俺は完全に寝てしまった深川を負ぶって、事前に深川の鞄から取り出しておいた鍵で一〇ニ号室の扉を開け、室内に入った俺は明かりを付ける。
整理整頓された部屋の端に位置するベッドに彼女を寝かせた俺はそこから離れようとすると腕を掴まれた。
「ねこたさん……」
「起きたのか?」
そう質問しながら振り返ると起きている訳では無く、むにゃむにゃと寝言を言っているだけで、寝惚けているのだと察する。
「ほら、放しなさい」
そう言いながら手を引っ張ってみるが意外にも深川の力は強く、中々放れないし放そうとしない。
どうしようかと悩んでいると急に彼女は俺の手をグイっと引っ張り、油断していた俺はそのまま彼女の横に倒れ込む。
息がかかる程近くまでその可愛らしい顔が近付き、恋愛経験の無い俺は頭の中が真っ白になっていると――
「……猫田さん?」
最悪なタイミングで深川は目を覚まし、元々赤らんでいた顔を耳まで真っ赤にさせた。
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