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 ラナを抱っこしたままリビングへと向かう。
 あの後はパウルが任せて欲しいと言うからそのまま寝たため、襲撃者たちがどうなったのかを知らない。
 モルモットがどうたらと話していたし、何かの実験に使うつもりなのだろうが……生きたまま解剖するようなことをしていそうで少し怖い。
 
 そんな不安に駆られながらリビングに入ると、昨日と同じようにゆっくりとコーヒーを飲んでいて、私は少しホッとする。
 対面のソファに腰掛けパウルと目を合わせると、昨日は無かった隈がある事に気付き、何となく嫌な予感がしながら尋ねる。

「ね、ねえ、昨日の襲撃して来た人たちってどうしたの?」

「モルモットの役目を果たしてくれたよ」

 まさかの返答に私は硬直し、膝上で寛いでいたラナもビクッと体を震わせて縮こまる。
 モルモットの役目を果たしたという事は、何かしらの実験台にされてしまったというわけで……。
 私は覚悟を決めてパウルに問いかける。

「どんな実験をしたの?」

「脳を取り出す実験だ」

 ニッコリと笑みを浮かべて恐ろしい事を言い放った彼に青褪めていると、メイドがトレイにティーカップを乗せてやって来て。

「アンナ様をからかうのはそのくらいにして下さい」

「つまり嘘ってこと?」

「当たり前だろ」

 それはそれは楽しそうに笑うパウルに私はイラっとしながらメイドからティーカップを受け取り口を付ける。
 相変わらず美味しい紅茶の味が口内に広がるが、目の前の性格が悪魔よりも悪い男のせいでその味を全く楽しめない。

「それで、あの人たちはどうしたの?」

「真実しか話せなくなる魔法を掛けて情報を吐かせてから衛兵に渡したよ。収穫は沢山あったし、あのクズ男がどうなるか楽しみだね」

「それは私も楽しみだけど……真実しか話せなくなる魔法ってまだ研究中だったよね?」

「モルモットの役目を果たしたって言ったろ?」

 なるほど、そこだけ本当だったということか。
 ちゃんと有意義に活用していて少しだけ安心した。

「それにしても、本当に俺がそんな実験すると思ったのか?」

「こんな可愛い生き物を解剖しようとしてたし、そのくらいするのかなって」

「悪魔の体内がどうなってるのか興味があったんだから仕方ないだろ?」

 少し不満気にそんな事を言った彼はコーヒーをぐびっと飲み干すと、少し真剣な顔をしてこちらに向き直る。
 大切な話をするのだと察して姿勢を正し、パウルと目を合わせると。

「尋問したから分かったんだけど、あの下衆野郎は意地でもアンナを奪おうとしてるみたいなんだよ。ってことで、悪いけどしばらく外出禁止ね」

「庭もダメ?」

「ラナが一緒なら良いよ」

 それなら日の光も浴びれるし、運動も出来るからそこまで問題は無さそうだ。
 呑気にそんな事を考えながら紅茶を飲み干した私は、取り合えず寛いでいるラナを撫でて時間を潰す。

 ――招かれざる客が来ようとしているなんて知りもせず。
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