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第17話・不満爆発
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「よォ、お前俺が分かるか?」
「し、知らない……知らない…っ」
頬をぶたれたため、顔の右側を真っ赤にしてナタリーは泣きじゃくっている。もう勘弁してくれ、とでも言うようにかぶりを振る様子は幼い子供のようで、ソフィアはその姿が少し哀れになった。可哀想と言えるほどの情はないが、もう良いのでは無いかという感情まで生まれくる。しかしそれはここまで準備してきたレオン達の努力を踏み躙る気持ちであることを理解していたので、ただ何も言わずに諦観の姿勢を取ることにした。
レオンに遮られ、取り押さえられているナタリーの父親は今にも飛びかかって娘を殴り飛ばしそうな程興奮している。母親はそんな夫を見て変わらず泣いていた。ソフィアの両親は、ただ動向を見守ることしかできないようで、先ほどから一言も言葉を発さない。
まるで舞台を見ているかのような、妙な現実感の無さだった。ソフィアにとっての山場が終わってしまったから、というのもあるのだろうか。何か自分ごとには思えなくて、ぼんやりとその光景を見ることしかできない。
「知らない?そんな訳ねぇだろ、俺とお前はクラスメイトじゃねえか」
「あ…そ、れはそうだけど……」
「本当にホラ吹きな女だな。今までどうやって生きて来たんだ?」
「…………っ」
「春くらいからだな。お前がベタベタ付き纏うようになってきたのは、俺が国の大きなコンクールに入賞した頃のことだった」
「そ、そんなこと」
「黙ってろ。俺の恋人を押し退けて、手伝いとも言えねえ却って邪魔になるような器用な雑事をこなしてくれて、どうもありがとうな。思い出は数え切れねえよ。
____当時使っていた油彩絵の具は鮮度が命だった。それなのに、お前は事前にパレットに全色出した挙句、使い終わった道具を断りもなく洗浄し、挙句俺の書いた絵を一枚盗んだな」
「ナタリー!!!!」
「盗んでなんかない!!」
父親がナタリーの名前叫ぶと、ナタリー本人も泣き叫んでそう言った。
「お前からしたらそうなんだろうな?あれは俺の恋人にやったものの筈だった。ナンテンの花を描いたポストカード。花言葉は、『私の愛は増すばかり』!お前は忍ぶ様子も無く、それを俺に貰ったものだとクラスメイトに自慢して回った。当然俺の恋人は傷ついた。クラスメイトたちは俺を二股野郎だと言って良い扱いをしてくれたさ。おかげで、コンクールどころじゃない。在学中の受賞歴が後の進路にどんなに影響を齎すのか、分かっているのか?お前は俺の人生を殺したようなものだ!!」
「ヒック…そんな……そんなつもりなかったぁ……っ」
「お前には画材代のほかに、それに対しての慰謝料も請求する。あの黒髪の男はどうか知らんが、あの女からもその請求が来るだろうな。応じないなら、俺たちはどんな手段にだって出る」
「待って…やめて!そんなことしたら、私…っ」
ナタリーの声を聞かず、赤髪の男は去っていった。残された彼女は悲痛に泣くばかりで、自分のした行いを認めることも、それに対して謝ることもしない。まるで被害者のような出立だった。
「さあ、ナタリー。それに、お父様。お母様。兄様。最後は僕たちの家の使用人ですよ」
ズラリと並んだ見覚えのある顔に、「ああ、なんてこと……」と母親が顔を覆いながら呟いた。
「し、知らない……知らない…っ」
頬をぶたれたため、顔の右側を真っ赤にしてナタリーは泣きじゃくっている。もう勘弁してくれ、とでも言うようにかぶりを振る様子は幼い子供のようで、ソフィアはその姿が少し哀れになった。可哀想と言えるほどの情はないが、もう良いのでは無いかという感情まで生まれくる。しかしそれはここまで準備してきたレオン達の努力を踏み躙る気持ちであることを理解していたので、ただ何も言わずに諦観の姿勢を取ることにした。
レオンに遮られ、取り押さえられているナタリーの父親は今にも飛びかかって娘を殴り飛ばしそうな程興奮している。母親はそんな夫を見て変わらず泣いていた。ソフィアの両親は、ただ動向を見守ることしかできないようで、先ほどから一言も言葉を発さない。
まるで舞台を見ているかのような、妙な現実感の無さだった。ソフィアにとっての山場が終わってしまったから、というのもあるのだろうか。何か自分ごとには思えなくて、ぼんやりとその光景を見ることしかできない。
「知らない?そんな訳ねぇだろ、俺とお前はクラスメイトじゃねえか」
「あ…そ、れはそうだけど……」
「本当にホラ吹きな女だな。今までどうやって生きて来たんだ?」
「…………っ」
「春くらいからだな。お前がベタベタ付き纏うようになってきたのは、俺が国の大きなコンクールに入賞した頃のことだった」
「そ、そんなこと」
「黙ってろ。俺の恋人を押し退けて、手伝いとも言えねえ却って邪魔になるような器用な雑事をこなしてくれて、どうもありがとうな。思い出は数え切れねえよ。
____当時使っていた油彩絵の具は鮮度が命だった。それなのに、お前は事前にパレットに全色出した挙句、使い終わった道具を断りもなく洗浄し、挙句俺の書いた絵を一枚盗んだな」
「ナタリー!!!!」
「盗んでなんかない!!」
父親がナタリーの名前叫ぶと、ナタリー本人も泣き叫んでそう言った。
「お前からしたらそうなんだろうな?あれは俺の恋人にやったものの筈だった。ナンテンの花を描いたポストカード。花言葉は、『私の愛は増すばかり』!お前は忍ぶ様子も無く、それを俺に貰ったものだとクラスメイトに自慢して回った。当然俺の恋人は傷ついた。クラスメイトたちは俺を二股野郎だと言って良い扱いをしてくれたさ。おかげで、コンクールどころじゃない。在学中の受賞歴が後の進路にどんなに影響を齎すのか、分かっているのか?お前は俺の人生を殺したようなものだ!!」
「ヒック…そんな……そんなつもりなかったぁ……っ」
「お前には画材代のほかに、それに対しての慰謝料も請求する。あの黒髪の男はどうか知らんが、あの女からもその請求が来るだろうな。応じないなら、俺たちはどんな手段にだって出る」
「待って…やめて!そんなことしたら、私…っ」
ナタリーの声を聞かず、赤髪の男は去っていった。残された彼女は悲痛に泣くばかりで、自分のした行いを認めることも、それに対して謝ることもしない。まるで被害者のような出立だった。
「さあ、ナタリー。それに、お父様。お母様。兄様。最後は僕たちの家の使用人ですよ」
ズラリと並んだ見覚えのある顔に、「ああ、なんてこと……」と母親が顔を覆いながら呟いた。
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