アホと魔女と変態と (異世界ニャンだフルlife)

影虎

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四章 遺跡探索

遺跡探索 3

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「おお! 何でしょうコレは!?」
 その石のような風化した壁伝いに走っていた神父は、大きな古びた鉄の塊を見つけて驚嘆の声を上げた。
 どう見ても何かの施設であったのは間違いない。
 きっとここが、ディーテの言っていた遺跡なのだろう。
 僕は神父の腕からスタッと飛び降りると、三メートルはあろうかと思われる鉄の扉に近寄り、ペシペシと肉球で叩いてみた。
 人間の時の手ほど触感は敏感ではないが、それでも金属でできていることだけは間違いなさそうだった。
 てかこれ……、どっから入るんだ?
 トテトテと壁の裏側に入りその建物の右側面を覗いて見たが、まるで入り口らしきものが見つからない。
「ね、猫様!? どこにいらっしゃるんですか!?」
 ちょっと離れただけで神父が悲鳴をあげている。
 まぁ僕は猫だからナイトビジョンのように夜でもクッキリ周りが見えるけど、普通の変態である神父には夜目は効かないんだろう。
 そう思った僕は無理な探索は諦めて取り敢えず神父の声がする方へと歩いて行った。
「猫様ぁ! 猫様ぁ……!」
 ちょっと!? なんか声が遠退いて行ってるんですけど!?
 あいつ遭難の心得、知らないのか!?
 てか待って! ちょっと待って!
 僕は急いで声のする方へと駆けていくが、その声はまるで僕を嘲笑うかのようにどんどんと離れていく。

 反対側の壁の間を通り抜け建物沿いに蔦の絡まった小道を抜け、二十メートルほど走った所でやっとあの変態の背中に追い付いた。
―――何やっとんじゃ! 馬鹿神父ぅ! ジャンピング・猫パァァンチィ!!
 バチコォォン!!
「いだあぁぁぁぁっ!!」
 背中に肉球型の赤い跡を付けてつんのめった神父は、目の前の開けた場所の真ん中に唯一建っていた五メートルほど高さのあるポールのようなものに頭をぶつけた。
『侵…… 発見…… ただちに…… せよ!』
 耳障りな機械音を響かせながら、そのポールは壊れたように同じ言葉を発し続け始めた。

 ゴゴゴゴ……。
 急に地響きが鳴り渡り、僕が立っていた場所がせり上がっていく。
 そして急に地面が割れたかと思うと土煙を上げながら観音開きのように地面が開き始めた。
 僕は傾斜がきつくなっていくその地面からダッシュで障害の起こっていない神父の側に駆け寄る。するとその開かれた地面から突き出した扉と思わしき部分にライトが焚かれ、僕たちは煌々と照らし出された。
「なななななな……!?」
 あまりのことに歯の根が合わなくなったのか、神父はガチガチと震えて尻餅をついている。
『侵…… 排除……』
 その開かれた地面から夥しいほどのカチャカチャという金属音が鳴り響いてきた。
 何かヤバい!
 この変態置いて逃げた方がいいかも……。
 僕は臨機応変にそう判断すると、光を手で遮り眩しそうにしている神父を置いて踵を返そうと背中を向ける。
「ねねねねね猫様ぁぁああぁぁ!! お助けくだぁさぁいぃぃぃ!!」
 ちょっ、離せ変態!!
 神父は這いつくばりながら僕を捕まえ、抱き寄せる形で顔を僕の身体に擦りつけてきた。
 止めろ! 犠牲はお前だけでいいんだ!
 僕はお前の尊い犠牲は忘れないかもしれないから、今すぐ離せ!!
 僕はそういう気持ちを込めて神父の掴んでいる腕に噛みつきつつ顔に猫パンチラッシュをお見舞いするが、これが火事場の馬鹿力というやつなのだろうか、全く神父のホールドは外れそうもなかった。
 そんなことをやっている内にカチャカチャという機械音がどんどんと僕たちに近付いて来る。
 そして黒鉄の塊のようなものが青い一つ目を光らせて開かれた土の中から這い出すと、次々と同じような形のモノが音を立てて出てきた。
「な、な、な、な、な……!?」
 ろ、ロボットだよね!? どう見てもロボットだよね!?
 それは五十センチ程の蟻のような形を模した機械のようで、かなり風化が進んでいるらしくあるものは六本生えている足の一部がもげていたり、あるものは首が落ちていたり、あるものは歩いている途中で火花を散らして勝手に自滅したりしていた。
 それでもロボットたちは何かの意思に操られるかのように僕たちの元へと迫ってくる。

 カチャカチャカチャカチャカチャカチャ……。

 群れをなす蟻型ロボットに囲まれて、僕はなんとか神父の懐から抜け出すことに成功するが、それだけだった。
 時は既に遅く、僕たちの周りは全て青い光にに塗りたくられていた。
『侵入…… 排除…… します』
 マトモに聞き取れなかったが、その言葉と同時にロボットたちの顔が持ち上げられ、僕たちに口元の銃口らしきものが向けられた途端、僕は全てを察して神父に全力の体当たりをして弾き飛ばした。
「ほぎゃあああぁぁぁぁぁぁ!!」
 小さくなっていく神父の悲鳴と引き換えに連続した破裂音が鳴り響き、小さな閃光がロボットたちから瞬いた。
 さっきまで神父と僕がじゃれあっていた場所に建っていたポールが、銃弾の雨に晒されてボロボロになり音を立てて崩れていく。
 マジでヤバいよ!
 どうしようどうしようと僕は周りを見渡すが、何故か周りのロボットたちの攻撃は止み、ロボットたちは神父の飛んでいった方へと向きを変えた。
 あ! もしかしてこれって……!
 僕の思った通りロボットたちは猫のことなど意に介さず、カチャカチャと音を立てながら壁をよじ登り、左側の森へと突き進んで行く。
 そうだよね。何処の世の中に猫を驚異だと思って、侵入者を迎撃するシステム組む人がいるかっていう話しだよね。
 ホッと一つため息をついた僕の横を、最後の蟻型ロボットが通り過ぎて行く。
「ね、ね、ね、ね、猫、猫様ああぁぁぁ……」
 向こうの方から小さな悲鳴が聞こえてくるが、僕は今まで気が立っていたことで急激に毛繕いがしたくなり、その場でマダム座りして毛繕いを始めた。

 タタタタタタタタッ……。
 カチャカチャカチャカチャ……。
「た、た、た、たす、け、てぇぇぇ……!」
 今の僕の耳にはちょっとした、朝の小鳥の囀ずりのように聞こえるが、そこでハタと思うことがあった。
 ここが目指していた遺跡、てことは……。
 これからシュナたち、来るんだよね……。
 マズクナイ……!?
 そこまで思い至った僕は四つん這いで立ち上がり、ロボットたちに追い立てられているであろう悲鳴の元へと駆け出して行った。

 普通の猫ではあり得ない身体能力を活かして三メートルはあろうかという石造りの壁を一っ飛びで乗り越える。
 肉球と猫のしなやかさのお陰で僕は難なくその高さから降り立ち、小動物特有の俊敏さを発揮して森の中を駆けて行く。
 体感ではあるが、今の僕は時速六十キロは越えてるハズだ。
 この入り組んだ木々の中をそんな速度で走り抜けたら、絶対に傷だらけになって大怪我しそうなものだが、僕の動体視力は難なく行くべきルートを見出だしていた。
 てか、さっきの銃弾も見えたしね。
 銃弾の初速は、機銃タイプだから恐らくマッハ二か三くらい。
 それが見えるとか……。
 もうね……。ね……。
 もしかしたら魔法使わなくてもあのロボット、僕の身体能力駆使したら倒せんじゃない?
 何となくそう思った僕は更にスピードを早める。

 段々音が近くなっていく。
 こんな時に不謹慎だが、今僕の幻想の耳には『夢色チェ○サー』が流れている。
 ギガ○スの蒼○鷹みたいに格好よくいきたい!
 猫だけど!

 そして……。
 木の根に蹴躓き、前のめりに倒れる神父のモザイクがケツの間から見える!
「みいいいぃぃぃっ!」
 僕は一息に跳躍すると神父の目の前に立ち銃口を向けていたロボットにジャンピング・猫パンチをお見舞いした。
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