「呪いの子」と蔑まれてきた私と婚約者の幼馴染、一体何が違うの?

きんもくせい

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第9話・涙

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「な、に……してるの、ですか。2人とも」

絞り出した声は震えていた。
焦った表情で振り向いた2人も、グレースの震える体と声を見て、すぐに身体の強張りを解いた。

「なにって、見てわかんない?」

アマンダが、挑発するように微笑んで、リアムの首に抱きついた。それが答えであることを悟ったグレースの心臓が、にわかに嫌な音を刻む。

「いつから、こんなこと……」
「ずぅーーっとよ。ほんと鈍いのね、グレース様って」

途切れ途切れになるグレーズの声を遮り、アマンダが嘲笑まじりに答えた。

「そんなッ………」
「あーあ。バレたかあ。まあ、遅かれ早かれこうなっていただろうね」

悪びれもせず、むしろどこまでもグレースを見下す態度を取る2人に、自分の心が深い絶望の淵へと沈んでいくのがわかった。
人として、貴族として、尊重されたことなんて数えるくらいしか無かった。表面上は取り繕っていても、いつだって自分を見る無数の目には嫌悪が湧いていた。
2人だってそうだった。知っていた。抜き身の悪意はいつだってグレースを傷つけるだけで、幸せな思い出なんて一つもない。

この身に呪いがあると言うだけで。
醜い皮膚を持つと言うだけで。

こんなにも、残酷な仕打ちを受けなくてはならないのか。

気がつけば、瞳から涙が溢れていた。昔から、2人にどんな無神経なことを言われても流したことは無かったのに、制御できずにボロボロと溢れていく。

「え、泣いてる?やだ、汚い」
「もしかして、僕のこと好きだった?勘弁してくれ!」
「うふふ。可哀想ぉ」
「グレース、きみも知ってるだろ?僕は美しい者しか好きじゃ無いんだよ、残念ながらね」

好きなんかじゃ無かった。
むしろ嫌いだった。
それでも、結婚する相手だと思っていた。政略的でもなんでも、幼馴染ではあったのだ。望んでいなくても、ずっとそばにいた2人だった。

悔しくて、惨めで、情けなくて、グレースは体が崩れていくような憤慨の中、涙を流し続けた。

「いい機会だから、きみからもご両親に進言してくれ。私はリアム様との婚約を解消しますって。マッタク、君の領地が広いせいで、ウチは君の家の言いなりだ。うんざりだよ」
「そうよ、冤罪ふっかけられなかっただけでも感謝して?」
「君だってこれ以上惨めな思いはしたく無いだろ?まあ、僕の他に貰い手もいないだろうけど、そこは立派な魔法師にでもなってさ。とにかく、婚約解消は君から申し出てくれよ」
「お願いね、グレース様」

さめざめと泣くグレースに、一方的に2人は捲し立てた。どこまでも自分勝手な暴論に、もう怒る気力さえ湧かない。それどころか、自分をこれ以上傷つけないためには、グレースから両親に婚約解消を提案するのが1番の方法なのではないか、とまで考え始めていた。
言いなりになんてなりたく無いのに、頭は穏便な逃げ道を探そうと必死だった。

「あ!リアム、次の授業に遅れちゃう」
「おっと、もうそんな時間?君といると、時間を忘れてしまうな」
「もう、リアムったら!」

結局、謝罪の一言も、言い訳すらないまま、2人は空き教室を後にした。
残ったのは、ズタボロに傷つけられたグレース、ただ1人であった。

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