兄のお嫁さんに嫌がらせをされるので、全てを暴露しようと思います

きんもくせい

文字の大きさ
18 / 53

第18話・使用人達も

しおりを挟む
「まずは私から」 

そう言って前に出て来たのは、掃除婦長のエリーだった。

「奥様方は、ナタリー様が雑事をこなしていることをよく褒めていらっしゃいましたね。
例えば、使用人が下げるべき食器を洗い場までわざわざ持って来てくださったり、花に水やりをしたり、シーツの交換をしたり……。ナタリー様がうっかり割られた食器類は計22。それを片付けるのは当然他の業務がある召使達ですし、季節によって水やりの仕方を変えなければならない花を水浸しにし、景観を損なって頂いたりもしました。シーツに至っては運ぶ際に頭まで積み上がるほど一気にお持ちになられ、ファンデーションや口紅などの余計な汚れを付着させてくれました。よいしょよいしょと言いながらシーツを運ぶナタリー様を見た奥様方は、その様子に随分感心してらっしゃいましたね」
「そ、それは……」
「………っ、ぅう…」
「私達がどんなに結構ですとお伝えしても、ナタリー様はそれらを辞めず、私達は最近ではやらなくても良い業務ばかりをやっています。その上奥様達ご家族に関わらないような雑事は一切なさいません。賃上げもなく過度の労働を強いられ、掃除婦達は疲弊しておりますわ」

寄り添い合う父と母が、互いを慰めるようにより肩を窄めた。

「……………私達は本当に、何も分かっていなかったのだな」

「それだけではありません!」

声のした方に目を向けると、そこにはまだ年若い執事達が揃っていた。心なしか眉を釣り上げた不機嫌そうな様子は、普段ならば決して見ることの無い姿である。

「ナタリー様はアルフレッド様がいるにも関わらず、若い執事を執拗に部屋に入れたがり、寝所の共寝を提案されたこともございます」
「勿論皆断っておりましたが、ナタリー様のお立場を考えれば強く反発できるわけもありません。何度断っても業務を妨げられ、そのような行いをされた者は精神的な疲弊が溜まってきます」
「しかも、ナタリー様は特に年若い連中に性的な揶揄や下品な言動を見せ、一部は本当に参っております」

「私達からも宜しいですか?」

まだあるのか、と言わんばかりの顔で父が振り返った。疲労感の滲んだ顔はなんだかこの短時間だけで何歳も歳を取ったような老け具合であり、それについては母も同様である。

控えめに手を上げたのは庶民出身の下級メイド達であった。
前に出て来たのは茶色い髪のモラナで、彼女はよくソフィアの髪結をしてくれる娘だ。

「ナタリー様は、私達がやるような日陰者の業務に支障をきたす事は無いのですが、その代わりと言って良いのか差別的な発言や態度が本当に酷いのです」
「私達のことを動物か何かと思っておいでなのか、とてもお耳には入れられないようなことも平気で仰います」
「それに私達、何度かナタリー様がソフィア様の部屋に勝手に入っているのも見ています」
「ソフィア様に水をわざとかけたところを見た庭師もおります!」

他よりも人数が多いためか、次から次へと繋ぐように言葉が上がって来た。
見ている人がいるとは思わなかった、というよりも、貴族特有の価値観から使用人をオブジェか何かだと思っているナタリーやソフィアは、口無しの彼らがこうして告発に参加して来たことがまず意外だった。
ナタリーはそれに対する驕りもあったのだろう。どうせ何も言えないと思って、随分好き勝手したようだった。

「なぜそれをもっと早く私に報告しなかったのだ…?」
「旦那様や奥方様には、何度かそれとなくお伝えしております。ナタリー様のお心遣いはありがたいものですが、却って業務が滞ることも多く遠慮していただきたい、と」

掃除婦長は毅然とした態度でそう言ったが、他の使用人は違うようだった。
「報告なんてできるはずもありません!オシドリ夫婦のように仲睦まじいお二人を引き裂く下賤者として解雇になる恐れもあるし、最近まで何人にも粉をかけているとは知りませんでしたから、余計に言えませんでした」
「私達も勿論そうです。下級メイドはそもそも旦那様と会う機会がございませんし、仮にお伝えしたところで信じてくださる可能性よりも無礼者と断じられる危険が大きいのに、せっかくの職を捨ててまでの発言には勇気がいりますわ」
「そんな事するわけが、」

「無いと言うのですか?お父様」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

【完結】婚約者に忘れられていた私

稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」  「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」  私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。  エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。  ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。  私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。  あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?    まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?  誰?  あれ?  せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?  もうあなたなんてポイよポイッ。  ※ゆる~い設定です。  ※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。  ※視点が一話一話変わる場面もあります。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。 眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。 侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。 ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。 彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。

婚約破棄は別にいいですけど、優秀な姉と無能な妹なんて噂、本気で信じてるんですか?

リオール
恋愛
侯爵家の執務を汗水流してこなしていた私──バルバラ。 だがある日突然、婚約者に婚約破棄を告げられ、父に次期当主は姉だと宣言され。出て行けと言われるのだった。 世間では姉が優秀、妹は駄目だと思われてるようですが、だから何? せいぜい束の間の贅沢を楽しめばいいです。 貴方達が遊んでる間に、私は──侯爵家、乗っ取らせていただきます! ===== いつもの勢いで書いた小説です。 前作とは逆に妹が主人公。優秀では無いけど努力する人。 妹、頑張ります! ※全41話完結。短編としておきながら読みの甘さが露呈…

【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?

つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。 彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。 次の婚約者は恋人であるアリス。 アリスはキャサリンの義妹。 愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。 同じ高位貴族。 少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。 八番目の教育係も辞めていく。 王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。 だが、エドワードは知らなかった事がある。 彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。 他サイトにも公開中。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

処理中です...