88 / 106
81話
しおりを挟む
「おはよう。喧嘩せずやってるか?」
「おはようございます。仲良くやってます」
パソコンに映し出された鬼塚社長に猫田さんがぺこぺこしながら言う。
それに倣って私も頭を下げて見せると、何か感じ取ったのかおかしそうに社長は笑って。
「末永くお幸せに」
「変な事言わないで下さい」
何となく馬鹿にされている気がして思わず言い返すと、ガハハと鬼らしさのある豪快な笑い声を上げる。
私たちの間に何が起きたか完全に察しているらしい反応に何か言って誤魔化そうとも考えるが、職場にバレるのも時間の関係と思い至って諦める。
と、猫田さんが緊張気味に問いを投げ掛ける。
「えーっと……緊急の用とのことでしたがどうなさいましたか?」
「そうだったそうだった。邪魔しちゃ悪いもんな」
揶揄い口調でそう言った彼は手元の書類をいくつか手に取る。
「昨日、お前たちが言ってた八岐大蛇を管理するという男から電話とFAXが入ってな。概要については色々と教えてもらった。まさか現存する神がまだいるとは驚いた」
「とても人間味のある可愛らしい神様でした。雰囲気としてはミワに似てます」
「いつか会ってみたいものだな。それはさて置き、色々と許可を貰えたから村のことを調べて来て欲しい。特に天叢雲剣についてな」
「調べると言いますと、写真に収めて剣にまつわる伝説を調べる形でよろしいですか?」
「舐め回すように撮って来てくれ。写真じゃなく動画でも構わない」
舐め回すように……という事は本物を見てみたいという事なのかもしれない。
一つ疑問が湧き出した私は小さく挙手して問いを投げ掛ける。
「あの、前から気になっていたのですが、社長は古代の伝説がお好きなんですか?」
「オタクを名乗れるくらいには好きだな。本当は俺が行きたかったくらいだ」
目に見えてしょんぼりと肩を落としたのを見て、その強面とのギャップに思わず笑ってしまう。
と、社長の手元にあったスマホが着信音を鳴らし、少し慌てた様子でこちらを向いて。
「って事で頼んだぞ! 写真なら最低でも三十枚、映像なら移ってないところが一カ所も無いくらいしっかりと撮影するんだ! 良いな!」
私たちが返事する前にぷちっと通信が切れてしまい、パソコンの画面には『通信が終了しました』と文字が出る。
少しでも映っていない箇所があったら今までにないほど怒られてしまいそうで、少し不安を覚えてしまう。
「何か、凄かったな」
「だね」
「出発の準備、するか」
「うん」
そう言えばなぜ私たちの仲が進展したと分かったのだろうと不思議に思いながら猫田さんの手を離して立ち上がり、昨日も使ったリュックに充電したモバイルバッテリーなどを詰め込む。
さて、今日もあの可愛い神様と楽しく会話するとしよう。社長のように私たちの関係を一発で見抜かれないことを願おう。
「おはようございます。仲良くやってます」
パソコンに映し出された鬼塚社長に猫田さんがぺこぺこしながら言う。
それに倣って私も頭を下げて見せると、何か感じ取ったのかおかしそうに社長は笑って。
「末永くお幸せに」
「変な事言わないで下さい」
何となく馬鹿にされている気がして思わず言い返すと、ガハハと鬼らしさのある豪快な笑い声を上げる。
私たちの間に何が起きたか完全に察しているらしい反応に何か言って誤魔化そうとも考えるが、職場にバレるのも時間の関係と思い至って諦める。
と、猫田さんが緊張気味に問いを投げ掛ける。
「えーっと……緊急の用とのことでしたがどうなさいましたか?」
「そうだったそうだった。邪魔しちゃ悪いもんな」
揶揄い口調でそう言った彼は手元の書類をいくつか手に取る。
「昨日、お前たちが言ってた八岐大蛇を管理するという男から電話とFAXが入ってな。概要については色々と教えてもらった。まさか現存する神がまだいるとは驚いた」
「とても人間味のある可愛らしい神様でした。雰囲気としてはミワに似てます」
「いつか会ってみたいものだな。それはさて置き、色々と許可を貰えたから村のことを調べて来て欲しい。特に天叢雲剣についてな」
「調べると言いますと、写真に収めて剣にまつわる伝説を調べる形でよろしいですか?」
「舐め回すように撮って来てくれ。写真じゃなく動画でも構わない」
舐め回すように……という事は本物を見てみたいという事なのかもしれない。
一つ疑問が湧き出した私は小さく挙手して問いを投げ掛ける。
「あの、前から気になっていたのですが、社長は古代の伝説がお好きなんですか?」
「オタクを名乗れるくらいには好きだな。本当は俺が行きたかったくらいだ」
目に見えてしょんぼりと肩を落としたのを見て、その強面とのギャップに思わず笑ってしまう。
と、社長の手元にあったスマホが着信音を鳴らし、少し慌てた様子でこちらを向いて。
「って事で頼んだぞ! 写真なら最低でも三十枚、映像なら移ってないところが一カ所も無いくらいしっかりと撮影するんだ! 良いな!」
私たちが返事する前にぷちっと通信が切れてしまい、パソコンの画面には『通信が終了しました』と文字が出る。
少しでも映っていない箇所があったら今までにないほど怒られてしまいそうで、少し不安を覚えてしまう。
「何か、凄かったな」
「だね」
「出発の準備、するか」
「うん」
そう言えばなぜ私たちの仲が進展したと分かったのだろうと不思議に思いながら猫田さんの手を離して立ち上がり、昨日も使ったリュックに充電したモバイルバッテリーなどを詰め込む。
さて、今日もあの可愛い神様と楽しく会話するとしよう。社長のように私たちの関係を一発で見抜かれないことを願おう。
26
あなたにおすすめの小説
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる