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窓から差し込む日の光で目が覚めた。
昨日は寝る少し前までずっとあの本を読み耽っていたのもあって、まだ少し寝足りないが、時計の針は昼前を指している。
これ以上体内時計が狂ってしまう前にとっとと起きて朝ご飯を食べて、今日も呪いの解き方を探すとしよう。
そう考えながら体をぐいっと伸ばしてベッドから起き上がると、扉がコンコンとノックされた。
「フローラです。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
声を掛けるのと同時にガチャリと音を立てて扉は開かれ、昨日の夕食時に見かけた幼い顔立ちのメイドが姿を見せた。
彼女はまだ新米なのかまだ慣れていないのが分かる一礼をすると。
「昼食がそろそろ準備出来ますが、召し上がりますか?」
「食べます」
部屋の外から肉の焼ける良い匂いが漂って来て、私は思わず即答した。
やはりこんな時間に起きてしまったのもあって空腹だったが、この匂いによって更に空腹が刺激され、早く何か食べたいという本能的な欲が湧き上がる。
「で、では、こちらへどうぞ」
少し怯えたような雰囲気を見せながら廊下の方を手で指し示し、歩き出したフローラの後を追って部屋を出る。
それにしても、この良い匂いは一体何の料理を作っているのだろうか。ステーキでも焼いているだけか、それとも何かの肉が入ったシチューか。
期待を胸にフローラと共にリビングへ辿り着くと、昨日と同じ席に座って本を読んでいるパウルの姿が目に入って。
「おはよう」
「ああ、おはよう。随分な寝坊だけど、一体どうしたんだ?」
「あの本をずっと読んでたら凄い時間になっちゃったの」
「なるほどね。それなら、ちょっと面白い話をしてあげよう」
そう言って本をパタンと閉じた彼はゆっくりと話を始める。
「この屋敷、買い取る前は商人の一家が住んでたんだけど――」
「ま、待って。怪談話しようとしてるよね」
「そうだけど、何か文句ある?」
「逆に無いと思うのかなあ?」
私が怖い話を苦手としているのは知っている筈なのに、悪いことをしているという意識が一切無いらしい。
しかし、もう既にこの屋敷には何か怖い話がある事は分かってしまったし、これでは夜中に一人でトイレに行く事は出来なくなりそうだ。
思わず溜息を吐いていると、キッチンの方から美味しそうなステーキが運ばれて来たことで忘れかけていた空腹が再燃し、腹が間抜けな音を漏らす。
するとパウルは本を仕舞いながらこちらを見て。
「ここの料理人、肉を焼くのだけは得意なんだ。期待しておきな」
「本当? それじゃあ、期待してるね」
起きて早々に脂物というのは健康的では無いが、今日くらいは大丈夫だろう。
私は自分に言い訳をするようにそんな事を考えながら、テーブルに並べられたステーキに、早速手を付けた。
昨日は寝る少し前までずっとあの本を読み耽っていたのもあって、まだ少し寝足りないが、時計の針は昼前を指している。
これ以上体内時計が狂ってしまう前にとっとと起きて朝ご飯を食べて、今日も呪いの解き方を探すとしよう。
そう考えながら体をぐいっと伸ばしてベッドから起き上がると、扉がコンコンとノックされた。
「フローラです。入ってもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
声を掛けるのと同時にガチャリと音を立てて扉は開かれ、昨日の夕食時に見かけた幼い顔立ちのメイドが姿を見せた。
彼女はまだ新米なのかまだ慣れていないのが分かる一礼をすると。
「昼食がそろそろ準備出来ますが、召し上がりますか?」
「食べます」
部屋の外から肉の焼ける良い匂いが漂って来て、私は思わず即答した。
やはりこんな時間に起きてしまったのもあって空腹だったが、この匂いによって更に空腹が刺激され、早く何か食べたいという本能的な欲が湧き上がる。
「で、では、こちらへどうぞ」
少し怯えたような雰囲気を見せながら廊下の方を手で指し示し、歩き出したフローラの後を追って部屋を出る。
それにしても、この良い匂いは一体何の料理を作っているのだろうか。ステーキでも焼いているだけか、それとも何かの肉が入ったシチューか。
期待を胸にフローラと共にリビングへ辿り着くと、昨日と同じ席に座って本を読んでいるパウルの姿が目に入って。
「おはよう」
「ああ、おはよう。随分な寝坊だけど、一体どうしたんだ?」
「あの本をずっと読んでたら凄い時間になっちゃったの」
「なるほどね。それなら、ちょっと面白い話をしてあげよう」
そう言って本をパタンと閉じた彼はゆっくりと話を始める。
「この屋敷、買い取る前は商人の一家が住んでたんだけど――」
「ま、待って。怪談話しようとしてるよね」
「そうだけど、何か文句ある?」
「逆に無いと思うのかなあ?」
私が怖い話を苦手としているのは知っている筈なのに、悪いことをしているという意識が一切無いらしい。
しかし、もう既にこの屋敷には何か怖い話がある事は分かってしまったし、これでは夜中に一人でトイレに行く事は出来なくなりそうだ。
思わず溜息を吐いていると、キッチンの方から美味しそうなステーキが運ばれて来たことで忘れかけていた空腹が再燃し、腹が間抜けな音を漏らす。
するとパウルは本を仕舞いながらこちらを見て。
「ここの料理人、肉を焼くのだけは得意なんだ。期待しておきな」
「本当? それじゃあ、期待してるね」
起きて早々に脂物というのは健康的では無いが、今日くらいは大丈夫だろう。
私は自分に言い訳をするようにそんな事を考えながら、テーブルに並べられたステーキに、早速手を付けた。
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