アホと魔女と変態と (異世界ニャンだフルlife)

影虎

文字の大きさ
26 / 53
四章 遺跡探索

遺跡探索 2

しおりを挟む
―――こんんのぉっ、ばぁかぁしんぷぅぅぅぅ!!
「うみゃあぁあぁぁぁぁっ!!」
「う、うひょえぇえぇぇぇぇっ!!」
 神父のせいで支えの効かなくなった枝がポキリと折れて、僕らは眼下で涎を垂らす狼のモンスターたちの中へと真っ逆さまに落ちていく。
 そ、そうだ!
 こんな時こそ“再現魔法”だ!
 僕は落下しながら目を閉じ、頭の中に飛べるモノを思い描く。
 飛べるもの飛べるもの飛べるもの飛べるもの……。

 ある程度頭の中で形が定まった刹那、狼のモンスターの鼻先寸前で僕の中から力が抜けていくのが感じ取られたのと同時に、僕の身体の下には白い大きな紙飛行機が忽然と現れていた。
 その紙飛行機の大きさは縦が五十センチほど、幅は三十センチくらいで、僕だけが乗るなら十分飛行可能だった。
 僕だけなら……。

 少しの間だけその大きな紙飛行機は空を遊泳するが、風に煽られ鼻先が丁度上を向き、これなら逃げれる! と思った所でガシッと紙飛行機の後ろを捕まれた。
「さっすがは女神ディーテ様の寵愛を受けし猫様! さあ、共に飛び立ちましょう!!」
 そう言って神父が紙飛行機の上に飛び乗ろうとジャンプして膝を下ろした瞬間、紙飛行機を飛ばしていた僕の魔力がまたゴッソリと抜けていき、三メートルも飛ばない内に紙飛行機は不時着してしまった。
「な、な、な、な、なんですとぉぉぉぉぉぉっ!?」
「み、みゃぁぁぁぁぁっ!?」
 ズルズルと地面を擦りながら地面に突っ伏した僕の頭には、神父の“モザイク”が垂れ下がっていた。
「み、みぃぃぃぃ……」
 僕の口からそんなに低音が出たのかと驚く程の声が漏れてくる。
 うっさいよさっきから!!
 お前は想定外なんだよ!
 ちょっとは空気読んで、僕が逃げ切るまでモンスターに食われてろよ!!
 ギリギリと歯軋りしながらいっそのことその“モザイク”に噛みついてやろうかと思ったが、口がばっちくなると思い止どまりマジ猫パンチで我慢しておいた。
―――おんどりゃあぁぁぁ!!
「みいぃぃぃ!!」
 べチコぉんっ!!
「ふんぎゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」
 奇声を上げ股間を押さえて転げ回る神父を、追い付いてきた狼のモンスターたちは及び腰になって様子を見守っていた。
「おぎゃあぁああぁぁぁぁ! ぐんぎゃぁああぁぁぁ!」
 神父は奇声を発してゴロゴロと転がりながら狼のモンスターたちへと迫っていく。
 そんな神父に狼のモンスターたちはたじろぎ、いつの間にか尻尾が股の間に挟まり恐怖に「クウゥゥン」と鼻を鳴らしていた。
―――これはチャンスだ!
「みいぃぃぃ!!」
 僕は思い切りよくジャンプして神父の上に飛び乗った。
「ちょっくっぎゃっぐっごわっぁああぇぁぃぁ!!」
 そしていつまでも奇声を発している神父を再現魔法で足元でゴロゴロと“転がし”ながら僕は狼のモンスターへと迫っていく。
「「「キャインキャインキャインッ!!」」」
 よっしゃ! このまま行っちゃぇ!!

 今までに見たこともない奇声を上げて転がるモノに追い立てられ、狼のモンスターたちは我先にと走り出す。
 それを神父を転がしながら追い立てる僕は、一種のハイ状態へと陥りバカ笑いを上げながら何も考えられずにそのまま突き進んでいった。



 月明かりの中、散り散りになった狼のモンスターの最後の一体を追い詰めた僕は、モンスターが立ち往生していた壁へと神父を転がしたまま進軍して行く。
「みいいぃぃぃぃぃ!!」
「はれっほれぐぼらっぱぁっ!!」
「ク、ク、クゥゥゥウン……」
 壁際でプルプルしていた狼のモンスターへ「みいぃぃぃ!」と僕は突撃命令を下す。
 その瞬間にモンスターはサッと飛び退き、的を失った僕は止まることもできずに壁に激突した。
「キャインキャインキャイン……」
 崩れ落ちる僕の耳には遠くに去って行くモンスターの情けない鳴き声が響いてきた。

「み、みぃ……」
 暫くそうして伏せていた僕は、身体から痛みが引いていくと同時にゆっくりと立ち上がる。
 酒に酔った次の日のように頭がガンガンする。
 その痛みに耐え切れず、気持ち悪くなった僕は胃の中のモノを全部その場に吐き出してしまった。
「はぎゃぼふぁっ!?」
 僕の吐瀉物をモロに被った神父がやっと目を醒ました。
 そして自分の顔をごしごしと手で擦り吐瀉物のこびりついた手を鼻先に近付けてクンクン嗅いだ神父は「くっさぁ!」と叫び忙しなく辺りを見回しだした。
「ど、どこかに水は! 川でも何でも、洗い流せる場所は!」
 そう言って目線をさ迷わせる内に足元に僕がいたことに気付き「おお!」と驚嘆のため息をつく。
「さすがは女神ディーテ様の寵愛を授かりし猫様! 私を救っていただきありがとうございました!」
 片膝を地に付け平伏する神父に僕は「はぁ……」とため息をつく。
 成り行きだけどな。
 別にあんたを助けたつもりはないんだからね。
 そういう思いを込めて僕は「みいっ」と一声鳴いた。
「ところで猫様、この辺りに水場はありませぬか? できれば私は、この汚れた身体を洗い流したく思うのですが……。これでも私、綺麗好きなものでして」
 思いっきり無視したな!
 そして顔を赤くするな!
 てかどの口がそんな世迷い言、言ってんだ!?
 僕は開いた口が塞がらず口から「み、み、み……」と枯れた音を出していると「うん?」と神父が急に振り向き壁の左へと視線を向けた。
 な、なに!?
 僕は驚いてビクりとそちらへ視線を向ける。
「こっちに水がある気がします! さあ行きますぞ、猫様!」
 ちょっおまっ! 待て待て待て待て!!
 神父は全く根拠のない言葉を発しながら僕を抱き上げて走り出した。
 ちょっと! 吐瀉物が!
 僕のだけど! 吐瀉物が!!
 僕の心の叫びなど露知らず、神父は意気揚々と駆けて行くのであった。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

その狂犬戦士はお義兄様ですが、何か?

行枝ローザ
ファンタジー
美しき侯爵令嬢の側には、強面・高背・剛腕と揃った『狂犬戦士』と恐れられる偉丈夫がいる。 貧乏男爵家の五人兄弟末子が養子に入った魔力を誇る伯爵家で彼を待ち受けていたのは、五歳下の義妹と二歳上の義兄、そして王都随一の魔術後方支援警護兵たち。 元・家族の誰からも愛されなかった少年は、新しい家族から愛されることと癒されることを知って強くなる。 これは不遇な微魔力持ち魔剣士が凄惨な乳幼児期から幸福な少年期を経て、成長していく物語。 ※見切り発車で書いていきます(通常運転。笑) ※エブリスタでも同時連載。2021/6/5よりカクヨムでも後追い連載しています。 ※2021/9/15けっこう前に追いついて、カクヨムでも現在は同時掲載です。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...