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62話 空港
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三日後。
実家から一番近い空港へやって来た私は、待ち合わせ場所として指定された場所へ向かって歩いていた。
ここへ来る前に鬼塚社長から電話があり、誰かがこの空港へ向かって来ているらしく、十分程度で着くのだと言う。
そしてその電話があってから既に十分程度は経っていて、その誰かは到着している頃なのだろう。
その予想はしっかりと当たっていたらしく、指定されていた大きな案内板の前には猫田さんの姿があった。
何となく予想していただけの事はあって驚きはしないし、何なら誰が人を選んだのかも予想が付いている。
と、スマホと睨めっこしていた猫田さんはこちらに気付くと手を振り、私はデジャブを感じながら小走りで向かう。
「久し振りだな。怪我は大丈夫なのか?」
「はい、その日に治りました」
「す、すげえな」
顔を引きつらせる猫田さんを見て言わない方が良かったかもしれないなんて手遅れなことを考えてしまう。
私はとりあえず話を逸らそうと、何となく察してはいれど少し気になる事を尋ねる。
「そう言えば、誰が私に随伴する人を決めたんですか?」
「ああ、狐塚と傘部長だな。社長が好きに選べって言い出して、あの二人がだったら猫田じゃんとか言って、気付いたら俺になってた」
「そんな気がしました」
傘部長も共犯だったとは驚きだが、七海は絶対に何かしら関わっているのだろうとは思っていた。
と、どこか機嫌良さそうに笑った猫田さんはポケットから鳥取のパンフレットを取り出しながら。
「まあ、仕事って名目で鳥取を観光出来るんだし、俺は悪い気しないけどな」
「ちゃんと調査しないと社長に言いつけますよ?」
「働くから勘弁してな」
そう言いながら慌てた素振りでパンフレットをポケットに戻す猫田さんを見て思わず笑う。
まあ、帰りのチケットが一週間後の物だし、あやかしの事が分かったら鳥取を観光してもいいかもしれない。
置いて来た波留とミワにはお土産でも買って帰るとしよう。
すると猫田さんは腕時計に目をやり、「そろそろ行くか」と呟きながらキャリーケースの取っ手を引っ張り出す。
そんな様子を見てふと疑問が湧いた私は歩き出す猫田さんの後を追いながら尋ねる。
「もしも私のあやかしがとんでもない化け物だったらどうしますか?」
「笑うしかねえな。逆に俺が猫又とかじゃなくてヤバイ化け物だったらどうするよ」
「どうもしませんね」
「だろ?」
そう言って笑った猫田さんはのんびりと歩き出し。
何とも言えない安心感を覚えながら、私はその後に続いた。
実家から一番近い空港へやって来た私は、待ち合わせ場所として指定された場所へ向かって歩いていた。
ここへ来る前に鬼塚社長から電話があり、誰かがこの空港へ向かって来ているらしく、十分程度で着くのだと言う。
そしてその電話があってから既に十分程度は経っていて、その誰かは到着している頃なのだろう。
その予想はしっかりと当たっていたらしく、指定されていた大きな案内板の前には猫田さんの姿があった。
何となく予想していただけの事はあって驚きはしないし、何なら誰が人を選んだのかも予想が付いている。
と、スマホと睨めっこしていた猫田さんはこちらに気付くと手を振り、私はデジャブを感じながら小走りで向かう。
「久し振りだな。怪我は大丈夫なのか?」
「はい、その日に治りました」
「す、すげえな」
顔を引きつらせる猫田さんを見て言わない方が良かったかもしれないなんて手遅れなことを考えてしまう。
私はとりあえず話を逸らそうと、何となく察してはいれど少し気になる事を尋ねる。
「そう言えば、誰が私に随伴する人を決めたんですか?」
「ああ、狐塚と傘部長だな。社長が好きに選べって言い出して、あの二人がだったら猫田じゃんとか言って、気付いたら俺になってた」
「そんな気がしました」
傘部長も共犯だったとは驚きだが、七海は絶対に何かしら関わっているのだろうとは思っていた。
と、どこか機嫌良さそうに笑った猫田さんはポケットから鳥取のパンフレットを取り出しながら。
「まあ、仕事って名目で鳥取を観光出来るんだし、俺は悪い気しないけどな」
「ちゃんと調査しないと社長に言いつけますよ?」
「働くから勘弁してな」
そう言いながら慌てた素振りでパンフレットをポケットに戻す猫田さんを見て思わず笑う。
まあ、帰りのチケットが一週間後の物だし、あやかしの事が分かったら鳥取を観光してもいいかもしれない。
置いて来た波留とミワにはお土産でも買って帰るとしよう。
すると猫田さんは腕時計に目をやり、「そろそろ行くか」と呟きながらキャリーケースの取っ手を引っ張り出す。
そんな様子を見てふと疑問が湧いた私は歩き出す猫田さんの後を追いながら尋ねる。
「もしも私のあやかしがとんでもない化け物だったらどうしますか?」
「笑うしかねえな。逆に俺が猫又とかじゃなくてヤバイ化け物だったらどうするよ」
「どうもしませんね」
「だろ?」
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何とも言えない安心感を覚えながら、私はその後に続いた。
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