あれだけ邪魔者扱いして、呪いが解かれたら言い寄るんですね

星野真弓

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 まだ眠そうにしているラナを抱っこしてリビングに向かうと、ソファに腰掛けてコーヒーを飲むパウルの姿があった。
 昨日のことが脳裏を過った私は軽く頭を振って無理矢理忘れさせ、対面に位置するソファへ腰掛ける。

「おはよう。悪魔は利口にしてたか?」

「うん、ちゃんと撫でさせてくれたよ」

 言いながら背中を撫でるとラナは気持ち良さそうに目を瞑り、尻尾をぷらぷらと垂らしながら動かす。
 すっかり本物の猫と大して変わらない程度に落ち着いたその様子を見て、パウルはコーヒーをもう一口飲むと面白そうに笑う。

「へえ、ちゃんと猫じゃん。ネズミ捕りの方も期待しておこうか」

「ま、任せて下さい。この屋敷に忍び込んでいるネズミたちは全て絶滅させてみせます」

 まだパウルの事は恐いらしく、怯えたように尻尾を後ろ脚の間に隠しながら答える。
 だがその気持ちは分からないことは無い。情報を吐かせるために仕方なくするのではなく、明らかに好奇心から解剖をしようとしていたのだから、ここまで恐がるのも納得出来る。
 と、パウルは空になったコーヒーカップをテーブルに置いて私と目を合わせる。

「この前は曖昧に話が終わっちゃったけど、助手として働いてくれるかい?」

「うん。役に立てるかは分からないけど、出来ることなら手伝いたいなって」

「それは良かった」

 そう言って笑ったパウルはテーブルの引き出しから書類を取り出し、それを私に差し出す。

「今日の午後に賢者で集まって成果を発表することになっているんだ。アンナには見学してもらいたいし、新しい賢者として紹介もしたいから来てな」

「待って、私ってただの助手じゃないの? まだ賢者を名乗れるほどじゃないと思うんだけど……」

「へーきへーき、いけるいける」

 パウルがこの返事をする時は基本的に何も考えていない。
 それをよく理解している私にとってはただただ不安なのだが、助手を引き受けた以上は従うしかなさそうだ。
 と、そんな不安を掻き消すような良い匂いが漂って来て、食卓の方に目を向ければ美味しそうなサンドウィッチが並べられようとしていた。
 空腹から頭が働かなくなって来た私はラナを抱っこしてパウルと共に食卓へと移動する。

 食事と睡眠は何よりも重要な要素なのだから、細かい事を考える前に腹を満たすとしよう。
 私は半ば自分に言い聞かせるように考えながら、サンドウィッチを手に取った。
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