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83話 復帰
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「一週間ぶりだな、会社来るの」
「私は二週間振りだけどね」
そんな会話をしながら中へ入ると、ロビーは特に変わった様子が無く、ミワが鳩山に尻餅を突かせた時に座っていた四角いカラフルな椅子もそのままだ。
あの時に置いて行かれたスーツの上着はどうなったのだろうと少し気になりつつエレベーターに乗り込む。
すると駆け足でやって来る人影が見えて、『開く』のボタンを押して待ってあげると、乗り込んで来たのは七海だった。
改めて見るとどこか狐らしさのある彼女は、私たちを見るとにんまり笑って。
「どう? 告白できた?」
「出来た出来た。だからそれ以上喋るな」
「ひっどーい。桂里奈ちゃんと一緒に行くって決まった時めちゃめちゃ喜んでたのにー」
「うっせえぞ化け狐」
今にも取っ組み合いを始めそうな二人の間に入って何とか落ち着かせていると、エレベーターは目的の階の二つ下の階層に止まり、扉が開くと鬼塚社長の姿が露となった。
三人揃って姿勢を正すと彼はガハハと相変わらず豪快な笑い声を上げて。
「夫婦生活は上手くいってるか?」
「は、はい、上手くいってます」
焦ってしまったようで、猫田さんはまさかの肯定で返してしまった。
七海が獲物を見つけたような顔をしているのを見て、今後は更に赤面させられることになるんだろうなと半ば諦めていると、社長は私たちの肩に手を置いて。
「式を挙げる時は呼んでくれ」
「よ、喜んで」
猫田さんも猫田さんでなぜ私を赤面させるようなことを言うのだろうか。
思わずジト目を向けるが緊張しているためか気付く様子はなく、目的の階層に到着すると彼は一礼して私の手を取りエレベーターから降りた。
「夫婦って否定しなかったね?」
「……まあ、夫婦みたいなもんだろ」
苦し紛れな反論ではあるが私には効果抜群で、反論の言葉が出せない。
するとニッコニコな笑みを浮かべた七海が先に自分のデスクの方へ足早に歩いて行きながら。
「お邪魔になりそうだから先行ってるね。式挙げる時は招待よろしく!」
「うっさい」
うひひと気持ちの悪い笑みを浮かべながら去って行った七海にため息を吐いていると、猫田さんは照れたように顔を逸らしながら。
「まあ、結婚とかもちょっと考えておくか」
「まだ付き合い始めて一週間だよね?」
「両想いになった時から数えれば一ヶ月以上になるだろ」
「ま、まあ、そうだけど……」
今思い返すだけでも恥ずかしいあの夜の記憶が甦り、自然と目を逸らす。
と、エレベーターの動き出す音が聞こえ、誰か来てしまうかもしれないと考えて。
「行こっか。どうせ席は隣なんだし」
「そ、そうだな」
オドオドしている猫田さんをちょっと懐かしく感じながら、懐かしの自分のデスクに向かうと、意外にもほとんど揃っておらず、空席が寂しい空気を漂わせていた。
どうしたのだろうと不思議に思いながら席に付くと、七海と話していた傘部長が私たちの元へやってきて。
「矢壁くんと木綿谷くんは今あやかしの調査に出ていマス。でもやることは変わらないのでいつも通りやりまショウ」
「分かりました」
語尾の発音が特徴的なのは変わっておらず、どうしてこんな口調になってしまったのだろうと疑問が再発する。
確か猫田さんが教えてくれたような気がするが、何だったのか全く思い出せない。
記憶を掘り返している間に部長は去って行ってしまい、私はもやもやしながらパソコンに向き合う。
さて、久々の仕事だ。腹を空かして待っているミワのためにも気持ちを切り替えて頑張るとしよう。
「私は二週間振りだけどね」
そんな会話をしながら中へ入ると、ロビーは特に変わった様子が無く、ミワが鳩山に尻餅を突かせた時に座っていた四角いカラフルな椅子もそのままだ。
あの時に置いて行かれたスーツの上着はどうなったのだろうと少し気になりつつエレベーターに乗り込む。
すると駆け足でやって来る人影が見えて、『開く』のボタンを押して待ってあげると、乗り込んで来たのは七海だった。
改めて見るとどこか狐らしさのある彼女は、私たちを見るとにんまり笑って。
「どう? 告白できた?」
「出来た出来た。だからそれ以上喋るな」
「ひっどーい。桂里奈ちゃんと一緒に行くって決まった時めちゃめちゃ喜んでたのにー」
「うっせえぞ化け狐」
今にも取っ組み合いを始めそうな二人の間に入って何とか落ち着かせていると、エレベーターは目的の階の二つ下の階層に止まり、扉が開くと鬼塚社長の姿が露となった。
三人揃って姿勢を正すと彼はガハハと相変わらず豪快な笑い声を上げて。
「夫婦生活は上手くいってるか?」
「は、はい、上手くいってます」
焦ってしまったようで、猫田さんはまさかの肯定で返してしまった。
七海が獲物を見つけたような顔をしているのを見て、今後は更に赤面させられることになるんだろうなと半ば諦めていると、社長は私たちの肩に手を置いて。
「式を挙げる時は呼んでくれ」
「よ、喜んで」
猫田さんも猫田さんでなぜ私を赤面させるようなことを言うのだろうか。
思わずジト目を向けるが緊張しているためか気付く様子はなく、目的の階層に到着すると彼は一礼して私の手を取りエレベーターから降りた。
「夫婦って否定しなかったね?」
「……まあ、夫婦みたいなもんだろ」
苦し紛れな反論ではあるが私には効果抜群で、反論の言葉が出せない。
するとニッコニコな笑みを浮かべた七海が先に自分のデスクの方へ足早に歩いて行きながら。
「お邪魔になりそうだから先行ってるね。式挙げる時は招待よろしく!」
「うっさい」
うひひと気持ちの悪い笑みを浮かべながら去って行った七海にため息を吐いていると、猫田さんは照れたように顔を逸らしながら。
「まあ、結婚とかもちょっと考えておくか」
「まだ付き合い始めて一週間だよね?」
「両想いになった時から数えれば一ヶ月以上になるだろ」
「ま、まあ、そうだけど……」
今思い返すだけでも恥ずかしいあの夜の記憶が甦り、自然と目を逸らす。
と、エレベーターの動き出す音が聞こえ、誰か来てしまうかもしれないと考えて。
「行こっか。どうせ席は隣なんだし」
「そ、そうだな」
オドオドしている猫田さんをちょっと懐かしく感じながら、懐かしの自分のデスクに向かうと、意外にもほとんど揃っておらず、空席が寂しい空気を漂わせていた。
どうしたのだろうと不思議に思いながら席に付くと、七海と話していた傘部長が私たちの元へやってきて。
「矢壁くんと木綿谷くんは今あやかしの調査に出ていマス。でもやることは変わらないのでいつも通りやりまショウ」
「分かりました」
語尾の発音が特徴的なのは変わっておらず、どうしてこんな口調になってしまったのだろうと疑問が再発する。
確か猫田さんが教えてくれたような気がするが、何だったのか全く思い出せない。
記憶を掘り返している間に部長は去って行ってしまい、私はもやもやしながらパソコンに向き合う。
さて、久々の仕事だ。腹を空かして待っているミワのためにも気持ちを切り替えて頑張るとしよう。
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