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四章 遺跡探索
遺跡探索 2
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―――こんんのぉっ、ばぁかぁしんぷぅぅぅぅ!!
「うみゃあぁあぁぁぁぁっ!!」
「う、うひょえぇえぇぇぇぇっ!!」
神父のせいで支えの効かなくなった枝がポキリと折れて、僕らは眼下で涎を垂らす狼のモンスターたちの中へと真っ逆さまに落ちていく。
そ、そうだ!
こんな時こそ“再現魔法”だ!
僕は落下しながら目を閉じ、頭の中に飛べるモノを思い描く。
飛べるもの飛べるもの飛べるもの飛べるもの……。
ある程度頭の中で形が定まった刹那、狼のモンスターの鼻先寸前で僕の中から力が抜けていくのが感じ取られたのと同時に、僕の身体の下には白い大きな紙飛行機が忽然と現れていた。
その紙飛行機の大きさは縦が五十センチほど、幅は三十センチくらいで、僕だけが乗るなら十分飛行可能だった。
僕だけなら……。
少しの間だけその大きな紙飛行機は空を遊泳するが、風に煽られ鼻先が丁度上を向き、これなら逃げれる! と思った所でガシッと紙飛行機の後ろを捕まれた。
「さっすがは女神ディーテ様の寵愛を受けし猫様! さあ、共に飛び立ちましょう!!」
そう言って神父が紙飛行機の上に飛び乗ろうとジャンプして膝を下ろした瞬間、紙飛行機を飛ばしていた僕の魔力がまたゴッソリと抜けていき、三メートルも飛ばない内に紙飛行機は不時着してしまった。
「な、な、な、な、なんですとぉぉぉぉぉぉっ!?」
「み、みゃぁぁぁぁぁっ!?」
ズルズルと地面を擦りながら地面に突っ伏した僕の頭には、神父の“モザイク”が垂れ下がっていた。
「み、みぃぃぃぃ……」
僕の口からそんなに低音が出たのかと驚く程の声が漏れてくる。
うっさいよさっきから!!
お前は想定外なんだよ!
ちょっとは空気読んで、僕が逃げ切るまでモンスターに食われてろよ!!
ギリギリと歯軋りしながらいっそのことその“モザイク”に噛みついてやろうかと思ったが、口がばっちくなると思い止どまりマジ猫パンチで我慢しておいた。
―――おんどりゃあぁぁぁ!!
「みいぃぃぃ!!」
べチコぉんっ!!
「ふんぎゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」
奇声を上げ股間を押さえて転げ回る神父を、追い付いてきた狼のモンスターたちは及び腰になって様子を見守っていた。
「おぎゃあぁああぁぁぁぁ! ぐんぎゃぁああぁぁぁ!」
神父は奇声を発してゴロゴロと転がりながら狼のモンスターたちへと迫っていく。
そんな神父に狼のモンスターたちはたじろぎ、いつの間にか尻尾が股の間に挟まり恐怖に「クウゥゥン」と鼻を鳴らしていた。
―――これはチャンスだ!
「みいぃぃぃ!!」
僕は思い切りよくジャンプして神父の上に飛び乗った。
「ちょっくっぎゃっぐっごわっぁああぇぁぃぁ!!」
そしていつまでも奇声を発している神父を再現魔法で足元でゴロゴロと“転がし”ながら僕は狼のモンスターへと迫っていく。
「「「キャインキャインキャインッ!!」」」
よっしゃ! このまま行っちゃぇ!!
今までに見たこともない奇声を上げて転がるモノに追い立てられ、狼のモンスターたちは我先にと走り出す。
それを神父を転がしながら追い立てる僕は、一種のハイ状態へと陥りバカ笑いを上げながら何も考えられずにそのまま突き進んでいった。
月明かりの中、散り散りになった狼のモンスターの最後の一体を追い詰めた僕は、モンスターが立ち往生していた壁へと神父を転がしたまま進軍して行く。
「みいいぃぃぃぃぃ!!」
「はれっほれぐぼらっぱぁっ!!」
「ク、ク、クゥゥゥウン……」
壁際でプルプルしていた狼のモンスターへ「みいぃぃぃ!」と僕は突撃命令を下す。
その瞬間にモンスターはサッと飛び退き、的を失った僕は止まることもできずに壁に激突した。
「キャインキャインキャイン……」
崩れ落ちる僕の耳には遠くに去って行くモンスターの情けない鳴き声が響いてきた。
「み、みぃ……」
暫くそうして伏せていた僕は、身体から痛みが引いていくと同時にゆっくりと立ち上がる。
酒に酔った次の日のように頭がガンガンする。
その痛みに耐え切れず、気持ち悪くなった僕は胃の中のモノを全部その場に吐き出してしまった。
「はぎゃぼふぁっ!?」
僕の吐瀉物をモロに被った神父がやっと目を醒ました。
そして自分の顔をごしごしと手で擦り吐瀉物のこびりついた手を鼻先に近付けてクンクン嗅いだ神父は「くっさぁ!」と叫び忙しなく辺りを見回しだした。
「ど、どこかに水は! 川でも何でも、洗い流せる場所は!」
そう言って目線をさ迷わせる内に足元に僕がいたことに気付き「おお!」と驚嘆のため息をつく。
「さすがは女神ディーテ様の寵愛を授かりし猫様! 私を救っていただきありがとうございました!」
片膝を地に付け平伏する神父に僕は「はぁ……」とため息をつく。
成り行きだけどな。
別にあんたを助けたつもりはないんだからね。
そういう思いを込めて僕は「みいっ」と一声鳴いた。
「ところで猫様、この辺りに水場はありませぬか? できれば私は、この汚れた身体を洗い流したく思うのですが……。これでも私、綺麗好きなものでして」
思いっきり無視したな!
そして顔を赤くするな!
てかどの口がそんな世迷い言、言ってんだ!?
僕は開いた口が塞がらず口から「み、み、み……」と枯れた音を出していると「うん?」と神父が急に振り向き壁の左へと視線を向けた。
な、なに!?
僕は驚いてビクりとそちらへ視線を向ける。
「こっちに水がある気がします! さあ行きますぞ、猫様!」
ちょっおまっ! 待て待て待て待て!!
神父は全く根拠のない言葉を発しながら僕を抱き上げて走り出した。
ちょっと! 吐瀉物が!
僕のだけど! 吐瀉物が!!
僕の心の叫びなど露知らず、神父は意気揚々と駆けて行くのであった。
「うみゃあぁあぁぁぁぁっ!!」
「う、うひょえぇえぇぇぇぇっ!!」
神父のせいで支えの効かなくなった枝がポキリと折れて、僕らは眼下で涎を垂らす狼のモンスターたちの中へと真っ逆さまに落ちていく。
そ、そうだ!
こんな時こそ“再現魔法”だ!
僕は落下しながら目を閉じ、頭の中に飛べるモノを思い描く。
飛べるもの飛べるもの飛べるもの飛べるもの……。
ある程度頭の中で形が定まった刹那、狼のモンスターの鼻先寸前で僕の中から力が抜けていくのが感じ取られたのと同時に、僕の身体の下には白い大きな紙飛行機が忽然と現れていた。
その紙飛行機の大きさは縦が五十センチほど、幅は三十センチくらいで、僕だけが乗るなら十分飛行可能だった。
僕だけなら……。
少しの間だけその大きな紙飛行機は空を遊泳するが、風に煽られ鼻先が丁度上を向き、これなら逃げれる! と思った所でガシッと紙飛行機の後ろを捕まれた。
「さっすがは女神ディーテ様の寵愛を受けし猫様! さあ、共に飛び立ちましょう!!」
そう言って神父が紙飛行機の上に飛び乗ろうとジャンプして膝を下ろした瞬間、紙飛行機を飛ばしていた僕の魔力がまたゴッソリと抜けていき、三メートルも飛ばない内に紙飛行機は不時着してしまった。
「な、な、な、な、なんですとぉぉぉぉぉぉっ!?」
「み、みゃぁぁぁぁぁっ!?」
ズルズルと地面を擦りながら地面に突っ伏した僕の頭には、神父の“モザイク”が垂れ下がっていた。
「み、みぃぃぃぃ……」
僕の口からそんなに低音が出たのかと驚く程の声が漏れてくる。
うっさいよさっきから!!
お前は想定外なんだよ!
ちょっとは空気読んで、僕が逃げ切るまでモンスターに食われてろよ!!
ギリギリと歯軋りしながらいっそのことその“モザイク”に噛みついてやろうかと思ったが、口がばっちくなると思い止どまりマジ猫パンチで我慢しておいた。
―――おんどりゃあぁぁぁ!!
「みいぃぃぃ!!」
べチコぉんっ!!
「ふんぎゃあぁぁぁあああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁ!!」
奇声を上げ股間を押さえて転げ回る神父を、追い付いてきた狼のモンスターたちは及び腰になって様子を見守っていた。
「おぎゃあぁああぁぁぁぁ! ぐんぎゃぁああぁぁぁ!」
神父は奇声を発してゴロゴロと転がりながら狼のモンスターたちへと迫っていく。
そんな神父に狼のモンスターたちはたじろぎ、いつの間にか尻尾が股の間に挟まり恐怖に「クウゥゥン」と鼻を鳴らしていた。
―――これはチャンスだ!
「みいぃぃぃ!!」
僕は思い切りよくジャンプして神父の上に飛び乗った。
「ちょっくっぎゃっぐっごわっぁああぇぁぃぁ!!」
そしていつまでも奇声を発している神父を再現魔法で足元でゴロゴロと“転がし”ながら僕は狼のモンスターへと迫っていく。
「「「キャインキャインキャインッ!!」」」
よっしゃ! このまま行っちゃぇ!!
今までに見たこともない奇声を上げて転がるモノに追い立てられ、狼のモンスターたちは我先にと走り出す。
それを神父を転がしながら追い立てる僕は、一種のハイ状態へと陥りバカ笑いを上げながら何も考えられずにそのまま突き進んでいった。
月明かりの中、散り散りになった狼のモンスターの最後の一体を追い詰めた僕は、モンスターが立ち往生していた壁へと神父を転がしたまま進軍して行く。
「みいいぃぃぃぃぃ!!」
「はれっほれぐぼらっぱぁっ!!」
「ク、ク、クゥゥゥウン……」
壁際でプルプルしていた狼のモンスターへ「みいぃぃぃ!」と僕は突撃命令を下す。
その瞬間にモンスターはサッと飛び退き、的を失った僕は止まることもできずに壁に激突した。
「キャインキャインキャイン……」
崩れ落ちる僕の耳には遠くに去って行くモンスターの情けない鳴き声が響いてきた。
「み、みぃ……」
暫くそうして伏せていた僕は、身体から痛みが引いていくと同時にゆっくりと立ち上がる。
酒に酔った次の日のように頭がガンガンする。
その痛みに耐え切れず、気持ち悪くなった僕は胃の中のモノを全部その場に吐き出してしまった。
「はぎゃぼふぁっ!?」
僕の吐瀉物をモロに被った神父がやっと目を醒ました。
そして自分の顔をごしごしと手で擦り吐瀉物のこびりついた手を鼻先に近付けてクンクン嗅いだ神父は「くっさぁ!」と叫び忙しなく辺りを見回しだした。
「ど、どこかに水は! 川でも何でも、洗い流せる場所は!」
そう言って目線をさ迷わせる内に足元に僕がいたことに気付き「おお!」と驚嘆のため息をつく。
「さすがは女神ディーテ様の寵愛を授かりし猫様! 私を救っていただきありがとうございました!」
片膝を地に付け平伏する神父に僕は「はぁ……」とため息をつく。
成り行きだけどな。
別にあんたを助けたつもりはないんだからね。
そういう思いを込めて僕は「みいっ」と一声鳴いた。
「ところで猫様、この辺りに水場はありませぬか? できれば私は、この汚れた身体を洗い流したく思うのですが……。これでも私、綺麗好きなものでして」
思いっきり無視したな!
そして顔を赤くするな!
てかどの口がそんな世迷い言、言ってんだ!?
僕は開いた口が塞がらず口から「み、み、み……」と枯れた音を出していると「うん?」と神父が急に振り向き壁の左へと視線を向けた。
な、なに!?
僕は驚いてビクりとそちらへ視線を向ける。
「こっちに水がある気がします! さあ行きますぞ、猫様!」
ちょっおまっ! 待て待て待て待て!!
神父は全く根拠のない言葉を発しながら僕を抱き上げて走り出した。
ちょっと! 吐瀉物が!
僕のだけど! 吐瀉物が!!
僕の心の叫びなど露知らず、神父は意気揚々と駆けて行くのであった。
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