アホと魔女と変態と (異世界ニャンだフルlife)

影虎

文字の大きさ
15 / 53
二章 古代からの侵入者

古代からの侵入者 6

しおりを挟む
「ふぁ、きゃ……、ぎょえぇぇぇーーー!!」
 うつらうつらと船を漕いでいたリディーは、その情けない叫び声で即座に目を覚まし、ベストの裏に隠していたレーザーガンを手にして辺りをグルッと見回した。
「な、な、な、何故私は服を着ているんだ!?」
 その呟きが聞こえた方に目を向けて見ると、先ほど彼女がやっとの思いで服を着せた男が大急ぎで服を脱ぎ捨て「あぁぁ! 女神様!」と両手をあげて天を仰いでいた。
「私は自分の預かり知らぬ間にとは言え、あなた様の教えを守らず服を着てしまいました! 何卒お許し下さい!!」
 両の膝を地面につけた男は、掌を合わせ涙を流しながら天に懇願していた。
「ちょっ、ちょっちょっちょっ!! おまぁ!!」
 リディーは男のいきなりの行為に赤面し、両手で顔を隠して言葉にならない声を叫んだ。
「な、な、な、何ですか!? あなたは!?」
「そ、そ、そ、そ、それ、は、こっちの台詞よ!!」
 彼女の声を聞いた男は立ち上がり声を裏返しながらリディーに迫って来たので、彼女は思わず右の前蹴りを男にお見舞いした。
「ほぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 見事に股間を蹴りあげられた男は情けない悲鳴をあげて股間を押さえながらその場に倒れた。
「ほあぅぅ……、ほあぅ……」
 口を『ほ』の形で荒い呼吸をしながら男がプルプル震えているのを見て、リディーは銃を突き付け「殺してやる!」と叫んだ。
「ま、ま、ま、ま、ま、待て待て待て待て待て!!」
 男は瞳に涙を浮かべながらそのままの体勢で片手を掲げ彼女を止める。
「わ、わ、わ、わ、わ、私は怪しい者ではない!」
 バシュン! と音を立てて銃から青い光の筋が発射され、男の顔の横の地面に穴を開けた。
「どの口が『怪しくない!』なんてほざくのよ!!」
「ま、ま、ま、ま、待て、待て、待て、待ってくれ! 待ってくれ! 待ってくれ! は、は、は、は、は、話せば、話せば分かる! はなはなはなはな話せば、分かるんだ!」
「分かるか!! この変態!!」
 いくらデザインチャイルドで常人よりも優れた身体能力を持っているとはいえ、恥ずかしさのあまり顔を赤らめ横を向いたまま銃を乱射したら、当たるものも当たらない。
「はわわわわわ……」
 顔を両腕で防ぐ男の横を青白い筋が幾つも通ってはいくが、素肌を少し焦げ付かせるだけだった。
 カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……。
 銃のエネルギーが切れ引き金を引く音だけが鳴り響く。
「は、は、は、は、は、は、はなはなはなはなはなはな話しを、話しを、話しを聞いて、くれ!! わたわたわたわたわたわた私は私は私は私は……」
 壊れた人形のように呂律が回らなくなった男を尻目に、リディーは銃のバッテリーを抜き取りベストの裏から新しい物を取り出し銃に挿入した。
「次は外さっ!!」
 照準を定めるために前を向いたら、思わず一物を見てしまった。
「いぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「おぉぉぉぉぉたすけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
 リディーはエネルギーが切れるまでまた銃を乱射し、男はミノムシのように縮こまってプルプル震えていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
 肩で息をしながらリディーは男の生存を横目で確かめ、男も自分の身体を抱いて無事を確かめた。
「な、な、な、な、何で!? 何で何で何で何で何で!?」
「わあぁぁぁぁぁ! 待て待て待て待て待て待て待て!!」
 カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……。
「はぁぁぁぁなしを! 話しを、話しを聞いてくれ!」
 興奮のピークを越えたリディーは銃を下ろし横目で睨み付けながら「で!?」と強い口調で語りかけた。
「わたわたわたわた私はかみかみかみかみかみにつかかかかかか」
「ハッキリ言え! ハッキリ!」
 カチャリと音を立てて銃口を向けると、男は「分かった分かったわかった!」と手をあげて彼女を制した。
「そ、そ、その変なま、ま、ま、魔法は使わないで、くれ!」
「ちっ!」
 リディーは仕方なく銃口を下に向ける。
「あり、ありが、とう」
 彼女が落ち着いたことによっぽど安心したのか、男は「ほぉー」と心の底からため息を吐き出した。
「わ、私は伝説の戦女神ディーテ様に仕える信徒、聖プエゴ教教会の神父フェデリコ・ビアンコといいます」
「はぁぁぁ!?」
 どの口がそんな冗談を口にするのかとリディーはまた銃口を向けそうになったが、それでは話しが進まないので取り敢えず今は我慢した。
「くぅぅっ! でっ!!」
「は、は、は、はい! 実は、わ、わ、わ、私どもの聖プエゴ教では『人間は自然のままに生きるべし』という教えがあるのです!」
 そう言ってフェデリコは立ち上がり天を仰ぎ見た。
「ですから私は! その教えを守り! 一生裸で生きることを神の前で誓ったのです!!」
 どうしよう。帰りたい。グレイス星団に帰りたい。
 リディーはどうしようもなくホームシックになっていた。
「まだまだ私は力不足ですが! やがては全世界に聖プエゴ教の教えを広め! 沢山の人たちと共に自然に生きる喜びを分かち合いたいのです!!」
 なに言ってんだこいつ……。
 リディーは激しく軽蔑した目でフェデリコを見た。
 彼女の故郷グレイス星団にも宗教はあったが、こんな意味不明なことを宣う宗教は初めてだった。
「それで! 聖プエゴ教の神父が、何でこんなとこにいるの!」
 激しい口調でリディーが問うと「ひっ!」とフェデリコはたじろぎながらも言葉を続けた。
「そそそそそそそれは、し、し、信託が、下ったから、です」
「信託?」
「そ、そ、そ、そうです。信託、です」
 フェデリコはその時のことを思い出しているのか恍惚とした表情を浮かべながら天を仰いだ。
「信託とは言わば、神に選ばれた者にしか与えられない使命のようなモノなのです! つまり私の今までしてきたことは、しっかりと戦女神ディーテ様の御心に届いていたということなのです!!」
「何で私はあの時石なんか蹴っちゃったんだろう。帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい……」
 リディーは膝を抱えて地面にのの字を書きながらブツブツと呟いていた。
「ですからあなたも! この! 信託の下った! フェデリコ・ビアンコのことを信じて! 自然のままにっひがあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
 言い終わる前にリディーはフェデリコの顔に右ストレートを放っていた。
「死ね!」
 吹き飛ばされたフェデリコは大木にぶつかり背中からくの字に曲がった。そして勢いの削がれた彼の身体がドサリと音を立てて地上に落ちるのと同時にリディーはトドメを刺すために跳躍していた。
「まままままま待って待って待って待って待って!」
 自分の身を庇うように両手を彼女に向けて、フェデリコは叫んだ。
「だれがぁぁぁぁ!!」
 自由落下しながらリディーは右の拳を振りかぶりフェデリコの顔に照準を合わせる。
 その瞬間、またフェデリコの一物がリディーの目に入り振りかぶった拳を降りきれず、彼女は音を立ててフェデリコの後方へと転がっていった。
 フェデリコは這いつくばりながらリディーに近寄り口を開いた。
「わ、わ、わ、わ、私は、あ、あ、あなたの、自由意思を尊重します! ででででですから、む、む、む、無理に信徒にならなくても、け、け、け、結構です!」
「もういい!!」
 地面に寝転がった体勢でリディーは叫ぶと、サッと起き上がってフェデリコに背を向けたままスタスタと歩きだした。
「どどどどどちらへ、行かれるのですか!?」
「あんたに関係ないでしょ!」
 木の側に放っておいたズタ袋を背にかけ、リディーは振り返ることもせずに叫んだ。
「そそそそその方角ですと、わわわわ私と同じ、レトラバの町に行かれるのですね!」
 フェデリコは嬉しそうに立ち上がると、リディーの後を追いかけ走りだした。
「ま、待って下さい! 旅は道連れと、言うじゃないですか!!」
「ついてくんなぁぁぁぁぁ!!」
 夕暮れの空にリディーの叫びが木霊した。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...